【WBC・準々決勝ラウンド】日本代表9-3イタリア(3月16日/東京ドーム)

 とにかく吠えまくった。エンゼルス・大谷翔平投手が「3番・投手」で先発出場し、投手として4回2/3を4安打1失点5奪三振と力投した。最速164キロのストレートに切れ味鋭いスライダーなど、持てる力を存分出し尽くしたが、何より印象的だったのは全71球のうち大半で聞こえてきた大谷の叫び声。満員の球場が静まる中、繰り返し大谷の声が響くという、不思議な空間が生まれていた。

 2021年シーズン。ホームランを打っても、強打者から三振を奪っても、大谷がここまで感情を剥き出しにしたことが、どれだけあっただろうか。チームの勝利を何よりも優先する男だけに、逆転ホームランやピンチを切り抜ける奪三振などでは、大きな声を出したこともあった。ただしマウンド上で初回の1球目から、何度も何度も声を張り上げるという場面は、まずなかった。それだけ大谷は今大会、国内で最後のマウンドで出し尽くすと決めていたのだろう。

 大会開幕前の記者会見で大谷は「勝つことだけを目指す」「優勝だけ目指す」とはっきり言った。所属するエンゼルスでは優勝争いはおろかポストシーズンにすら進出できないことが続き、ヒリヒリとした戦いから遠のいていた。そこに来て、日の丸を背負って世界一を目指すWBCとなれば、久しく眠ってしまっていた大谷の心が燃え上がり始めたのだろう。マウンドでは全力投球、打席でフルスイング、ベンチでは仲間に声をかけまくる。これが本来の大谷の姿かもしれない。
(C)Getty Images

【映像】最速164キロをマークした大谷翔平
【映像】最速164キロをマークした大谷翔平
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