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 坂口健太郎が主演を務める映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』が4月14日(金)から公開する。そこに存在しない「誰かの想い」が見える不思議な力を持つ青年、未山(坂口)は、周囲の人々を癒しながら、恋人で看護師の詩織(市川実日子)とその娘・美々(磯村アメリ)と自然豊かな土地で穏やかに暮らしていた。しかし、かつての恋人・莉子齋藤飛鳥)と再会したことで、未山の閉ざされていた過去が垣間見えてくる…。完成報告イベントの際には、坂口が「言語化して伝える作品が多い中で、余白を大切にしてあえて説明を排している作品」と話したように、ある種、つかみどころのない本作。この不思議な世界観をどう捉え、演じたのか。作品に対する想いを坂口健太郎と齋藤飛鳥に聞いた。

『サイド バイ サイド 隣にいる人』は余白が多い作品 坂口健太郎「監督の中の世界観に一度、乗っかってみよう」

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――美しい景色や優しいキャラクターで癒される一方で、時折、怖さもある不思議な作品でした。お二人は、最初に作品を読んだときの印象、そして撮影を経て、今、作品をどう捉えているのか教えてください。

坂口健太郎(以下、坂口):実は今になってもまだまだ不明瞭な部分があります。余白が多いという話をよくさせていただいていますが、ぼやけているという意味ではなくて、キャラクターを作る上で、撮影をしている途中で、シーンごとに、探す道のりはありました。ただ、監督の中でも「これじゃないとダメだ」というのは正直なくて、そこに可能性というか、空間を持たせています。この作品を観たときに、切なかった、優しい、怖かった、よくわからないと色んな感想があると思いますが、どれもが間違いではないと思っています。そういう作品があってもいいだろうなというのは最初の段階から思っていました。

――無理に形を決めつけなかった感じでしょうか。

坂口:僕はそうでした。演出意図的に「どういうことかわからないぞ」と思っていても、「まあ、やってみるか」と。今回は監督の中の世界観に一度、乗っかってみようかなという気持ちでした。

齋藤飛鳥(以下、齋藤):私もいまだにこの作品について理解していない気がします。役柄についても、普通は1日取材をしたらこういう子ですと言えるんですけど、莉子ちゃんは、よく定まってないなという感じです。でも、実際に私たちが生きている世界もそんな感じですよね。人に対して、全部わかることはできなくて。でも、普通に関わっていくことは自然なこと。難しく考えずに監督の世界に浸かってみて、坂口さんや実日子さんに頼っちゃおうと思いながら現場にいました。本を最初に読んだときはどうしようかなって思ったけど、「まあ、やってみるか」となってからは、あんまり考えこまずに挑むことができました。それは多分、みなさんのお陰ですけど。

「空気を支配するものを持っている」齋藤飛鳥が感じた坂口健太郎の印象

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――お二人は、元恋人同士という役柄で同じシーンも多かったと思います。お互いの芝居について印象に残ったことを教えてほしいです。

坂口:莉子は、肉体的にも精神的にも力を使う役でした。口数が多いわけではなく、だからこそ表情や細かい目線で伝えないといけない難しさがあります。その中で、飛鳥ちゃんは黙っていても絵を締められる魅力や強さがあると感じました。それは作ろうとしてもなかなかできることではないんですよね。飛鳥ちゃんがもともと持っているものを駆使しながら、その場に莉子として立てていることがステキだと思いました。

齋藤:褒められちゃいました。確かに莉子は難しかったし、ちょっとした表情、些細な動きで感情を見せるというのはどうやったらいいのだろうと、わからないまま現場の雰囲気に任せながらやっていたので、坂口さんがすごくよく捉えてくれてうれしいです。

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――齋藤さんから見て、坂口さんの印象はいかがでしたか。

齋藤:そもそも私がこの作品をやってみようと思った理由の一つに、坂口さんが主演を務めるということもありました。

坂口:お、それは、詳しく聞きたい。

齋藤:グループにいたときには、メンバーとの作品が大半だったので、いつか第一線で活躍されている俳優さんと対峙してみたくて。どんな空気感なのか、どういうお芝居をするのかを、体感してみたいという思いがありました。坂口さんは、数々の作品で繊細なお芝居をされていたので、きっとたくさんの学べるだろうなと思っていました。

――実際にご一緒していかがでしたか。

齋藤:(坂口に)耳をふさいでいてくださいね。

坂口:(鼻の穴をふさぐ)

齋藤:中学生か(笑)。

坂口:(笑)なになに?

齋藤:私は、お芝居の技術とかはわからないですが、坂口さんは、人としての魅力、引き込むものがあって、空気を支配するものを持っているなと思いました。座長としてぐいぐいガツガツ引っ張るようなキャラではないですが、雰囲気を変えたり、坂口さん主導でその場を動かすような瞬間を目の当たりにしました。そういう人間的な部分はとても勉強になりました。

――とのことですが、坂口さんは座長として立ち振る舞いで意識されたことはありますか。

坂口:やっぱり人間力。人のために生きる、これですね。

齋藤:(笑)。

坂口:嘘ですよ、冗談ですよ(笑)

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――今回の現場には、子役として美々ちゃん役の磯村アメリちゃんもいましたが、座長としてどう接していましたか。

坂口:座長としてというわけではありませんが、たくさん走り回りました。美々が遊びたそうだから、全力で遊んでいました。その姿を飛鳥ちゃんは一歩引いてニコニコ見ていた印象があります。

――齋藤さんは、お子さんの扱いはどうですか。

齋藤:どうしたらいいかわからないです(苦笑)。

坂口:苦手な感じはしなかったけど。僕はやりすぎ(笑)。飛鳥ちゃんが普通だと思うよ。

齋藤:後半になってくると美々ちゃんも、未山くんとも遊びきって、詩織さんとも遊びきって、莉子ちゃんしかいない。現場で「莉子ちゃーん」って叫ばれたときには、私はマネージャーの陰に隠れていました。でも坂口さんが遊んでいる姿は遠くから動画を撮影していますよ。

坂口:汗だくだったな。監督は美々ちゃんに対して演出はしていなくて、その日に喋る台詞を渡すなどのアプローチをしていたので。のびのびととっても可愛い豊かな子でしたね。

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――説明台詞が少ないからこそ、キャラクターを表現するために距離感やちょっとした仕草などがとても大切になると感じました。お二人が、演じるとき、誰かと相対するときに意識したことはありますか。

坂口:クランクインをして割とすぐに監督から、お芝居をするときに対峙する相手によってどんどん変わっていってほしいと言われました。未山は象徴のような存在というか、未山がどう考えているのかを監督の意図的に悟らせたくないところがあったようです。人によって対応が変わるのは当たり前のことですが、とくに顕著に心がけました。僕が最初に持っていった未山像は、早い段階で手放して、実際に誰かに会ったときのようなリアルな感じ方でやってみました。

――監督からの印象的な演出はありましたか。

坂口:話をするときって、意識せずに腕を組んだり脚を組んだりする自然な癖ってあるじゃないですか。それを全部、一回そぎ落としてみようと言われました。ただ立つこと、ただ座ることを大事にしました。自然に出ているものを逆にそぎ落とすことは不自然なんじゃないかと思っていましたが、絵が完成して映像になったものを見たときに、未山の特異性がそこに現れていたんだとわかりました。監督が削除していったからこそ、象徴っぽいキャラクターになったと思います。ただ、僕が今言っていることが本当に正解なのかはわからないです。

――ありがとうございます! 最後に観客へメッセージをお願いします。

坂口:こう思ってくださいとは言いにくい作品です。飛鳥ちゃんの、監督の世界観に浸かってみようと思ったというのはすごいいい言葉だと思いました。大スペクタクル、ジェットコースターのような映画とかとはかけ離れていますが、この世界観に入ってみて、そのときにお客さんが思ったことすべてが正解だと思いますので、その瞬間を楽しんでほしいです。

齋藤:人によって見え方が変わってくると思いますが、無理に考えようとせず世界観に浸ってほしいです。あとは、大前提として俳優、坂口健太郎がたくさん頭を使って演じた作品なので、そこを見てもらうのも面白いと思います。

坂口:(照れ笑い)ありがとうございます。

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取材・文:氏家裕子
写真:You Ishii

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