「“生徒のため”というキラーワードで思考停止」「教員不足で教頭先生が無理やり授業」現役教員に聞く“教育現場の課題と解決策”
【映像】現役教員や生徒から寄せられた相談内容
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 卒業シーズンを迎え、来月から新年度が始まる。いま、教育現場はどのような課題を抱えているのか。現役の教員に話を聞いた。

【映像】現役教員や生徒から寄せられた相談内容

 Twitterで学校が抱える問題を発信し、これまで4000人以上からDMで相談を受けてきた公立中学校教員の合法先生。現役の教員や生徒、保護者、教員を志す学生など、さまざまな立場の方からあらゆる内容の相談が送られてくるという。

「例えば、生徒からは卒業式で『原則マスクを外しましょう』とアナウンスされたときに『今更みんなに顔を見られるのは嫌だ』と相談されたり、『大学入試の後期日程の前に卒業式がある。そこでみんながマスクを外しだして万が一感染したら、3年間の努力が水の泡になってしまう』とDMが送られてきたりすることもありました」(公立中学校教員・合法先生、以下同)

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 他にも、合法先生のもとには“周囲には言いにくい本音”が寄せられている。

 教員の働き方改革の一環として、部活動の活動時間を見直す動きがみられる中、板挟み状態で苦しむ教員もいるようだ。

「保護者から教育委員会に『うちの子の学校だけ練習試合を午前中で引き上げなければならないのはおかしい』というクレームもあったそうです。この問題はみんなが同じガイドラインを守っていたら解決するかと思います」

 クレーム対応は、保護者からのものだけではなく、学外からもあるという。

「例えば、フードコートで生徒が暴れていたり、物を壊したりしている、などです。しかしこの問題は警察案件だと思います。器物損壊や営業妨害になれば学校の話ではありません。そもそも、学校の敷地外で休日に行われた迷惑行動でもすべて学校に連絡がくる現状がおかしいのです」

 ただでさえ他の業務を抱える中でのクレーム対応。今の時代、ひとたびインターネット上で炎上でもしようものなら、その負担は想像を絶する。

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 「教員はブラック」という印象が浸透し、教員採用試験の倍率は低下。全国の学校現場で深刻化する教員不足に対応するため、文部科学省は教員免許がなくても採用できる制度を積極的に活用するよう全国に通知したが、これに対しても教員は不満をこぼしている。

「『一生懸命努力してとった教員免許なのに今更なに?』という声です。私も人手不足になってから『免許は要らない』というのはすごく乱暴な気がします。また、質の確保も難しいはずです」

 多くの悩みに絡んでくるのが長時間労働の問題。部活動・行事の練習・家庭訪問など、業務を削減できる場面はあるものの、「一つひとつ改善するための話し合いに割く時間がないのが現実だ」と合法先生は話す。

「学校は基本的に、前例踏襲が素晴らしいことだという考え方があります。今までやってきたからという理由で、業務を削減するのが非常に難しいです。また、『生徒のため』というキラーワードがよく使われますが、その言葉で思考が停止してしまうことも問題です」

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 ここからは、ニュース番組『ABEMAヒルズ』のコメンテーターで、教員の働き方や部活問題を研究・発信している名古屋大学の内田良教授に話を聞いていく。

――「個人に合わせた教育」は進んでいるのか?

「前進していますが一方で、例えば学校に制服のスカートで行きたくない生徒に対して『あなただけジャージでいいよ』となると、“個人対応のようで特別扱い”になります。それぞれ個性があっていいではなく、特別に要望を言ってきた人だけを認めて“浮く”結果になります」
 

――ブラックな環境の中で、本気で子どもたちの才能を伸ばしたり個々に対応したりするのは難しい?

「先生たちは忙しすぎて、子どもたちの顔色が見えていません。そうした中で、子どもに自由を許さない社会全体の空気もあって、それが教員の長時間労働に転嫁していくことでまずい流れになります」
 

――「先生になりたい」と言う人が減少している現状に対してどう思う?

「実は、既に危機が目の前に現れています。教科担任や学級担任がいないということが起きているのです。そのため代わりに70歳の臨時の先生が入ったり、教頭先生が無理やり授業をしていたりして、直接子どもにも影響が出ています。学校の教育が回らないときに、教育を手厚くしていくにはどうしたら良いかを考えなければなりません」
 

――実際にはどうしたらいいのか?

「教職の魅力を伝えた方がいいという議論がありますが、問題はそこではありません。魅力があるのはみんなわかっています。そうではなく、もし先生が17時くらいに帰れたら最高の職場になります。魅力を高める以前に、職場環境や労働環境をどうするか。それによって自ずと魅力は高まるはずです」

「『長時間労働が嫌で教員にならない』と言う若者が多いので、自分のプライベートも大事にできるようになるべきだと思います。土日も勤務する先生に対価が支払われないことも問題です」

(『ABEMAヒルズ』より)

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