将棋の藤井聡太王将(竜王、王位、叡王、棋聖、20)が3月11・12日の両日に行われた囲碁将棋チャンネル 第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第6局で挑戦者の羽生善治九段(52)に勝利し、通算成績4勝2敗で王将位初防衛を決めた。終局後に行われた記者会見では初防衛の喜びを語るとともに、タイトル通算99期を誇る“レジェンド”羽生九段との七番勝負を「充実感のあるシリーズだった」と振り返った。会見の内容は以下の通り。
――初防衛を果たした今の気持ち
内容的にも難しい将棋が続いたシリーズだったと思うので、大変な将棋ばかりでしたが、防衛という結果を出せて嬉しく思っています。
――羽生九段との対戦。これまでのタイトル戦との違いはあったか
羽生九段とタイトル戦の舞台で戦えることを楽しみにしていました。内容もすべて違った戦型になって一手一手考えるという展開で非常に充実感のあるシリーズでしたし、羽生九段の強さを感じた部分も多くあったと感じています。
――棋王戦五番勝負に続き、名人戦七番勝負の挑戦者にも決定している
これからも棋王戦や名人戦をはじめ重要な対局が続くので、それらの対局に向けてしっかり良い状態にしていければと思いますし、少しずつでも実力を伸ばせるように取り組んでいけたらと思っています。
――シリーズは先手番でそれぞれが勝利し、2勝2敗と並ばれた時の心境は
第4局は長考した場面でミスをしてしまって局面のバランスを崩してしまい残念なところもあったんですけど、改めて三番勝負ということで気持ちを切り替えて臨めればという風に思っていました。
――羽生九段の強さをどんなところに感じたか
今シリーズを振り返ると、羽生九段に良い手をたくさん指されたなと感じてます。第1局で歩を垂らされた手であったり、第4局での金打ちであったり、指されるまで気付いていなかったですがどちらも考えてみると良い手だなということが分かってきたので、長時間の対局で時間を使って考えて指す中で、改めて羽生九段の強さを感じるところが大いにあったのかなと思います。
――感想戦での両者の楽しそうな様子が印象に残った
今シリーズはすべて違う展開になって、自分自身経験の少ない将棋も多かったですし、その中で感想戦も含めて局面を考えることができるというのは自分自身にとっても非常に楽しい時間だったと感じています。
――タイトル戦ですべて違う戦型、偏った戦型、どちらを好むか
今回のシリーズはすべて違う戦型や展開になったのは、羽生九段が意図されたところがあったのかなと思うんですけど、ひとつの戦型を突き詰めて考えるというのも面白い部分があると思いますが、今回のシリーズは自分自身経験の少ない新鮮な局面が多くて非常に面白かったですし、勉強にもなったかなと思っています。
――シリーズ中に印象に残った羽生九段の姿は
第1局の終局後のコメントで、(持ち時間が)8時間あっても結局短く感じるという内容をおっしゃられたと思いますが、その言葉も非常に印象に残りましたし、自分自身もその言葉の意味というものを実感したシリーズだったなと思っています。感想戦でもいろいろな検討をすることができて、その点も勉強になったなと感じています。
――七番勝負の前後で羽生九段の印象は変わったか
今回のシリーズで8時間という持ち時間で6局を指すことができて、今まで以上に羽生九段の柔軟さや積極性を感じる場面が多かったと思います。先ほども第1局の一手を挙げましたが、それ自体は少し手を渡すようなふわっとしたところがあるんですけど、こちらが踏み込む手を選択すると一気に終盤に入る可能性があるというところで、指される前はやりづらい手なのかなと思っていたんですけど、実際に指されてみるとその手に対応する手、あるいはこちらが攻めて行く手どちらもかなり難しいということがわかったので、少しやりづらさそうに見えるところを掘り下げてそこに可能性を見出すところが強さなのかなと感じたところもありました。
――羽生九段とタイトル戦を戦った経験は、今後どのように活かされるか
6局とも全く違う展開になり、うまく判断できない局面や自分にとって苦手や課題となる部分も見えたところがあるので、そのあたりを改善できるように取り組んでいけたらと思っています。
――決着局の佐賀県の印象
対局は初めてでしたが、昨年祝賀会などで呼んでいただいていたので、自分自身では初めてという感じはしなかったですし、とても快適に対局できたかなと感じています。
(写真提供・日本将棋連盟)