“翌日配送”も難しく? 迫る物流「2024年問題」 長距離トラック運転手が明かす実情
【映像】「誰が荷物運ぶんですか?」長距離トラック運転手の本音
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 欲しいものはインターネット通販で買えば翌日には自宅に届く…そんな当たり前のサービスが、来年から困難になるかもしれない。背景にあるのが「2024年問題」だ。

【映像】「誰が荷物運ぶんですか?」長距離トラック運転手の本音

 働き方改革関連法は、健康被害や過労死を引き起こす長時間労働などが社会問題になり、2018年6月の衆議院本会議で議論され成立した。これにより、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働上限が、現状の目安より約200時間削減され、年間960時間に規制される。

 施行まで1年。1日に運べる荷物量が減り、運送サービスの維持が難しくなるといった声もある。Twitterでは「残業を減らされたらドライバーの収入が減ってしまう」「荷主が運賃を上げれば済む話。ドライバーへのしわ寄せはもう勘弁」などの声も寄せられている。

 トラック業界の現場は2024年問題をどう捉えているのか。「ABEMA Prime」では、現役の大型トラック運転手と専門家を招き、現状の課題を考えた。

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 トラック運転手歴9年目で長距離運送の経験を持ち、YouTubeでも発信を行っている、かよのすけさんは、2024年問題について「かなり厳しい状況だと思う」と指摘する。

 かよのすけさんは「今は短距離ドライバーとして運行管理法を守っている会社に勤めている」とした上で「正直なところ、トラック運転手の労働時間は法律を守れていない会社が多くある」と実情を明かす。

 また、残業についても「正直、当たり前だし、どこまで改ざんできるかという会話や『どうやって、かい潜っているの? 』といった会話があるぐらいだ。

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 このような実態にはトラック運転手の“給与体系”が大きく関わっている。

 例えば、千葉から静岡へ運送する場合は拘束時間12時間で、運転手がもらえる額は4万円だが、実質的な報酬が概ね1万円以下だという。

「ドライバーがもらえる金額は、会社に入るお金から燃料や高速費、タイヤ代などが引かれ、概ね1万円以下になってしまう」

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 専門家の見解はどうか? 流通経済研究所・主任研究員で、物流や配送業界を調査している吉間めぐみ氏の視点でみた「2024年問題」の課題はこうだ。

「私は農産物の物流をよく研究しているが、農産物は、例えば10トン全部段ボールをそのまま運ぶ、入れて運んで降ろす。そうすると積み下ろしに3時間もかかってしまう。それも全部ドライバーの拘束時間だ。いろいろなものを少しずつ変えていかないと難しい」

 加えて、吉間氏があげるもうひとつの課題は、やはりトラック運転手の待遇面だ。

「収入が減ると、ドライバーも減ってしまう。物が運べなくなることが一番困る」

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 トラック運転手の残業削減策として、現状1人で輸送している体制を2人にしようという案も出ている。しかし、2人体制による弊害もあると、前出のかよのすけさんは指摘する。

「日本のトラックでは後ろに寝台スペースが付いている。2人交代制だと、そこで寝る形になると思うが、後ろに誰かが寝ている状況は、運転している方もとても気を使う。今は一人でやっているので眠気対策として歌を歌ったり、窓全開で大きい声を出したりして眠気対策をしているが、それらができないと、正直しんどいのではないか」

 2014年、国交省は女性トラックドライバーの活躍促進を目指し「トラガール推進プロジェクト」を開始した。積極的に後押しされて、女性ドライバーも働きやすくなってきたのか。かよのすけさんは「正直まだそこまで普及していない」と話す。

「トイレの問題もある。ある日、客先や倉庫でトイレを借りたら、立ちションの容器があった。そこの奥に個室があって、開けたら用を足している男性の方がいて『ああ、すみません』みたいなことがあった。すごく気まずい思いをしたり、女性特有の汚物入れもなかったりする。まだまだこれから配慮が必要な業界だとは思う」

 こうした課題を解決したとしても、単に残業を削減するだけではドライバーの収入は減ってしまう。結局のところドライバーの給与アップを筆頭としたコスト上昇を、売価に転嫁できるかという問題に行き着く。

 前出の流通経済研究所・主任研究員の吉間氏は「よく物流会社さんと荷主側が言うのは『売価を変えられるか?』だ。例えば市場を経由してスーパーに行く場合、消費者に対して値上げができないのに、物流費は上がっている。誰が、その価格上昇分を持っているのかという問題がある」と指摘。

 しかし、吉間氏は「なかなかスーパーやメーカーも売価を上げられない。上げるときもみなさん躊躇して上げる」と話す。

 実は、ここ30年で宅配便の数は4倍に増加している。

 かよのすけさんは「16時間という上限があっても、過去に勤めていた会社では、20時間ぐらいずっと走るようなことがあった。消費者にはAmazonなどのイメージが強いと思うが、おおもとの原料などを運んでいるのが大型トラックの運転手だ。その存在があって皆さんの手元に荷物が届くということは理解してほしい」と語る。

「この番組を通じていろいろな方に運送業を知っていただきたい」というかよのすけさん。最後に「もっと現場寄りに考えてくれる人が増えればいいなと思う時間だった」とも語ってくれた。

 我々の生活を日々支えてくれている運送業界の2024年問題。

 物流全体の最新技術を使った効率化・自動化なども必要だが、トラック運転手の残業削減、賃金アップといった「現場」を支える人々の課題がいま、浮き彫りになっている。(「ABEMA Prime」)
 

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