19シーズンぶりリーグ制覇へ最難関の“鬼門”…リヴァプール対アーセナルをプレビュー
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 19シーズンぶりのプレミアリーグ制覇へ邁進するアーセナルに、今週末は最大のハードルが待ち受けている。“鬼門”である『アンフィールド』でのリヴァプール戦に臨むのだ。

 2月に3試合連続で白星から遠ざかった際、アーセナルはそのまま失速するかに思われたが、不安は杞憂に終わった。2月15日に行われた第12節延期分のマンチェスター・C戦に1-3で敗れて以降、プレミアリーグでは7連勝と絶好調。そのうち6試合で3ゴール以上を決める破壊力を見せており、悲願のプレミアリーグ制覇へ着実に前進している。ここまで29試合で勝ち点72を稼ぎ、2位のマンチェスター・Cとのポイント差は「8」。とはいえ、マンチェスター・Cは1試合消化が少ないため、実質的には「5」ポイント差と言えるだろう。

 さらに両チームは今月下旬に直接対決を控えており、優勝争いは最後の最後までもつれそうだ。いずれにせよ、なかなかマンチェスター・Cも勝ち点を取りこぼさないため、アーセナルは勝ち続けるほかない。そう考えると9日に『アンフィールド』で行われるリヴァプール戦は、アーセナルにとって運命の大一番となるだろう。それでは注目の一戦「リヴァプール対アーセナル」をプレビューしよう。

■鬼門中の鬼門だが…

リヴァプールvsアーセナル
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アーセナルが最後に勝利したのは2012年9月のこと [写真]=Getty Images

 アーセナルにとって『アンフィールド』は“鬼門”だ。PK戦で勝利した2020-21シーズンのカラバオ・カップでの対戦を除けば、アーセナルが最後にリヴァプールの本拠地で勝利したのは2012年9月のこと。ルーカス・ポドルスキとサンティ・カソルラのゴールで2-0の勝利を収めた。当時チームを率いていたのはアーセン・ヴェンゲル監督だ。そして、ダブルボランチの一角としてフル出場したのが、今はテクニカルエリアでチームに檄を飛ばすミケル・アルテタ監督である。

『アンフィールド』での最近6度のプレミアリーグでの対戦成績を見ると目も当てられない。アーセナルは6試合とも負けているだけでなく、全ての試合で3失点以上を喫しており、6試合で「4得点22失点」という凄惨な成績なのだ。昨シーズンの同カードでは、日本代表FW南野拓実(現:モナコ)にトドメの一発を決められて0-4と大敗を喫している。

 そう考えると、アーセナルにとって『アンフィールド』は鬼門中の鬼門なのだが、もちろん彼らにも素敵な思い出がある。34年前、アーセナルは『アンフィールド』で勝利の美酒に酔いしれたのである。1988-89シーズンの最終戦、熾烈な優勝争いを演じていたリヴァプールとアーセナルが『アンフィールド』で激突した。当初、両チームの対戦は4月に予定されていたが、“ヒルズボロの悲劇”の影響で延期となり、シーズン最終戦へと変更になったのだ。

 迎えた運命の大一番、勝ち点「3」差で首位リヴァプールを追う2位アーセナルは、敵地で2点差以上の勝利が必要だった。一方、7年間で5度の優勝という黄金期を築いていたリヴァプールは、ホームでは2点差以上の敗戦から3年以上も遠ざかっており、圧倒的に有利と見られていた。そんな逆境の中、アーセナルは先制点を奪っただけでなく、後半追加タイムにMFマイケル・トーマスが運命の2点目を決めて2-0とする。劇的な形で優勝を果たしたのだ。その時の歓喜は『Fever Pitch』というニック・ホーンビー著のベストセラーにも描かれており、映画化までされた(邦題:ぼくのプレミアライフ フィーバーピッチ)。

 あの日、アーセナルは15年ぶりにアンフィールドで勝利を収めて18シーズンぶりのリーグ制覇を達成した。果たして今回は、11年ぶりにアンフィールドで勝利を挙げ、19シーズンぶりのリーグ制覇に近づけるのか?

南野拓実
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昨季の対戦では南野拓実がトドメの一撃 [写真]=Getty Images

■今季はアーセナルが有利?

リヴァプール
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公式戦直近4戦未勝利と調子が上がらないリヴァプール [写真]=Getty Images

『アンフィールド』を苦手とするアーセナルだが、今シーズンの調子を考えると間違いなくアーセナルに分があるだろう。英国ブックメーカー『ウィリアムヒル』の勝敗オッズを見ると、リヴァプールの勝利が「2.7倍」でアーセナルは「2.4倍」。やはりアーセナルが有利と見られている。

 それもそのはずだ。今季のリヴァプールは、リーグ戦のホームゲームに限れば1度しか負けておらず、直近のホームゲームではマンチェスター・Uを「7-0」で粉砕しているものの、以前のような安定感は見られない。全てアウェイゲームとはいえ、カップ戦を含めて直近4試合で未勝利となっており、ユルゲン・クロップ監督の去就問題にも発展しかねない状況なのだ。

 先日、今季プレミアリーグでの相次ぐ監督交代について聞かれたクロップ監督は「誰も指摘しないが、このクレイジーな世界で、なぜ私だけ解任されていないのか気になっているはずだ。私は“ラスト・マン・スタンディング”だね」と語った。そして「まだ私がここにいられる理由は、今季の成績ではなく過去の実績のおかげだ。もしこれが就任1年目なら話は違ったはずだ」と、今シーズンに限れば解任されても文句が言えない成績と認めたのだ。

 そんなリヴァプールは今月1日の第29節でマンチェスター・Cに1-4と完敗を喫した。3日後の第8節延期分チェルシー戦は、メンバーを落としたこともあって見せ場を作れず、スコアレスドローでタイムアップ。これで両者の対戦は4試合連続で「0-0」となり、英紙『ザ・サン』に「チェルシー対リヴァプールは最も退屈な対戦カードに正式決定」と揶揄されてしまった。

 現在リヴァプールは4位マンチェスター・Uとのポイント差「10」の8位に甘んじており、指揮官もチャンピオンズリーグ出場圏内のトップ4に上がる可能性について「チャンスがあるかさえ分からない。残りの試合、我々がほぼ全勝し、他のチームがたくさん負ける必要がある」と白旗を振り始めている。このまま本当にトップ4を逃すことになれば、クロップ政権の“フルシーズン”としては初めてのこととなる。

■アンフィールドで再びハットトリック?

レアンドロ・トロサール
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トロサールはフルアム戦の前半のみで3アシストを記録 [写真]=Getty Images

 アーセナルには頼もしいアタッカーがいる。それがプレミアリーグの歴史においてわずか3名しかいない快挙を成し遂げたFWレアンドロ・トロサールだ。今年1月に加入したベルギー代表は、ブライトン時代の昨年10月、敵地開催の第9節でリヴァプールを相手にハットトリックを達成しているのである。

『アンフィールド』でのプレミアリーグの試合において、敵プレーヤーがハットトリックを達成するのは1995年のピーター・ヌドロブ(当時コヴェントリー)、2009年のアンドレイ・アルシャヴィン(当時アーセナル)に続いて史上3人目の快挙だった。そのトロサールはアウェイゲームが得意なようで、アーセナル加入後の3月12日に行われた第27節フルアム戦で3アシストを記録し、3-0での勝利に貢献。データ会社『Opta』によると、アウェイゲームで前半のうちに3本のアシストを達成するのはプレミアリーグ史上初の快挙だったという。

 無論、トロサールだけではない。アーセナルには完全復活を遂げたエースもいるのだ。ワールドカップの怪我で戦列を離れていたブラジル代表FWガブリエウ・ジェズスが復帰を果たすと、先週末の第29節リーズ戦では2ゴールの活躍を見せて4-1での勝利に貢献。見事に“不敗神話”を維持した。というのも、ジェズスはマンチェスター・C時代から数えて、自身がゴールを決めたプレミアリーグの試合では1度も負けていないのである(52試合で49勝3分け0敗)。そしてリヴァプール戦では、これまで13試合で5得点4アシストと好結果を残しているのだ。

ガブリエウ・ジェズス
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復活したジェズスが“不敗神話”を維持 [写真]=Getty Images

 果たして、19シーズンぶりのリーグ制覇を目指すアーセナルは最大の鬼門を突破できるのか?アンフィールドで開催される「リヴァプール対アーセナル」の一戦は、日本時間で9日の24:30(10日の0:30)にキックオフを迎える。

(記事/Footmedia)

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