新社会人が心躍らせる新生活がまもなく始まる。そんななか、マルチなどの悪質商法に狙われやすいのが20代。知識が不足しており、消費者契約の相談件数が多いというデータが出ているが、現状についてマルチなどの悪質商法に詳しい弁護士に聞いた。
「経験不足でいろいろな不安やコンプレックス、承認欲求などのある20~24歳くらいが悪質商法に狙われる」(黒田啓介弁護士、以下同)
消費者庁によると、20代の消費者契約の知識は全世代で最低という結果に。ビジネスの経験不足から、知識が乏しく契約書を読んでも内容を理解できないことが多いことも狙われる原因になっているようだ。さらに、社会人になりたての20代の心理状況も悪質商法のターゲットにされる原因になっている。
「20代はいろいろと不安なこともあるが、『もう少し稼ぎたい』などと何かにチャレンジしたい人もいる。意欲はあるが、そこにつけ込んでくる人もいるので慎重に選んでほしい」
国民生活センターへのマルチ商法の相談割合は、20代が4割以上。年代別で最多となっていて、その契約金額も高額なのだとか。
若者の心理を狙った悪質商法。その被害に遭わないために必要なのは「知識」だという。
「ビジネスや悪質商法に関する知識を学校で教えたほうがいい。海外では、問題のある広告を批判的に見るような教育が行われているが、日本ではそれが不足している。経済や商品の仕組みを知っておいてほしい」
しかし、注意していても騙されてしまった場合はどうすればいいのだろうか。
「『188』に電話をかけて、消費生活センターに相談してほしい。また親をはじめ信頼できる人たちに相談してほしい。SNSで消費相談を受け付けている消費生活センターもある」
マルチや悪質商法などで20代が狙われやすいという現状について、『ABEMAヒルズ』コメンテーターで経済アナリストの森永康平氏はこう述べた。
「20代になると急に人間関係の幅が広がっていく。社会人になると会社の人や社外の人との付き合いも増えてくるので、信頼できる人がわからなくなってくる。2022年から18歳から成人になっているので、今までは契約しても未成年扱いだったため取り消せていたが、それが取り消せなくなってしまった。詐欺師もそれをよくわかっている」
消費生活に関する知識の平均正答率では、それぞれテーマ別に契約の成立時期や購入した商品の解約、未成年者取消権など様々な知識が問われている。年代別に見ていくと、20代の正答率はクレジットカードの手数料やクーリングオフなどで平均よりも低い項目が目立った。加えて、その他の投資を含む7項目の正答率の平均は、20代が29.6%と最も低かった。
森永氏は、このデータを見て自身が気になったところを次のように語った。
「個人的に気になったのは、意外と20代よりも10代の正答率が高いところ。10代は、今の20代よりも金融教育を受ける機会が増えてきたという仮説も成り立つと思う。その仮説に基づけば20代は“金融教育の狭間の世代”になっているので、気をつけていないとつい引っかかってしまう可能性が高い」
消費者契約やマルチなど見極めるのは難しいものなのだろうか。
「今は騙す側も進化している。Instagramなどで若い人が良いマンションに住んでいたり高級車を乗り回したりしている写真を見せて、こうした生活をおくってることを視覚的に訴求してくる。経験がないと『すごい世界があるもんだなー』と信じてしまう」
(『ABEMAヒルズ』より)