デ・ゼルビ監督は今、三笘薫を更なる高みへ引き上げようとしている。
日本時間2月19日に開催された24節ブライトンvsフルアムの前日会見でイタリア人指揮官は「1対1の局面において、三笘は世界で最も素晴らしい選手に1人だ。彼に改善して欲しい点はもっとピッチの内側に入り、チームメイトと一緒にプレーすべき点である」と三笘への新たな期待を述べた。
厳しい“三笘対策”とデ・ゼルビの試行錯誤
三笘が最も得意とするレーンは大外である。ハイライトシーンで何度も映し出されるプレーからもこの意見に異論はないだろう。もちろん多くのクラブが三笘の大外を防ぐ対策を講じている。この日本代表MFがボールを持ったときに相手サイドバックだけでなく中盤の選手もカバーに入る三笘対策は定番だが、これまで完全に三笘薫を止めきることができたチームはなかった。
ところが、前節の対戦相手であるフルアムは見事に三笘を封じてみせた。大外でボールを受けた三笘に対して、快速のオランダ代表DF・テテが縦を塞ぎ、カバーに入った中盤が中を塞ぐ。23節のクリスタルパレス戦でも苦戦を強いられたが、ここまで封じられてしまうのはほとんど記憶にない。
ただ名将デ・ゼルビは三笘が苦戦する状況に黙って指を咥えていたわけではない。着々と三笘対策が進む中、23節のクリスタルパレス戦では三笘と左サイドでコンビを組むエストゥピニャンの偽サイドバック起用に踏み切った。エストゥピニャンがより内側でプレーすることにより、三笘が仕掛けやすい展開を構築したのだ。
しかし、ある程度上手くいってたように思えたこの新戦術だが、フルアム戦ではほとんど見られなかった。デ・ゼルビも三笘を中心とする左サイドの構成をどうしていくかは手探りなのかもしれない。
ただはっきりしているのは、現状大外の三笘を止める策が構築されてしまった以上、デ・ゼルビは三笘がより活躍できるような新たなアイデアを生み出している真っ最中だということだ。そのアイデアの一つが三笘の内側レーンで味方との連係を深めることである。
三笘薫の得点機が増える可能性
三笘がピッチの内側でプレーしようとしている様子は散見されている。例えばフルアム戦の3分、三笘は低い位置からドリブルで中央へ切れ込み始める。その動きに呼応して、ブライトンのトップ下を務めるマクアリスタは三笘のドリブルコースを開けるように外へ流れていくため、混乱したフルアムDFは三笘へのマークが曖昧になる。そして日本代表MFは多くの敵DFを引きつけ逆サイドへと展開した。この一連の流れからブライトンは決定機を創出することに成功している。このように三笘が普段得意とする大外だけでなく、内側でもアクションを起こす形はブライトンの新たな攻撃のオプションとなるだろう。
そしてインサイドでプレーするウイングになるということはチームの攻撃を活性化させるだけでなく、三笘にとっても恩恵が大きい。よりゴールに近い位置でのプレーが増えるため、得点機会が増える可能性が高いのだ。過去にデ・ゼルビも三笘に対して「10ゴール以上を決めること」を何度も要求していると公言していた。三笘へピッチの内側でのプレーを希望しているのは、ドリブルからのチャンスクリエイトだけでなく、得点源として更なる結果を期待しているからとも推察できる。
三笘は今、決して小さくはない試練に直面している。この試練を乗り越えるためには内側でもプレーできるようになるという、今まで求められて来なかった能力を開花させる必要がある。ただあっという間にブライトンの各選手の能力を引き立てたイタリア人指揮官であれば正しく三笘を導いてくれるに違いない。
(ABEMA/プレミアリーグ) (C)aflo