新たな行政組織として、4月1日にこども家庭庁を新たに発足した。この新設されたこども家庭庁とは一体どのような役割を担う組織なのか。テレビ朝日社会部 栗原伸洋記者に話を聞いた。
「こども家庭庁は、こども行政の縦割りの打破を掲げ4月1日に厚労省の子ども家庭局や内閣府で少子化対策を行っていた部局が1つに集まり、430人体制で発足しました。大きく3つの役割に分かれており、1つは少子化対策など政策の企画や立案などを行う長官官房というものがあります。これまで別々で作られてきていた少子化対策大綱や、こどもの貧困対策大綱などを一元化して、こども大綱を秋にも作成する予定で色々な政策の総合調整役となります。2つ目は妊娠出産期の支援や就学前の保育など子育てについて対応する成育局、3つ目に虐待や貧困、いじめなどに対応する支援局の3つから構成されています」(以下、栗原記者)
児童相談所への虐待相談は年々増え続けているが対策などはあるのか。
「相談件数は過去最多を更新し続けており、21年度は20万7660件。過去10年で実に3倍以上になっています。相談の内訳としては警察からが一番多く、次いで近隣住民・知人からの相談が多いです。実はこのうち相談の6割は心理的虐待になっています。この心理的虐待というのは、大声や脅しで恐怖に陥れる、無視や拒否的な態度、夫婦喧嘩やドメスティック・バイオレンスを目撃するなどです。次いで相談の2割ほどは身体的虐待に関するものです。国は去年の12月に児童虐待防止強化プランとして、児童相談所の職員の増員プランを打ち出しています」
子どもの数は年々少なくなっているにもかかわらず増え続ける相談件数。原因と対策は。
「こども家庭庁は、テレビや新聞などの媒体で児童虐待について悲惨な事件を報じられることが多く、国民の意識が高まっているのが大きな点としています。また子育て環境の変化や、核家族化などが増えて悩みを抱え込む親が増えている可能性があるとみています。こうした背景があるなか児童相談所は具体的な取り組みがありませんが、こども家庭庁はなかなか声をあげられない人たちにも手を差し伸べる『アウトリーチ』という考えを持ち、今後このような取り組みが虐待を未然に防ぎ、虐待相談件数の減少につながるかもしれません」
相談件数が増えているなか、相談の対応にあたる児童福祉司の人員は足りているのか。
「児童福祉司に関しては、国は基本人口3万人に対し1人、それに加え相談件数に応じて配置基準を設けているものの、基準に達していない自治体も数多くあります。人口の多い地域は相談件数も多く配置基準の数字があがってしまうことから、基準に達していない、職員不足という課題があります。
神奈川県の大和綾瀬児童相談所では国の配置基準26人に対し職員は23人、抱えている案件がおよそ900件あるなかで新規の相談も1年で900件ほどと対応が難しい状況が続いていますが、数年前からこちらでは、エリアごとに配置していた人員を短時間で解決できそうな案件の専属のグループも設け対応しています。これによって後回しになっていた比較的軽めの事案にも的確に対応することができ全ての相談に対応ができるようになり、深刻な案件になる前に食い止めることができたと効果も見られています。各自治体は、対象年齢を引き上げたり人材育成確保のための専属の部署を新設したりと、採用活動の工夫にも力を入れています」