万引きは「アルコール依存症」と同じ? 脳のメカニズムを京大が研究
【映像】「万引きを繰り返す人」の脳の活動を研究
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 万引きなど、物を盗む行為を繰り返すのは“依存症”と同じメカニズムが関係しているとする研究結果が発表された。調査から何がわかったのか、研究者に話を聞いた。

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「“窃盗症”という、薬物依存症とほぼ同じようなメカニズムが関わっていることを解明した」

 こう話すのは、京都大学大学院・情報学研究科の後藤幸織准教授。窃盗症とは、盗みたいという衝動や欲求を制御できず、窃盗を繰り返してしまう精神障害のこと。“依存症”という可能性は以前から指摘されていたが、科学的な根拠は今までなかったそうだ。

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 しかし、今年2月、後藤准教授らの研究グループは物を盗む行為を繰り返してしまう患者に「アルコール依存症と同じ脳のメカニズムが見られた」という研究結果を発表した。

「(アルコール依存症患者は)ネオンとアルコールを結びつけてしまうような“誤った学習”をしてしまうことがあるとわかってきている。同様に窃盗を繰り返す人にも誤った学習が関連していると思い、窃盗してしまう環境や状況に対する反応を調べた」

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 研究は、窃盗症患者11人と健常者27人によって実施。スーパーの店内や陳列された商品のほか、屋外の風景を写真や動画で見てもらい、視線や脳の活動を測定した。その結果、人がいないスーパーの店内の写真を見た窃盗症患者には、健常者には見られない特徴が現れたという。

「特異的な目の動きが見られることに加えて、前頭前野と呼ばれる脳の神経活動が普通と異なることがわかった。窃盗症は、環境や状況を誤って学習した結果ということが考えられる」

 また、人がいる店内や商品のみを見た場合はこうした反応は見られなかったという。こうした結果から、「窃盗症は依存症である可能性が高いのではないか」と話す後藤准教授。今後は、アルコールや薬物といったほかの依存症との関連を追求し、窃盗症の適切な治療につながればと期待を寄せる。

「窃盗症は現在、精神疾患の精神障害のマニュアルではまだ『依存症』というカテゴリーに入っていない。今回の研究で、窃盗症が依存症であるとする科学的な根拠を提示できるので、より適切な治療に繋げることができる。また、万引きなどの犯罪行為にも刑罰だけでなく『精神障害としての治療が必要になるケースがある』と提示できるようになることも重要だ」

 この研究結果を受け、ニュース解説YouTuberで「The HEADLINE」編集長の石田健氏は「これから研究が進んでいく必要はある」として、次のように述べる。

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「アルコール依存の患者が行っている『缶を開ける音を聞かないようにする』『ラベルを見ないようにする』などの対処法も、学術的な知見が積み重なって生まれたアプローチだ。この万引きに関しても、研究が積み重なることで、『依存症だからこういう治療をしよう』というアプローチが出てくるのではないか」

 また、石田氏はこうした依存症の再犯を防ぐためには「司法のあり方も合わせて見直していくことが重要だ」と考えを明かした。

「 『刑罰ではなく治療をした方が良いのではないか』という意見も出てきていて、司法のあり方も合わせて見直していくことで、依存症に苦しむ人へのより効果的なアプローチに繋げられるのではないか。万引きの場合は、店に被害が出ているのでそこの保証は当然必要だが、その先にある依存症からどう抜け出すのかに関しては、今後もアプローチが進んでいくべきだ」

(『ABEMAヒルズ』より)

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