ソン・フンミン
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 先週末、プレミアリーグでまた新たな記録が生まれた。トッテナムの韓国代表FWソン・フンミン(30歳)が、4月8日に行われたプレミアリーグ第30節のブライトン戦でアジア人初の快挙を成し遂げたのである。

 ソン・フンミンは前半10分、ボックスの外から巻くようにしてファーサイドのトップコーナーに完璧なシュートを叩き込んで2-1の勝利に貢献。これでソン・フンミンはプレミア通算100ゴールを達成。アジア人として初の快挙を成し遂げた。

 2015年の夏にレヴァークーゼンから当時のアジア人移籍金記録でトッテナムにやってきた韓国のエースは、自身2戦目の出場となったクリスタル・パレス戦でプレミア初ゴールを奪った。そして2年目の2016-17シーズンにリーグ戦14ゴールを稼ぐと、その後は毎シーズンのように2桁ゴールを積み重ね、昨シーズンは得点王にも輝いた。

 そして今回、プレミア260試合目の出場でアジア人として史上初の同リーグ通算100ゴールを達成したのだ。試合後、目頭を熱くしたソン・フンミンは「全てのアジア人選手、得に韓国の選手がこの快挙を見て自分たちもできると信じてくれたらいいな」と英国放送局『BBC』に語った。そして「祖父が他界し、ここ数週間は辛かった。このゴールを捧げたい」と天国の祖父にゴールをプレゼントしたのだ。

 それでは、再びプレミアリーグの歴史に名を刻んだソン・フンミンの100ゴールを深掘りしていこう。

[写真]=Getty Images

■“34/4644”のエリート

ソン・フンミン
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 1992年に発足されたプレミアリーグにおいて、ソン・フンミンは史上34人目の100ゴール達成者となった。いわゆる、プレミアのゴール数における“センチュリオン(100=センチュリー)”だ。30年以上の歴史を誇るプレミアリーグでは、これまで4500名以上の選手がピッチに立ってきた。リーグ公式HPによると、一度でも出場経験のある選手は「4644名」。そのためソン・フンミンは“34/4644”という選りすぐりのエリート集団であるセンチュリオンに仲間入りを果たしたことになる。

 プレミア史上初の100ゴールを達成したのは1995-96シーズンのアラン・シアラーだ。元イングランド代表ストライカーは、ブラックバーンで100ゴールを達成すると、1996年に移籍した地元のニューカッスルでも148ゴール。2つのクラブでプレミア100ゴールを達成した唯一のプレーヤーは、同リーグの歴代最多記録となる260ゴール(441試合)を叩き出した。

 現役選手で歴代最多ゴールは、ソン・フンミンの相棒であるスパーズのハリー・ケインだ。イングランド代表のエースは現在206ゴールまで積み重ねており、シアラー(260)、ウェイン・ルーニー(208)に次いで歴代3位に着けている。

ケイン、ソン・フンミン
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 現在100ゴールのソン・フンミンは、サウサンプトンの英雄であるマット・ル・ティシエと並び歴代得点ランクの33位タイに着けている。次のターゲットは、103ゴールで32位に着ける選手だ。今シーズン中に抜き去ると思うが、その時も大々的なニュースとして取り上げられるはずだ。なぜなら、32位に着ける選手というのはフットボールの歴史において歴代最高プレーヤーの一人に挙げられる元マンチェスター・Uのポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(現在アル・ナスル所属)なのだ!

 ここからは英雄たちを抜き去っていくことになる。32位がC・ロナウドで、31位はディディエ・ドログバ(104点)、29位はポール・スコールズ(107点)、27位はライアン・ギグス(109点)。果たしてソン・フンミンは、今シーズン中にどこまで順位を上げるのだろうか?

■アジア人初の快挙

ソン・フンミン
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 昨シーズン、プレミアリーグで23ゴールを叩き出したソン・フンミンは、プレミア史上初の“アジア人得点王”に輝いた。アジア人では、過去にイランのアリレザ・ジャハンバクシュが2017-18シーズンにエールディヴィジで、同じくイラン代表のメフディ・タレミが2019-20シーズンにポルトガルリーグで得点王に輝いているが、「欧州5大リーグ」に限ればソン・フンミンはアジア人史上初の快挙だった。

 今回もソン・フンミンは、プレミアリーグ通算100ゴールというアジア人初の快挙を成し遂げた。プレミアにおけるアジア人のゴール数を見ると、ソン・フンミンは異次元のレベルにいる。アジアサッカー連盟に加盟しているが実際はオセアニアに位置するオーストラリアを除いた場合、ソン・フンミンの次にゴールを決めているアジア人は同胞の先輩であるパク・チソン(元マンチェスター・U)で19ゴール。続いて元韓国代表MFキ・ソンヨン(15ゴール)となっている。

 アジア人の歴代4位は“ミラクル・レスター”の立役者となった元日本代表FW岡崎慎司だ。プレミアにおける日本人最多ゴール記録を持つ岡崎慎司は114試合で14ゴールを奪って見せた。そして、アジア人歴代6位に着けるのが今季ブライトンで圧倒的な輝きを放つ日本代表FW三笘薫である。ソン・フンミンとのアジア人対決では、ハンドの判定でゴールを取り消される不運もあった三笘薫だが、プレミア初挑戦となった今季ここまで23試合で7ゴールを奪っており、これからさらにゴール数を伸ばしていくはずだ。

 ちなみに、プレミアリーグの公式HPでは2年前に「プレミア史上最高のアジア人は?」というアンケートが行われ、やはりソン・フンミンが55%の得票率を稼いで1位に輝き、2位にはマンチェスター・Uのレジェンドであるパク・チソンがランクインした。

■他国のセンチュリオン

アネルカ、アンリ、ファン・ペルシ
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 韓国代表のソン・フンミンはプレミア史上34人目の“センチュリオン”となったわけだが、国別でみると12カ国目の快挙となった。プレミア100ゴール達成者は34名で、そのうち最多20名がイングランド人となっている。

 次に多いのがフランスとオランダで2名ずつ。フランスの2名は共にアーセナルのOBだ。歴代7位の175ゴールを決めたティエリ・アンリと125ゴールのニコラ・アネルカ。オランダはアーセナルやマンチェスター・Uでゴールを量産したロビン・ファン・ペルシ(144点)とチェルシーなどで活躍したジミー・フロイト・ハッセルバインク(127点)が大台に乗せている。

 ソン・フンミンを含め、残る10名は全て違う国の選手たちとなっている。大陸別でみると、最も多いのは欧州勢。イングランド20名、フランス2名、オランダ2名のほか、ロビー・キーン(アイルランド)、ロメル・ルカク(ベルギー)、ギグス(ウェールズ)、C・ロナウド(ポルトガル)の計28名が100ゴールを達成している。ヨーロッパの次に多いのはアフリカ大陸の3名。エジプトのモハメド・サラー(133点)、セネガルのサディオ・マネ(111点)、コートジボワールのドログバ(104点)だ。

 残りの3人は、いずれもその大陸における唯一の達成者。南米大陸はアルゼンチンのセルヒオ・アグエロ(184点)、北中米はトリニダード・トバゴのドワイト・ヨーク(123点)、そしてアジアはソン・フンミンとなっている。

 実は、この3名は「大陸唯一の存在」以外にも特別な記録を持つ。ヨークは2000年にイングランド人以外で初めてプレミア100ゴールを達成したパイオニア。一方でアグエロは外国人選手の歴代最多ゴール記録(184点)を持つ。そしてソン・フンミンは最新の“センチュリオン”なのだ。

 こうして見ると意外なのはサッカー王国の不在だろう。これまで何名もの偉大なストライカーを輩出してきたブラジルだが、プレミアリーグでは一人も“センチュリオン”がいないのだ。これまで最多記録はリヴァプールのFWロベルト・フィルミーノで80ゴール。続いてアーセナルのFWガブリエウ・ジェズス(66ゴール)となっている。

 そう考えるとソン・フンミンは、アジア初であるとともに、サッカー王国も達成したことのない歴史的な快挙を成し遂げたことになる!

(記事/Footmedia)

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