親であれば子どもに対して「幸せになって欲しい。できれば生活の苦労はしてほしくない」と願うもの。
ここでは、「早期教育」「非認知能力」「子どもの生涯賃金」という注目ワードに触れながら幼児教育における最新の研究と専門家の分析を紹介する。
まずは、ノーベル賞を受賞したジェームズ・J・ヘックマン教授が関わった「ペリー幼稚園プログラム」を紹介しよう。学術雑誌『サイエンス』に掲載されたヘックマン教授の論文には
・質の高い幼児教育を受けた子どもは受けなかった子どもと比較して将来の所得や学歴が高くなり、安定した生活を送っている
・質の高い幼児教育は「非認知能力」を高める。非認知能力とは、IQなどテストで測ることができる能力ではなく、誠実性、勤勉性、物事をやり抜く力、自制心といったもの
という驚きの結果が明らかになった。
では、質の高い幼児教育とはどのようなものか。そもそも幼児教育の質を計測することができるのだろうか。
慶應義塾大学の中室牧子教授・藤澤啓子教授、筑波大学の深井太洋助教らの研究グループでは、複数の自治体の「保育の質」を定量的に評価する研究を行っている。ここでは、観察者による定量的な評価であり、30カ国以上で広く用いられる「保育環境評価スケール」(Early Childhood Environment Scale, 3rd edition)が用いられている。その結果をみてみると、
・3つの自治体における保育の質は、「養護」「相互関係」「保育の構造」などが高いという点が共通している。
・しかし、積み木、造形、音楽、生活の中で数に親しむ、といった「活動」の項目が低いという点も共通していることが明らかに。
中室教授によると、この「活動」の項目が高くなるためには、自発的に遊びを選択できることや、選んだ遊びを「遊びこむ」時間が確保されていること、遊具・玩具の質・量が十分に用意されていることが重要だが、最近の保育所ではこれらが達成できないところも多いという。
最後に、テネシー州の幼児教育プログラムを検証した最近の研究では、
・保育園に通った子の方が通わなかった子より小学校入学後の学力が低かった
ことが示され、議論を呼んだ。
という結果に。この結果を受けて、中室教授は
「この結果について未だ様々な議論が行われているところではあるのですが、幼児期に、小学校で習う予定の勉強を先取りさせることは期待されるような良い効果を生まないということだと思います。こうした早期教育の効果はごくわずかの初期の間しか持続せず、すぐにそれをしなかった子どもに追いつかれてしまうことがわかっています」
と話した。
さらに中室教授は
「造形、積み木、音楽、数字を使った遊びといった『活動』は、保育所だけではなく、家庭内でもできることなので、ぜひ家庭の中でもやってみてほしい」
とも話している。
(『ABEMAヒルズ』より)





