汗なんてかきたくない、他人の汗なんて見るのも不快。そんな“嫌われ者の汗”が「不安を軽減する」という研究結果が発表された。
人前に出ると、強い不安や恥ずかしさを感じる人は多いかもしれない。極度の恐怖感や体の震えなど、過度に反応に現れる症状が「社交不安症」と呼ばれる病気だ。不登校や引きこもりの原因になることもあるという。
そんな症状が、他人の汗で軽減される可能性があるという研究結果が発表された。
スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究者らは、社交不安症は他人の汗の臭いで軽減されるという研究結果を発表した。治療法の1つとなっている「瞑想」を取り入れたマインドフルネス療法と共に、汗の効果を検証したのだ。
汗には人の感情を伝染させる物質が含まれているという研究結果もあり、調査に使われる汗を採取された人が、その時に持っていた感情にも着目した。
どんな実験をしたのか。研究チームはまず、社交不安症の女性患者(18歳〜35歳)48人を3つのグループに分けた。1つ目がキレイな空気の場所、2つ目が楽しい映画を見た人の汗のにおいで満ちた場所、3つ目が怖い映画を見た人の汗のにおいに満ちた場所に分けて、それぞれマインドフルネスを実施した。
結果は、キレイな空気の場所で過ごしたグループは不安が17%低下したのに対し、他人の汗のにおいに満ちた部屋で映画を見た2つのグループは39%も不安が低下したのだ。
今回の実験で汗をかいた人の感情で差は出なかったものの、他人の汗のにおいが不安を軽減させる可能性を示す結果となった。研究チームは、平常心の人の汗でも同様の効果が得られるのか検証を進めているという。
他人の汗のにおいが社交不安症に効くかもしれないという実験結果をどう見るか。ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演した、精神科医の木村好珠氏は以下のように述べている。
「まず、『嗅覚』というのは五感の中で唯一、感情を司る大脳辺縁系にダイレクトに届く。なので、感情を揺さぶるのに良いけど、汗のにおいは面白いなと思った」(木村氏、以下同)
においの可能性はさまざまある。汗のにおいを嗅いで相手を見つける合コンも開かれたことがあるという。
「2014年にロンドンで、3日間着ていた汗の溜まったTシャツをビニール袋に入れ、それをみんなで嗅いでいく。その中でにおいが良いと思った人に実際に対面する。遺伝子学的に相性がいいという科学的根拠の元、開かれた」
においを生活のなかで有効活用する方法はあるのか。
「アスリートのなかには、好きな香りで試合前に気持ちを落ち着かせる人もいる。私も家でアロマを炊いたり、イライラした時に嗅ぐアロマを使い分けながら気持ちを落ち着かせている」
意外なことに好きなにおいは日によって変わるのだという。
「自分の体調によって好きなにおいが変わる。でも、汗のにおいで不安を軽減させるというのは正直びっくりした」
(『ABEMAヒルズ』より)
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