2023年3月、ネコを殺して食べた男性が動物愛護法違反の疑いで逮捕され、処分保留のまま釈放された。男性はこのネコについて、愛護法の対象外で、狩猟対象のノネコだと認識していたという。
ノネコの判断基準は、人間の生活圏にいるか・いないか程度の違いしかなく、環境省でも判断が難しいとされているが、SNS上では「この動物は殺していいって感覚が分からない」「狩猟を見るとかわいそうな気持ちになる…」という声もあがる。
「命をいただく大切さ」をどう伝えていけばいいのか。「ABEMA Prime」では猟師の石川雄揮氏、そして俳優の東出昌大と考えた。
そもそも狩猟はどのように行われるのか? ネコが対象になることもあるのだろうか
石川氏は「ほとんどの猟師は、ノネコを狩猟鳥獣の対象として見ていない。そもそもネコが罠にかかったら放つ。前段階として罠をかけるのは、害獣に困っていると近隣の方に頼まれた地域だけ。そこにネコがいると聞いたら、ケガをしないように、くくり罠から箱罠に変える判断をする」と説明。
ネコが罠にかかってしまえば動物愛護法に違反する可能性があるだけでなく、「銃を持っているので銃刀法にも関わってくる。すごくナイーブなところがある」といい、現場ではさまざまな法律や可能性に配慮しているという。
石川氏は、自身で狩猟体験ツアーを主催。「狩猟より命の大切さを教えている。狩猟となると動物の命=食育という感じになるが、その先にあるものを伝えたい」と話す。
参加者の中には、「自殺しようと思っていた、という人が参加した時にハクビシンが捕れた。処理をする時に一生懸命生きようとしている姿を見て、とりあえず自殺はやめようと思ったということがあった」という。
動物は敵もいるなかで、その日を精一杯生き、人間よりもずっと生きる喜びを知っている――。これこそが、石川氏がツアーを通じて伝えたいメッセージだ。
一方で、7歳から聞かれた質問に答えることができなかったという。「彼らはアライグマとキョンと殺して、最初は泣きじゃくっていたが、僕や親が“命とはどういうものなのか”“なぜこういうことをしないといけないのか”を伝えたら、すんなりと理解してくれた。キョンは解体して食べて、アライグマは時間の都合で“殺すだけ”になってしまった。すると、この子が『キョンは食べたからわかるけど、アライグマは無駄な命なの?』と聞いてきた。僕は口をつぐんでしまった」。
俳優の東出昌大は、関東近郊の山中を拠点に、狩猟生活を行っている。初めて命を殺めた時の体験を、こう振り返った。
「ものすごく残酷。初めて鹿を捕った時は頭が真っ白で、手もビリビリ震えた。でも、自分が撃ったから、早く留めないと、と思ってナイフを持って走り寄った。躊躇していると師匠が『早く!』と。自分が捕ったからちゃんときれいに食べないと、と思ったその日から、もったいないことはしたらいけない。そもそも、もったいないとは何だろう? 感謝とは何だろう? と考えるようになった」
その上で、「例えばクマは誤解されている部分がすごく多いように思う。山に住んでいると“クマにあったら大変だ”と言われるけれど、実情を知ると違う。ネコの兄貴分みたいなハクビシンもフルーツや野菜をいっぱい食べるけど、それを捕っても人は何も言わない。同じ命なのにと、なかなか一言では答えが出ないことをずっと考えている」と、葛藤や気づきを明かした。
石川氏は「僕らはいきものの命をもらって生きている。残酷だと言われるが、スーパーで食べているような肉だって同じ命があった。その命を体感せずに一生を終えて死んでいくことのほうが、僕はよっぽど残酷だと思っている」との思いを語った。(「ABEMA Prime」より)
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