藤井聡太叡王VS菅井竜也八段 見どころだらけの“対抗形シリーズ”開幕 解説者「ハッと相手を驚かせる一着。こういう手が出るところが実力者の証」/将棋・叡王戦五番勝負
【映像】藤井叡王VS菅井八段 叡王戦第1局ハイライト

 将棋藤井聡太叡王(竜王、王位、棋王、王将、棋聖、20)が4月11日、第8期叡王戦五番勝負の第1局で挑戦者の菅井竜也八段(30)に147手で勝利した。ABEMAの中継には木村一基九段(49)が出演。解説者として最も印象に残った菅井八段の終盤での香打ちの一手を「ハッと相手を驚かせる一着。こういう手が出るところが実力者の証」と紹介した。

【映像】木村一基九段による叡王戦第1局“マニアック”解説

 3連覇と六冠堅守を目指す藤井叡王が、タイトル戦で初めて振り飛車党と激突する注目のシリーズ。アマチュアには振り飛車ファンも多く、2020年度の王座戦五番勝負に挑戦した久保利明九段以来となる振り飛車党のエース・菅井八段の登場は開幕前から大きな話題となっていた。第1局は振り駒の結果、藤井叡王の先手番に決定。注目の戦型は藤井叡王の居飛車、菅井八段の三間飛車の対抗形となった。

 先手に9筋の位を取らせてから角道を止めたのが菅井八段の工夫。藤井叡王は左美濃から銀冠に組み替えて持久戦を示唆した。両者は早々に前例を離れ、力勝負へと展開。じりじりとした中盤戦では、藤井叡王が持ち時間を大量に削りながらも菅井八段に無理攻めを誘いかけ、わずかなほころびを丁寧にとがめて差を拡大していった。

 しかし、数々の難所をくぐり抜け、約5年ぶりのタイトル戦の大舞台にたどり着いた菅井八段が簡単に倒れることはない。形勢に差が開きつつある中、終盤で出た9筋への香打ちの一手。解説の木村九段にとっては、一局の中で最も印象に残った一着だったという。「歩と金の交換となるので後手は大損は大損ですが、そこで『何かあったんですか?』とばかりに香車を打つというのは、相手をハッと驚かせる一着」とし、先手に歩がない状況を見越した一手で、9筋を逆襲できれば戦況は混沌。「こういう手が出るところが実力者の証」と根気の入った粘りの一手を称賛した。

 しかし絶対王者の視野は広く、そのまま歩で金を取ってしまっては状況が悪化してしまうことはお見通し。駒の働きを最大限に活かすべく飛車を浮き、横利きを利かせて受け切ってみせると、木村九段は「こちらも、まさに“受けの決め手”と言っても良いくらいの対応だった」とこの応手を紹介した。

 木村九段はこの一局を「藤井叡王は攻めの技術に定評がある方だが、今回は受け方というものが大変落ち着いていて、的確な対応だったと感じた一局だった」と総括。それでも、「優勢な方が簡単に勝つと思われるかもしれないが、トップ棋士たちは悪くなっても簡単にはあきらめない。さらに相手をハッとさせる、緊張させるような含みのある手を指すことができる。10局に1局、100局に1局はそれが逆転に繋がる。序中盤はたしかに藤井ペースでしたが、この香打ちの一手のように一瞬のやり取りで勝敗はひっくり返ることがある。そういう要因を作り出そうとした菅井八段の一手、さらにその手に対して冷静に対応した藤井叡王の一手という応酬は非常に面白い、素晴らしいなと感じた」と、どんな状況でも一筋の光を求めて突き進むトップ棋士たちの姿を伝えた。

 叡王戦開幕局は藤井叡王の勝利となったが、シリーズはまだ始まったばかり。木村九段は、「まだ第1局なので、今後もこのような応酬が出てくることを楽しみにしたい」と加えて、次局以降にも大きな期待を寄せていた。注目の第2局は、愛知県名古屋市の「名古屋東急ホテル」で行われる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

【映像】木村一基九段が語る叡王戦第1局“マニアック”解説
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藤井聡太叡王、3連覇&六冠堅守へ白星発進 菅井竜也八段との対抗形シリーズ開幕局を制する/将棋・叡王戦五番勝負

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