FIFAワールドカップカタール2022で、レギュラーとして3試合に出場した板倉滉は、今季よりドイツのメンヘングラートバッハでプレーしている。加入直後から不動のポジションを掴み、先日行われた強豪バイエルンとの一戦では、身体を張ったディフェンスで勝利の立役者となった。
ブンデスリーガ1年目から不動のレギュラーとして活躍する板倉のこれまでのキャリアとプレースタイルに迫る。
【映像】“現代型CB”板倉滉、絶対王者・バイエルン相手にも負けない対人守備
板倉のキャリアとプレースタイル
板倉のサッカーキャリアは地元のサッカークラブから始まった。その後、小学4年生の時に川崎フロンターレの下部組織にトライアルで合格。フロンターレ時代にはブライトンに所属する日本代表FW三笘薫やデュッセルドルフに所属する日本代表MF田中碧とチームメイトだった。
そんな環境の中、板倉は順調にカテゴリーを上げていき、U-18川崎フロンターレではキャプテンも務めた。川崎のトップチーム昇格後はベガルタ仙台に武者修行へ。そこでの活躍が目に留まり、当時、世界各国の若手選手を青田買いしていたマンチェスター・シティへ移籍する。
マンチェスター・シティでの出場は叶わなかったが、フローニンゲン(オランダ)とシャルケ(ドイツ)を渡り歩き、大きく成長を遂げる。その間も世代別代表に選ばれながら、東京五輪にも出場し、ベスト4に大きく貢献した。そして昨夏にメンヘングラートバッハへと移籍。移籍初年度からチームに即フィットし、先に挙げたFIFAワールドカップカタール2022での大活躍をみせた。
板倉がどのチームでも重宝されてきた理由はフィジカル、テクニック、戦術理解度全ての能力の完成度が高い現代型のセンターバックであるからだ。スピードとパワーに秀でたブンデスリーガ選手相手でもフィジカル面では劣ることはない。加えて現代型のセンターバックでは必須の足元の高さも兼ね備えている。本職はセンターバックであるが、かつてはボランチとしても起用された経験があり、テクニックに関しては折り紙付きだ。「滉は戦術的に非常に訓練された選手だ」と、ボルシア・メンヘングラートバッハのスポーツディレクターが語るように、戦術理解度も高く、指揮官にとっては貴重な存在である。
絶対王者バイエルン相手にも高パフォーマンス
バイエルンはブンデスリーガの多くの選手にとっての査定試合だ。世界屈指の組織力、個の力を誇る絶対王者相手にどこまでのパフォーマンスを発揮できるかが問われる重要な一戦となる。プレッシャーの掛かる状況だが、板倉は終始安定したパフォーマンスを披露した。
バイエルンの豪華攻撃陣をどこまで抑えるかが鍵となったこの試合、2失点こそ喫したものの、板倉個人では対人戦もほとんど負けることなく、バイエルンFWエリック・マキシム・シュポ=モティングを自由にさせなかった。81分には途中交代で出場したバイエルンFWマティス・テルがペナルティアーク付近で強烈なシュートを放つと、板倉は体を投げ出し、決死のブロック。板倉の特徴でもあるギリギリのところでの粘り強いシュートブロックが飛び出た印象的な場面だった。
守備面で素晴らしいパフォーマンスを見せた板倉だが、特にこの試合で際立ったのは、ビルドアップの安定性だ。バイエルンのフランス代表DFダヨ・ウパメカノが前半10分に一発レッドで退場したため、数的有利の状況ではあったが、正確なパスでチームの攻撃を後方から支えた。ビルドアップの時には大きなミスを犯すことなく、隙をついて鋭い縦パスを入れ攻撃の起点となった。
板倉はトッププレーヤーが集まるバイエルンの選手相手にも全く怖気付くことなく、攻守に渡って高いパフォーマンスを見せた。国際大会出場をかけたリーグ後半戦に向け、バイエルン相手の勝利はチームにとっても弾みとなっただろう。現在、メンヘングラートバッハは8位と、ここから欧州カップ戦出場権獲得は厳しいチャレンジとなるだろうが、この日本代表DFが安定したパフォーマンスを続ければ、後半戦の巻き返しもあるかもしれない。
(ABEMA/ブンデスリーガ)