禁止命令だけでは犯罪抑止にならず… “ストーカー行為”再発防止にはカウンセリングが必要?立ち直る方法を専門家に聞く
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 ストーカー被害への対応策として、ストーカー行為をしてしまった加害者へのカウンセリングを通じて再発を防ぐという取り組みが行われている。ストーカー犯罪防止にどこまで有効なのか、専門家に話を聞いた。

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 1月16日、福岡市のJR博多駅近くの路上で起きた刺殺事件。警察は、殺害された川野美樹さんの元交際相手・寺内進容疑者を殺人の疑いで逮捕した。

 川野さんは以前から、交際トラブルにまつわる被害を警察に訴えていて、去年11月「ストーカー規制法」に基づき、寺内容疑者につきまとい行為などを禁じる「禁止命令」が出されていた。

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 ストーカー相談件数は、この10年間、毎年2万件前後で推移していて、深刻な状況が続いている。そんな中、加害者へのカウンセリングを通じてストーカー被害を防ぐという取り組みが行われている。

 京都府警では、ストーカー加害者が更生するための支援を行っていて、カウンセリングを受ける費用を公費で負担。加害者へのカウンセリングは再犯防止に大きな効果があるとしている。

 京都府警の依頼を受け、ストーカー加害者のカウンセリングにあたっている有限会社KIPPの代表で京都文教大学の川畑直人教授に話を聞いた。

「最初に申し上げたいのは、ストーカーの加害者になるのは本当にいろんな人がいる。ストーカー行為をする人が特別なカテゴリーで特殊な人だと考えないで、いろんな人がストーカーになりうる。恋愛関係で拒否されればそれに対してしがみつく、恨みの気持ちを持つ。これは人間の心の自然な原理」

 川畑教授によると、“誰もがストーカー加害者になる可能性がある”という。そのきっかけとして多いのが、恋愛関係や夫婦関係の破綻で、中でも攻撃的な行動に出る人の特徴をあげた。

「その人との関係だけではなくて、さまざまな面で自分が不遇であった、あるいは恵まれていない、うまくいってないことがたくさんある。そういった気持ちを抱えている人は、相手に対して怒りの気持ちを向けてしまいやすくなる」

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 博多の事件のように、重大犯罪にエスカレートする危険性の高いストーカー行為に対して“禁止命令だけでは犯罪の抑止にならない”という見方もある。

「どれだけ禁止命令という形で規制をかけたとしても、執着している気持ちが変わらない限りはどこまでもそれに対して追及したくなる。諦められないということになってしまう。『警察沙汰にされてしまった』『加害者にされてしまった』と逆に恨みの気持ちを強く持ってしまう可能性もある。加害者の気持ちをどう変えるかということが問題の解決にとっては非常に大事。段階としては今執着している人との間の関係を諦める。それを断念するということが最初の目標」

 加害者が立ち直るために一番重要なのは“相手への執着心を無くすこと”。川畑教授のカウンセリングは、加害者がストーカー行為を行うことになった相手との関係をじっくりと振り返り、気持ちを整理するところから始まる。

「どういう付き合いをしてきたのか、その中でどういう体験をしてきたのか、どういうやり取りをしてきたのか。どうしてそういう気持ちになったのかということについて客観的に見直すという作業をする。それによってある程度、冷静に見直せるようになってくると相手に対する執着も少し和らいでいく」

 執着心が残ったままではストーカー行為を防ぐ根本的な解決にはならない――。加害者の心のケアをすることが、結果的に被害者を生まないことにつながると川畑教授は考える。

「加害者に対して『カウンセリングを公費で受けさせるなんてどういうことだ』『そういう人たちは罰せればいいじゃないか』という発想の方もたくさんいる。でも、かなり多くの加害者は(カウンセリングで)気持ちを切り替える。そういうことにカウンセリングが役立っていると実感している」

(『ABEMAヒルズ』より)

“ストーカー行為” 再発防止へ 加害者へカウンセリング
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