双子の転落事故に現役保育士「親なら目を離すなって指摘はズレてる」子どもの“よじ登る力”に注意
【映像】子どもの事故どう防ぐ?「見守り力だけでは無理」必要な対策や環境は
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 先月24日、名古屋市で2歳の双子がマンションの7階から転落、死亡した。捜査関係者によると、窓の右側に置かれていた棚に足を掛け、80センチほどの高さの窓枠によじ登ったとみられている。

【実験映像】“110センチ”の柵をひょいっと…! よじ登る2歳児(実際の動画)

 誤飲、交通事故、風呂場における溺死など、子どもの事故が起きる度に、ネットでは「子どもから目を離すな!」といった声が上がる。この指摘に、ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した現役保育士で育児アドバイザーのてぃ先生は「不可能だ」と話す。

「親にもご飯を食べたり、トイレに行ったりする時間があるわけだから、目を離すなっていう指摘はズレてる。一方で、そうした時に事故が起こるのも事実だ。だから“目を離してもいい環境”を作るしかない。保育園でも昔は、園児がカギのない部屋から出て、一人で家に帰ってしまった事例があった。今はほとんどない。理由は、ほとんどの扉が自動ドアになったからだ。子どもの手が絶対に届かない場所にボタンがある。保育士もたくさんの子どもたちを見ている中で、どうしても全部の子を見きれない瞬間があるから、環境を整えて防止している」

双子の転落事故に現役保育士「親なら目を離すなって指摘はズレてる」子どもの“よじ登る力”に注意
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 幼くても足がかりなどがあれば、自分の身長よりも高い壁を登れる。子どもを不慮の事故から守る活動を行う「Safe Kids Japan」が発表したベランダの手すりに関する実験結果を見ると、子どもたちは大人が思っているよりも簡単に壁を乗り越えていくことがわかる。

 てぃ先生は「棚に登れないようにしていても、2〜3歳なら、自分で棚や椅子を持ってきて、自分の興味関心で動く。特にベランダは、エアコンの室外機や植木鉢が置いてあると登りやすい。窓から落ちないようにするためには、ホームセンターで補助カギを買って取り付けてほしい。千円くらいで売っている」と訴える。

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「子どもの見守りは自動車運転の考え方に似ていると思う。教習所でも『“だろう運転”をやめろ。“かもしれない運転”にしろ』と言われる。『大丈夫だろう』と思って目を離すと、やっぱり何か起きる。気持ちや意識だけで事故は防げない。親がずっと子どもを見るのは不可能だし、求めるべきではない。補助カギも数千円でお子さんの命を救えるのなら、安いものだと思う」と指摘するてぃ先生。

 「Safe Kids Japan」理事の西田佳史氏(東京工業大学大学院教授)は「子どもは思った以上に能力を発揮することがあるし、よじ登る能力は高い。私たちの研究でも、3歳児くらいになると120センチくらい登れることがわかっている。5歳になると7割の子どもが140センチくらい登る。足がかりがなくても、カエルのように壁に足をペタペタとはりつけて登ってしまう。自治体や国は補助カギにお金を出すなど、もう一歩踏み込んだ支援をやってほしい」

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 西田氏は「お風呂の残し湯も2歳までは溺れる可能性がある。3歳児なら120センチまで手が届いてしまう。危ないものは、それより高い場所や奥に置くことが大事だ」という。

「安全にしすぎると『子どもが不健康になる』『ちゃんと発達しない』といった意見があるが、私自身は真逆だと思う。安全にすることで『これはやっちゃダメ』とならずに『いろいろやっていいよ』と言えるから、子どもが活動的になる。安全対策はちゃんとするべきだ」

(「ABEMA Prime」より)

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