将棋の叡王戦挑戦者決定戦が3月16日に行われ、菅井竜也八段(30)が永瀬拓矢王座(30)に勝利し、藤井聡太叡王(竜王、王位、王将、棋聖、20)への挑戦権を獲得した。菅井八段は2017年度の王位戦で初戴冠、平成生まれ初のタイトルホルダーとしても知られている。藤井叡王にとっては、タイトル戦の舞台で初めて振り飛車党の挑戦を受けることになり、大きな注目を集めることになりそうだ。五番勝負は4月11日、東京都千代田区の「神田明神」で開幕する。
菅井八段が同年代の強豪・永瀬王座を破り、初の叡王挑戦を決めた。第4期叡王戦挑戦者決定三番勝負でも激突している両者だが、当時は永瀬王座が2勝1敗で勝利。後の七番勝負でも奪取に成功し永瀬王座にとって初タイトルとなった。再戦となった本局では、後手の菅井八段がゴキゲン中飛車の永瀬王座が超速で対抗。すぐに前例を離れ、大激戦が繰り広げられた。
互いに譲らぬギリギリの展開から、先に主導権を握ったのは菅井八段。しかし“負けない将棋”を掲げる永瀬王座も簡単には譲らず、激しい攻防戦へと突入した。着実にポイントを積み重ねる菅井八段は、玉と反対の端にいる角を確保。優勢を確立すると、一気にリードを切り開いていく。最後は2枚の角で先手玉を包囲し、待望の勝利を手にした。
この結果で、菅井八段は叡王初挑戦、2018年度王位戦七番勝負以来5期ぶりのタイトル戦復帰を決めた。藤井叡王とは過去に8局の対戦があり、藤井叡王の5勝3敗。しかし、2022年8月の順位戦A級での対戦では菅井八段が快勝を飾っており、藤井叡王が順位戦一斉対局終局後に「A級の厳しさを感じた。まだまだ力が足りないと感じた一局だった」と振り返ったことも記憶に新しい。
現タイトルホルダーの藤井叡王が8タイトルのうち5つを占め、かつ棋王獲得にあと1勝、最年少名人をかけた挑戦権を獲得と突き進む中、この快進撃を止めるのが菅井八段となるのか、五番勝負の開幕が今から待ち遠しい。
◆菅井 竜也(すがい・たつや) 1992年4月17日、岡山県岡山市出身。井上慶太九段門下で2010年4月に四段四段。2011年の大和証券杯最強戦で棋戦初優勝を果たし、同年度の将棋大賞新人賞を獲得した。2014年には勝率一位賞、最多勝利賞、升田幸三賞を受賞。さらに2017年度の第58期王位戦でタイトル初挑戦・初戴冠を果たし、平成生まれ初のタイトルホルダーとなった。2021年度には銀河戦と朝日杯をダブル優勝を飾り、通算の棋戦優勝数は計4回に。振り飛車党の絶対的エースとして、順位戦A級、竜王戦2組に在籍。通算成績は387勝183敗、勝率は.6789。