TikTokやTwitterで多くの再生回数を稼ぐとともに非難が殺到している、ホームレス女性への“嫌がらせ動画”。それらは名古屋市で撮影したとみられ、支払いをしてあげるフリをしてコンビニに連れて来た若い女性が会計直前に逃げる様子や、同じホームレス女性に突然男性が飲み物を吹きかけたりする内容のものも。
【映像】ホームレスYouTuberと考える“嫌がらせ動画”の負の連鎖
少し前には迷惑系YouTuberが再生回数目当てに様々な動画を上げていたが、TikTokなどが主流になった今の変化と影響について、24日の『ABEMA Prime』で議論した。
今回の件に「腐っているよね」「ホームレス以下じゃん」と憤りを隠しきれないのは、ホームレスYouTuberのナムさん。出演するチャンネル「ホームレスが大富豪になるまで。」の登録者は約40万人で、マイペースで穏やかな姿が多くの支持を集めているが、他人事ではないと話す。
「彼女は仲間だから、酷すぎて涙が出てくる。同じホームレスが全国にいっぱいいると思うんだけど、ひょっとしたら明日は我が身かもわからない。こういうことをなんでできるんだろうといつも思う」
実際に自身も被害にあったことがあるという。
「火のついたタバコを投げつけられるとか、酔っ払いが全員の段ボールを蹴飛ばして壊していくとか。2週間くらい前に私のファンだという人が来て、『一緒に飲みませんか？』と言ってきたが、撮影の用事があるから断ったら、逆ギレして15分くらい追い回されて、結局警察に逃げ込んで保護してもらった。そういう人もいる」
ホームレス女性に対して嫌がらせを行っているアカウントは複数あるとみられるが、ネットメディア論が専門の山口真一・国際大学GLOCOM准教授は「おそらく本人たちは“危害を加えている”という意識はない。日本のいじめで“イジる”という言葉があるが、まさにそれをすることで再生回数を増やしたり、フォロワーを伸ばしている感覚なんだろう」との見方を示す。
また、迷惑系YouTuberとの違いについて、「YouTuberは“お金儲けしたい”という人が結構いたのに対して、TikTokは基本的に広告での収益化はない。それにもかかわらずこうした行為をしているのは、特に今の若者世代を中心に、お金よりもいいねや再生回数のほうが価値観の上位にきている。TikTokはショート動画なのでより投稿のハードルが低いこともある」と分析した。
コンビニ置き去りの動画に関しては、投稿者とみられるアカウントには残っておらず、他の人が拡散する悪循環になっている。パックンは「『イスラム国』が斬首ビデオをあげていた時期があったが、今は見られない。なぜならプラットフォーム側がしっかり対策をとったからだ。AIですぐ、“これは登場人物の尊厳を尊重していないので、もう見せない”とやればいいはずだ。動画が一人歩きして不愉快な気持ちだけが広がっていて、プラットフォームが動かないと打つ手がないと思う」との考えを述べる。
これに山口氏は「基準を厳しくし過ぎると、今度は自由な言論という話にも引っかかってくるので、取り締まるのはなかなか難しい現状がある。今回の件であれば、人権侵害にあたるなら削除対象になってくると思うが、それを迅速にAIで識別して削除するには技術的に少し難しいとも思う。通報を受けたら適切に、迅速に削除するのがいいのではないか」とした。
では、迷惑動画で注目を浴びた若者は“目立ち方”を知らない、もしくは誤解してしまっているのだろうか。「承認欲求が強い人は、ポジティブに目立つことができれば満たされるが、ネガティブなことで目立とうとする人も結構いる。特にSNSが普及し、誰でも簡単に動画を投稿できるようになったことで、承認欲求ははるかに満たしやすくなった。今回の件も、“自分もこれで目立とう”と二匹目のドジョウで撮影・投稿するということが行われていた。負の連鎖は簡単に生まれてしまうので、目立ち方を教えるのはとても大事なことだと思う」（山口氏）。
パックンは「アメリカでカーチェイスを生中継したために、“テレビに出るチャンスだ”“俺大スターじゃん”と勘違いする模倣犯が出た。それをやめようということで、最近は銃の乱射事件を起こした人の顔や名前を報道しない。“乱射事件を起こして有名になる手段はない”という意思表示の動きもある」と紹介した。
そんな中、ナムさんは「テレビというのはあくまで表面だ。いくら偉そうなことを言っていても結局、最後までフォローできない。実際その場に立って、例えば1日、2日くらいでも実際にホームレスの暮らしを実感してみて、“なんでこの人たちをいじめたりするのだろう”ということを、逆に見てほしい。表面だけを見られるのはつらい」と訴える。
これにタレントの田村淳は「好んで実際にホームレスを体験してみようという人がいてもいいが、好んでいないのにそこに行くのは違うと思う。僕は今井さんというホームレスの方にいろいろ話を聞いたことがあって、自分なりに歩み寄っているつもり。伝える側が“ホームレスを経験せずに上っ面だ”と言われるのは残念だ。もちろん、ホームレスの方に悪さをする、いじめをする人たちが悪いが、“一度体験してみろ”が始まってしまったらいってこいにならないか」と疑問を呈した上で、「メディアは、今回みたいにホームレスの方の尊厳を踏みにじった人を最後まで追いかけて、“こうなるんだ”ということを伝えてはどうか」と提案した。（『ABEMA Prime』より）
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