ロンドンの国会議事堂(ビッグベン)から徒歩5分。ダウニングストリートの10番地にあるイギリス首相官邸、通称「ナンバー10」。
この通りはセキュリティが厳しく、一般人は入ることができない。
ここに、“ネズミ捕獲長”の猫・ラリーがいる。なお、ネズミ捕獲長は首相官邸の公式な肩書きである。
12年前の2011年2月15日にやってきたラリーは「就任12年の記念日」を迎えた。
ラリーと不安定な状況が続くイギリス政治経済について、ANNロンドン支局の佐藤裕樹記者に聞く。
「ラリーは元々野良猫だったとみられていますが、動物保護施設からネズミ捕獲の能力を買われて抜てきされました。その後、キャメロン元首相から、メイ元首相、ジョンソン元首相、トラス前首相、スナク首相と5人の主を迎えました」(佐藤記者)
ラリーはどのような性格なのか。
「人懐っこいので、報道陣の近くを度々通ります。毎日午後3時すぎに出てくる習性があるようで先日は親しい地元カメラマンからエサを貰っていました」(佐藤記者)
与党の支持率が低く、2年以内に主人が変わるかも、と言われているが。
「イギリスはおよそ2年以内に総選挙を迎えます。そんななか、与党・保守党の最新の支持率は24%。最大野党・労働党の48%に大きく水をあけられています。背景には生活費危機があります。インフレ率はおよそ10%と深刻な物価高が続いており、ストライキも相次いでいます。国民が日常生活に不満を溜めこんでおり、現状の支持率だけを見れば、政権交代は確実です」(佐藤記者)
2023年の経済の見通しは。
「IMF=国際通貨基金はイギリスの2023年の経済成長率の見通しを-0.6パーセントとしました。ちなみに日本は+1.8%、経済制裁に苦しむロシアも+0.3%という数字です。IMFはマイナス成長の要因にEU離脱を挙げませんでしたが、もちろん影響があるというのがイギリス国内の見立てです。ブルームバーグ・エコノミクスは『EU離脱でイギリス経済は年間16兆円の損失をこうむっている』と分析しています。EU離脱で、移民政策などをイギリス独自で決められるようになりましたが、代わりに労働力不足、物を輸出入する際の手続きに費用が必要になったりと弊害も生じているのです」(佐藤記者)
先週ゼレンスキー大統領が「ナンバー10」に電撃訪問したが。
「ゼレンスキー大統領は欧米に戦闘機の供与を求めています。イギリス国民の6割がウクライナへの戦闘機供与に賛成であり、政府もウクライナ支援を継続する意向ですが、イギリスの経済問題が立ちはだかる可能性もある」(佐藤記者)
総選挙までにスナク首相がどう立て直しを図るのか、注目が集まる。