将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」のドラフト会議が4月1日に放送される。今年の目玉の一つといえば、個人戦だった第1回大会から通じて6回目の開催にして初出場となる千田翔太七段(28)。超早指しのフィッシャールールについては「3年前だったら自信があったかもしれません」と笑うが、慣れないルールを戦う上で、小学生以来という団体戦のパートナーに誰を選ぶか。
千田七段は、現在の将棋界では当たり前になってきた将棋ソフト(AI)による研究を早々に取り入れたことでも有名な棋士。現在、頂点に君臨する藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が奨励会のころ、将棋ソフトの活用を勧めたというのも有名なエピソードになっている。ただ、この話だけだとクールなイメージを持たれがちだが、実際にはユーモアに富んだトークも達者な棋士でもある。過去の大会で印象的だったシーンについて「筋肉と新婚、それに尽きます(笑)。ありましたよね、そういうの」と、前回大会のドラフト前に永瀬拓矢王座(30)が指名候補者のヒントを出したところを持ってくるあたり、着眼点が違う。
放送対局でフィッシャールールを指すのも初めてなら、リーダーとしてドラフト会議に参加するのも初。初めてのことばかりだけにチーム構想は練ってきたが、懸案は同門の棋士たちだ。「ほぼ決めているんですが、問題はうちの兄弟子(山崎隆之八段・糸谷哲郎八段)なんですよね。全く予想がつかない。どなたかが森門下のチームを作るんじゃないかなと。そうなった時に取りたい方がかぶって中途半端なチームが作られてしまうのは避けたいので、森門下をめぐる争いが起こらないチームにしたいです」と、同門の奪い合いは回避する方針だ。
チームのイメージについては「狙っている2人を選ぶと、まったりしたチームになるんじゃないかと。性格的に尖りすぎた方が集まるようなこともない。ほんわかしたチームになると思っています」と、激しい戦いとは真逆に、チームとしては穏やかな時間を過ごしたいようだ。
持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算の超早指しは、関西将棋会館の棋士室で若手棋士や奨励会員が何局も指した「10秒将棋」を思い起こすという。「あれが内部ではすごく盛り上がるんですよね。そういう内輪乗りというか、この手はどうとかいう感じで騒いでいるのが、ABEMAトーナメントのおもしろさだと思っています。指し手の細かい善悪は抜きにして、勢いのいい手やリアクションを呼び起こすような戦い方がいいんじゃないかと思っています」。この男、やはりエンターテイナーだ。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)