「平等公正を担保することが困難」総務省が“懸念” 杉並区選管“ボートマッチ”断念…投票先選びのあり方
【映像】杉並区がボートマッチ断念...総務省が“懸念”なぜ?
この記事の写真をみる(6枚)

 有権者がネット上で質問に答えると、自分に近い考えを持つ候補者がわかるボートマッチ。杉並区選挙管理委員会が若者の投票率アップのため導入を進めていたが、問われたのは選挙の公平性だ。

【映像】Yahoo! JAPANも…「ボートマッチ」を実施したメディアまとめ(画像あり)

 杉並区選管が進めていた方法は、各候補者に区政に関する20の質問に答えてもらい、利用者が同じ質問に回答。その一致率から自分の考えに近い候補者を見つけるものだった。

「平等公正を担保することが困難」総務省が“懸念” 杉並区選管“ボートマッチ”断念…投票先選びのあり方
拡大する

 15日、総務省はこれに「公職選挙法に抵触する可能性がある」「全ての候補者の平等公正な取扱いを担保することが困難だ」とコメント。区は4月の区議選におけるボートマッチ実施を断念した。

 ニュース番組「ABEMA Prime」では、ボートマッチの信用性やメリット、デメリットについて考えた。

「平等公正を担保することが困難」総務省が“懸念” 杉並区選管“ボートマッチ”断念…投票先選びのあり方
拡大する
「平等公正を担保することが困難」総務省が“懸念” 杉並区選管“ボートマッチ”断念…投票先選びのあり方
拡大する

 杉並区のボートマッチ導入について取材し、元朝日新聞記者でニコニコニュース編集長やDANRO編集長などを歴任してきた亀松太郎氏はこう話す。

「賛否両論ある。杉並区の場合、定数48人に対し、今回は80人くらいの立候補が出ると言われている。あとはいわゆる都会の選挙なので、誰が出ているかよく分からない。投票所のポスターを見て、顔や名前の好みで選ぶ。それくらいの気持ちで投票している人も多いのではないか。20代の投票率が非常に低いので、なんとかしたい選管の思いも理解できる」

 そもそも、約70人の候補者全員の情報を見ようとした場合、1人1分としても70分かかる計算になる。

「これはあくまで区の選管が言っていることだが、彼らは『若い人はスマホでしか情報をとらない』と強調している。選挙公報みたいな紙を配っても読んでもらえない。例えとして言っていたのが、恋愛のマッチングアプリだ。『何パーセントの確率でマッチしています』という提案をしているだけだ」

 選挙管理委員会がボートマッチをやることについて、区は東京都の選挙管理委員会にも確認していたという。

「都の選管はダメとは言わなかった。『勝手にやったら?』くらいの感じだ。国には確認していない。いいと言っていないが、ダメとも言わない。文書にもはっきり書いてあるが、あくまでも『おそれがある』だ。特に現職の区議さんで、悪影響を被る可能性がある人たちがいる。その人たちがかなり反対運動をしている」

「平等公正を担保することが困難」総務省が“懸念” 杉並区選管“ボートマッチ”断念…投票先選びのあり方
拡大する

 亀松氏は「選管の与川幸男委員長は今でも『違法じゃない』と主張している。『なぜ実施をやめたのか?』と聞いたら、『やっぱり国と争うのはいかがなものか』となった」と話す。

「個人的に残念だと思ったのは、タイミングだ。実は今度の日曜日、2月19日に20問の質問案が明らかになるはずだった。今までは伏せられていたが、立候補者、予定されている人たちの説明会が19日にあるはずだった。ホームページにも載せる段取りまで来ていた」

「平等公正を担保することが困難」総務省が“懸念” 杉並区選管“ボートマッチ”断念…投票先選びのあり方
拡大する

 近年、選挙のたびに新聞社や報道メディアでも行っているボートマッチ。今後、何か影響はあるのだろうか。

「やっぱり区議選レベルになると、残念ながらメディアはやってくれない。今回、総務省の見解には、非常に大きな問題があると思う。見解をなぞると、例えばNHKや朝日新聞がやっているボートマッチも選挙運動の可能性があると言っている。NHKや朝日新聞自身は、選挙運動だと思ってやっていないだろう。だけど総務省の見解では、選挙運動に当たるかもしれない。これをメディアはどう考えるのか気になるところだ」

(「ABEMA Prime」より)

この記事の画像一覧
【映像】【映像】杉並区がボートマッチ断念...総務省が“懸念”なぜ?
【映像】【映像】杉並区がボートマッチ断念...総務省が“懸念”なぜ?
この記事の写真をみる(6枚)