第2期・森保ジャパンの初陣となるウルグアイ戦、コロンビア戦に、角田涼太朗、バングーナガンデ佳史扶、半田陸、中村敬斗が選ばれた。その後、角田が負傷離脱したことで名古屋グランパスの藤井陽也が、冨安健洋も負傷離脱したことロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ(ベルギー)でプレーする町田浩樹が招集され、5人が初のA代表となった。
長友佑都&酒井宏樹を引き継ぐ左右のサイドバックは?
このメンバーを見ると、世代交代が急務とされるDFラインのポジションに20代前半の選手を積極的に招集したという意図が感じられる。
まずは左右のサイドバック。左の長友佑都、右の酒井宏樹という不動の2人からバトンを引き継ぐ狙いから、バングーナガンデと半田が選ばれた。
21歳のバングーナガンデはガーナ人の父と日本人の母を持ち、FC東京U-18時代から攻撃参加と、左足から繰り出される正確なクロスが武器の選手だった。彼がズバ抜けていたのは、対人能力やスプリントなどの身体能力だけではなく、トップスピードに乗ってから判断を変えられる点にある。縦に仕掛けようとしてコースが塞がれていると判断すると、急停止してポゼッションに切り替えたり、別のスペースが空いていると判断すると、ドリブルのコースを切り替えたりすることができる。こうした判断をオフ・ザ・ボールでも実行できることで、攻撃に絡んでいくバリエーションが非常に多い選手だと言える。
同じく21歳の半田は、どの年代でも主軸を張り続けている、いわばエリートだ。彼の強みは、頭の回転が早く、一瞬にして多くの情報を収集し処理できるインテリジェンスにある。右サイドバックの位置から全体を見渡して、ポゼッションに関わるのか、縦に抜け出してサイド攻撃に加わるのかなど、いくつかの選択肢を持ちながら状況に合わせて選択・実行できる。さらに彼の強みは、攻撃から守備に切り替わる瞬間にも発揮される。
攻撃しながらも、相手のカウンターの起点はどこになるのか、リスクになるスペースや選手がどこにいるのかに目を光らせ、トランジションが生じた瞬間に最短ルートでそのリスクを摘み取りにいく。寄せのスピード、球際の強さもあり、まるで遠藤航のようなデュエルの強さを発揮する。攻守における安定感はこの年代ではズバ抜けており、A代表の選出も時間の問題だっただけに、今回の初招集に驚きはなかった。
センターバックは若手の激戦区に
辞退となってしまったが、角田の選出にも驚きはなかった。前橋育英高校時代から185cmの高さと精度の高いキック技術、スピードを備えた稀有な左利きセンターバックとして将来を嘱望されてきた。プロ入りを断って筑波大に進学したことで、「自分の体の仕組みに対する理解や、サッカーに対する考え方がより深まった」と話すように、もともと高い水準で備えていたインテリジェンスがさらに増し、判断やパス、そしてトータル的な守備の質が向上した。横浜F・マリノスで着実に経験を積んだことで、日本代表にふさわしいレベルまで達した。今後もA代表に食い込んでくる存在であることは間違いない。
少し話題が前後するが、センターバックはFIFA ワールドカップ カタール 2022のメンバーから吉田麻也、谷口彰悟に変わる次世代として、23歳の角田に白羽の矢が立ち、彼の辞退を受けて、同じ22歳で、187cmの高さを持つ藤井が追加招集された。
藤井は長身ながら足元の技術に長け、ビルドアップに関われるだけでなく、ポジショニングにも秀でており、カバーリングは大きな武器である。Jリーグで着実に経験を積み重ねており、今回の代表選出でさらに成長曲線を描くかもしれない。
前述したとおり、冨安の辞退で、東京五輪に出場した190cmの左利きセンターバックの町田浩樹が追加招集された。板倉滉、伊藤洋輝、瀬古歩夢、町田、藤井。そしてここに、冨安、角田と、センターバックは若い選手たちによる激戦区と化した。このことは、今後の日本代表を見据える上でもプラスになるだろう。
初選出の中で唯一のMFである中村敬斗は、三菱養和SCユース時代から多彩なゴールアプローチと得点感覚に秀でたアタッカーだった。サイドからのカットインは強烈であり、長い距離をスプリントしてから精度の高いフィニッシュに定評がある。中央からの動き出しのバリエーションも豊富で、相手の守備のズレを巧みに突く仕掛けは一級品だ。17歳でガンバ大阪入りを果たし、翌年にオランダ1部リーグのトゥエンテに渡るまでは順調だったが、ここから彼は、苦悩の時期を過ごした。ベルギー1部、オーストリア2部を経て、オーストリア1部のLASKリンツでようやくブレイクの時を迎えた。
左サイドから繰り出す、矢のようなカットインをA代表でも見せられるか。彼の主戦場である左サイドハーフはU-17、U-20日本代表でチームメイトだった久保建英や、大ブレイク中の三笘薫がいる激戦区。だが、彼のポテンシャルを考えれば、十分にそのポジション争いに割って入ることができるタレントだと言える。
ここから定着し、競争を激化させることでチームが強くなっていくだけに、“初選出組”への期待は大きい。第2期・森保ジャパンの未来を占う、彼らの初陣に注目してほしい。
文・安藤隆人 (c)aflo