TWICE、ENHYPEN、TREASURE、Kep1er…韓国のサバイバルオーディション番組出身のK-POPグループは枚挙にいとまがなく、そうした番組の人気は日本でもすっかり定着した。
【映像】“第2の東方神起”と呼ばれるも契約終了で活動休止、30代アイドルの現状
韓国制作の番組のみならず、NiziUを生んだ『Nizi Project』、JO1とINIを生んだ『PRODUCE 101 JAPAN』シリーズなど、日韓合同プロジェクトとして行われた企画も大成功。日本でもBE:FIRSTを輩出したオーディション番組『THE FIRST』が話題となった。J-POPもK-POPも、ヒットチャートを眺めてみれば、オーディション番組出身のグループが必ず名を連ねているような状況だ。さながら甲子園を目指す高校球児を見守るかのように、夢を追う若者が切実にデビューを目指して切磋琢磨していくオーディション番組に夢中になり、必死で応援する人は着実に増えている。
事務所との契約期間の壁、兵役の義務…様々なグループ事情
だが夢を叶えてデビューしたあとも、芸能界では熾烈な競争が待っている。そして韓国では、アーティストと事務所の契約期間が最長7年間と定められていることも大きな壁として立ちはだかる。TWICEやSEVENTEENのように全員が再契約の道を選び活動を続けるというケースもあるが、7年の壁を越えられずメンバー脱退や解散の道を歩むグループが多数と言えるだろう。
さらに韓国芸能界特有の悩ましいトピックとして、徴兵制による兵役の義務も挙げられる。男子は30歳になる年までに、2年間の兵役に従事しなければならない。2022年末には、世界的スターとなったBTSからついにJINが最初に入隊し、大きな話題となった。SUPER JUNIORのように全員が兵役を終えてもなお活動を継続しているグループも存在するが、兵役前後にメンバーが脱退してしまったり、空中分解してしまい活動を断念するケースも珍しくない。放送中のオーディション番組『BOYS PLANET』(ABEMAで配信中)にはデビュー7年目のキャリアを誇るPENTAGONのメンバー・フイが練習生として参加し、多くの視聴者を驚かせたが、彼は「兵役から戻ってきたら状況が以前とだいぶ変わってしまっていた。今僕に与えられた選択肢は、この番組への参加しかなかった」と涙ながらに語っていた。兵役の2年間とは、K-POPアイドルたちにかくも重くのしかかるものなのだ。
念願のデビューを果たしたとしても、このようにK-POPグループが順風満帆に活動し続けていくハードルはなかなかに高い。それでも再度チャンスを掴み取ろうと、挫折や苦悩を味わったアイドルたちが素晴らしいパフォーマンスで競演するサバイバル番組も話題を集めており、酸いも甘いも味わってきた大人世代の心にも深く刺さる内容が多いのだ。
デビュー経験のあるアイドルグループのサバイバル番組
そんな中現在放送中のサバイバル番組『PEAK TIME』(ABEMAで配信中)では、デビュー経験のある男性アイドルたちが「ワールドワイドアイドル」の座を目指して戦いを繰り広げている。2019年にデビューした5人組グループ・VANNERは、会社の事務までメンバー自らがこなし、全員がアルバイトをして生活費をまかなっているという。そんな彼らはステージに上がると歌唱力・ダンス共に圧倒的なパフォーマンスを見せ、ギュヒョン(SUPER JUNIOR)やティファニー(少女時代)など一流アーティストからなる審査員たちに「こんな才能が埋もれていたなんて」「自分を振り返る機会になった。お礼を言いたい」と感動の嵐を起こした。
さらに2010年にデビューし、一時“第二の東方神起”として期待されるも、兵役などで活動休止に追い込まれていた大国男児も出演。この番組のためになんと14年ぶりにレッスンを受けたといい、さわやかな楽曲のコンセプトを表現するために「トレンド感がない」とダンストレーナーから厳しい指導を受けながらも、それらを謙虚に受け止めて邁進し、見事なステージで絶賛された。
このほかにも、実力あるメンバーが脱退してしまうも努力を重ね、「この番組で初めて褒められた」と涙を流すグループや、3回ものデビューを経験するも想像とはかけ離れていたメンバーなど、さまざまな事情でくすぶった日々を送らざるを得なかった者たちがチャンスを掴もうと登場する。多くの出演者たちは歌唱力、パフォーマンスともに高い実力を持っているので、その真価が発揮されるステージは見応えたっぷりだ。
またK-POP界の“KING” “QUEEN”の座を懸けて真剣勝負を繰り広げる『KINGDOM』『QUEENDOM』シリーズからも目が離せない。『KINGDOM : LEGENDARY WAR』(2021年)にはStray Kids、ATEEZ、THE BOYZといったいまや飛ぶ鳥を落とす勢いのグループから、iKON、BTOB、SF9といった大物グループまでもが出演。SF9は「グループの人気に火をつけたい」と意気込み、iKONは最初のグローバル投票でまさかの最下位となるなどの波乱を味わいながらも、最後まで自分達らしい魅力を放ち底力を見せつけた。
『QUEENDOM』シリーズにはこれまでMAMAMOO、OH MY GIRL、Kep1er、宇宙少女らが出演。『QUEENDOM2』(2022年)では事務所のトラブルやコロナ禍で思うように活動できなかったLOONAが「チャンスをつかんで認められたい」と語り、解散したGFRIENDから3人のメンバーで結成され、2022年に再デビューしたVIVIZは「今の私たちは新人なので期待してほしい」と闘志を燃やしていた。そして最終回までミッションを重ねていく過程で、グループの枠を超えて友情が生まれていく様にも、感動する瞬間は多いだろう。
芸能界の厳しい現実に目を背けたくなる瞬間もあるが、オーディション番組で未来を夢見る若者を応援する際と同様に、挫折しても諦めず立ち上がり再起に懸ける者たちの姿にはきっと胸を打たれること間違いなし。何かに諦めそうになった過去がある人や、挑戦する勇気を求めている大人世代こそ、熱いサバイバル番組を観てみてほしい。