ABEMAで2020年9月から放送された俳優オーディション番組『主役の椅子はオレの椅子』(通称:オレイス)で主役の座を獲得した三浦海里が主演を務める映画『ゲネプロ★7』が、4月21日より全国公開された。
本作は若者から絶大な人気を誇る7人組ユニット・劇団SEVENを軸に、新作舞台の制作発表からゲネプロ(=最終リハーサル)までの13日間を描く新感覚ミステリー。TVドラマ『SPEC』シリーズなどを手がけた堤幸彦が監督、脚本は『サクセス荘』シリーズの川尻恵太が執筆した。三浦は劇団SEVENに新メンバーとして加入する新人俳優・山井啓介役を演じる。
【映像】三浦海里が主演を勝ち取った『主役の椅子はオレの椅子』オーディション模様
ABEMA TIMESでは堤監督と三浦の合同取材を実施。堤監督は今作で初めて三浦と仕事を共にし、俳優として“魅かれるものを感じた”という。
堤監督 三浦海里は「勘の良さを備えているし、自分の魅せ方をよく知っている」
――『オレイス』がきっかけとなり走り出した作品がついに完成しました。そういう意味では長いプロジェクトとなりましたが、完成した映像を見て、何を思いましたか?
三浦: 僕が良く映るように撮ってくださったことに感激しました。確か僕が『オレイス』に出演するか・しないかの頃は、“堤監督の映画作品主演権”というインセンティブは決まっていなかったんです。そんな中、番組開始の告知動画でその権利が加わったことを知って。
僕は正直オーディション系が得意じゃなかったんですけど、その動画を観た瞬間に、“挑戦しよう!”と思いました。実際、主演として撮影しましたが、『オレイス』撮影後の1年後には撮り始めていたんです。キャスティング・台本制作含めてこのスピード感だったので、僕的には“あっという間”でした。
――なるほど。
堤監督: 撮影した期間も2週間と短かったもんね。
――堤監督は三浦さんの演技を受け、いかがでしたか?
堤監督: 勘の良さを備えているし、自分の魅せ方をよく知っている人だなと思いました。それは天性のものなのか、誰かから学んだものなのかはわからないけれど、今回、脇を固めてくれた2.5次元俳優のスターたちに勝るとも劣らぬものを感じました。それと私、そんなに演技指導をしないんです。
三浦: そうでしたね。
堤監督: 現場ではセリフの強弱とスピードについて言うだけ。でもしっかりと演じるキャラクターについて理解していたからそこもすごいなと。劇団か何かに入っていたんですか?
三浦: いえ、入ってないです。
堤監督: あっ、そう。いや、なかなかの才能ですよ。
三浦: ありがとうございます…!
――堤監督はそもそも主演が決まる前に映画撮影を快諾したわけですよね。それもすごい決断だと思うのですが。
堤監督: 企画プロデュースしていた松田誠さん(数々の2.5次元ミュージカルを発信してきた株式会社ネルケプランニングの創設者)とは長いお付き合いですし、彼のやることなら間違いがないと思っていました。なによりお芝居が大好きな方ですから、そんな彼が企画する『オレイス』には相当の熱量が詰まっているはずだって。そんな気持ちから「ぜひやらせてください」と返事をしました。
三浦 山井は「僕自身と似た境遇 どちらかというと演じやすかった」
――『オレイス』について振り返ると「古くて新しい昭和のスポ根系オーディション」が話題となりました。
三浦: そうでしたね(笑)。
堤監督: 何人が参加したの?
三浦: 番組に参加したのは19人でした。でも僕の周りで「書類を出したけれど参加できなかった」と言っていた人がいたので、総応募数は把握していないです。
堤監督: 僕はあえて番組を見ないようにしていたんですよ。見始めるとどうしても感情移入しちゃうから。きつかった?
三浦: そうですね(笑)。でも、そんな中でも負ける気はなかったです。
――「空気椅子」など演技とは程遠いと思えるような審査内容が含まれていましたが、振り返っていかがです?
三浦: 正直、何種類か「これ芝居に関係あるのかな……?」っというものがありましたね。それは少し不貞腐れながらやっていたかな(笑)。
――一方で競いながらも参加者同士が支え合うような不思議な形が出来上がってましたね。
三浦: そうですね。僕は仲良くするつもりなんてさらさらなかったんです。番組が走り出したのがコロナ禍の入り口で、ちょうどお芝居ができなくなりつつある時期。“お芝居にちょっとでも触れてたい”という思いもあり、参加したんですけど、気づいたらみんなと一緒に露天風呂に入っていました(笑)。やっぱりああいう環境に身を置くと、どうしても仲良くなってしまうんだっていう気づきがありましたね。
――審査内容には「殺陣」も含まれてましたが、そういう意味では本映画の撮影に活きましたよね。
三浦: そうですね。一方で今回の殺陣演技は周りの俳優陣がレベチ過ぎたなって……。圧倒された感覚もありました。
堤監督: 流石の剣の扱いだったよね。もっと収録日が必要だと思っていたんですけど、たった5日間であの撮影を終わらすことができたのは彼らのお陰ですね。
――そういう意味で三浦さんは、緊張感もあったのでは?
三浦: そうですね。でも僕の殺陣の相手は(和田)雅成くんで、彼とは以前共演したことがあったので、自分たちの出番前に、控え室で練習に付き合ってもらいました。そういう時間のお陰で、集中して臨むことができました。
――物語は先の読めない怒涛の展開を迎えますが、役を演じる上で苦労した点はありましたか?
三浦: 僕が演じる山井は僕自身と似た境遇というか。山井は劇団SEVENの中に1人で入っていく設定ですけど、今回、僕は他キャストの皆さんのほとんどが初対面でした。言ってしまえばアウェイの環境に飛び込んでいく部分に共感ができましたし、これまでの僕はクラスのムードメーカー的な役を演じることが多かった。でも、今作のように掴みどころのない役にチャレンジしたいという思いもあったので、苦労というのはなかったです。どちらかと言うと、演じやすかったです。
――心地よい高揚感を抱きながら、演技に取り組むことができたと。
三浦: そうですね。もちろんキャラクターのベースは堤監督と相談して作りあげたんですけど。山井の過去があんなにイケイケだとは思ってなかったし、意外性もありました。そういう部分から山井のひととなりを理解して、少しずつ構築していきましたね。
堤監督「まっさらな気持ちで見て欲しい」 三浦「舞台的な迫力も味わえる」
――作中にはシリアスさ漂うシーンもありましたが、堤監督は撮る上でどんなことを意識したのでしょうか?
堤監督: 川尻さんの台本をまず正面から受け止めようと。この台本に対してギャグの要素は必要ないでしょうし、人間サスペンスの『ゲネプロ★7』というものを純粋化したかったので、この演出方法に疑いはありませんでした。僕自身のアイデアとして作品に足したのは「壊れゆく品川」という要素です。
――「壊れゆく品川」というのは?
堤監督: 品川という街は再開発に伴いどんどん変貌を遂げているんです。ビルが解体されたり、それこそ高輪ゲートウェイ駅開業に際して大規模工事が行われたり。僕は品川に住んでいるんですけど、品川の壊れていく様が、劇団SEVENの姿とどこか重なったんです。
三浦: そんなテーマがあったんですね(笑)。
堤監督: 作中にはクレーンとかパワーショベルなど壊すものに欠かせないアイテムがたくさん出てくると思いますが、あれは今回、僕の唯一の作家性を発揮した部分なんです。
――堤監督は俳優オーディション番組についてどのような感想をお持ちでしょうか?
堤監督: 僕も演出家として、演劇の世界を盛り上げようとする番組のお手伝いができるのであれば、すごく光栄なことだと思います。その一方で、結果選ばれた三浦くんのような才能のある人が、役者業を邁進しやすい環境を整えることは必要だと思います。要は三浦くんも“これからの人材”だと思うんです。
三浦くんが『オレイス』を経て、『ゲネプロ★7』の主役を張り、その後にどうなるのかこそが大事であって、『ゲネプロ★7』も演劇界で働く人らに“三浦海里って面白いな”“今までにいなかったタイプの役者だな”と訴求する、ある種のプロモーションビデオにならなくてはいけないと思っています。ただ繰り返すようですが、三浦くんは、錚々(そうそう)たる共演者の中で天才的な存在感を発揮していました。そういう意味で目的は達成できたと自負しています。
――これを受けていかがでしょう?
三浦: うれしいです。堤さんの作品はずっと観てきたので、そんな方にこんな言葉をいただけるのはただただ感激です。その一方で、『ゲネプロ★7』は僕に取ってチャンスを掴むためのきっかけの作品だと思っています。ここから上がっていくも落ちていくも、僕次第だと思うので、『ゲネプロ★7』で学んだことを繋いでいって、今後『オレイス』がシリーズ化されることがあったら、“初代の勝者はあの三浦”とある種の箔がつくような俳優になれたらと思います。
堤監督: まぁ、大丈夫じゃないですか。すでに堂々としてますし。
三浦: ありがとうございます。
――最後に、作品を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
堤監督: まっさらな気持ちで見て欲しいという思いがあって。これだけの役者が揃ったわけだから、皆さん“推し”というのがあると思うけれど、まずはキャスティング…それこそ『オレイス』からスタートしていることも忘れてもらって、純粋に映画として楽しんでもらえたらと思っています。作中で表現したキャラクターの悲哀のような部分も含めて、フィルター無しにご覧いただけると、今まで味わったことのないスリルに出会えると思います。
三浦: 僕は普段、舞台で活動することが多いんですけど、今回は舞台をベースにした映画作品で、両方の良いとこ取りをしています。舞台的な迫力を味わえると思いますし、舞台の裏側を知れる貴重さも詰まっています。なによりアクションシーンがものすごいことになっていますので、ぜひそんなところに注目して欲しいです。
テキスト・インタビュー:中山洋平、撮影:Mayuko Yamaguchi
スタイリスト:堂園礼子、関 恵美子 ヘアメイク:Roops見良津
映画『ゲネプロ★7』
堤幸彦監督と演劇界トップの実力派俳優7人が集結!
その名が演劇史に燦然と輝くシェイクスピア劇の主人公たち。ハムレット、シーザー、リア、オセロ、マクベス、ロミオ─。異なる作品を代表する伝説的な登場人物たちが入り乱れ、真の主役を奪い合う究極の舞台「シェイクスピア・レジェンズ」。その舞台に挑む7人の役者の制作発表記者会見からゲネプロ(=最終リハーサル)までの13日間を描くミステリー。近年も『SPEC』シリーズ、『十二人の死にたい子どもたち』、『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories” 』と、様々な革新的作風で常に世間を驚かせ続ける鬼才・堤幸彦監督が、7人の人気俳優の新たな魅力を引き出し、映画を新たな次元へ進化させた。
【STORY】
若者から絶大な人気の7人組ユニット〈劇団SEVEN〉。話題の新作舞台「シェイクスピア・レジェンズ」の準備に向けて、新たなメンバー山井の加入が控える中、カリスマ的リーダーの蘇我が急死する。蘇我を失った劇団は何かが崩れ始め、お互いのミスを責め合い、稽古には身が入らず、信頼関係に亀裂が走る。さらに、“ある秘密”が彼らに告げられたことで、運命の歯車は容赦なく狂い出す。誰かが俺たちを操っているのか? 何者かが劇団に仕掛けた〈罠〉なのか? 1人、また1人と、不気味な影が彼らを嘲笑う。とまらない猜疑心と焦燥感。7人の絆を打ち砕こうとする黒幕の正体は?
監督:堤幸彦 脚本:川尻恵太
出演:三浦海里、和田雅成、荒牧慶彦、佐藤流司、染谷俊之、黒羽麻璃央、高野洸、大高洋夫、荒木健太朗、宮下貴浩、輝山立、鷲尾昇/竹中直人
主題歌:ZIPANG OPERA「KAMINARI FLAVOR」
劇中音楽:ZIPANG OPERA (LDH Records)
4月21日(金)新宿バルト9他全国ロードショー
(C)映画「ゲネプロ★7」製作委員会
配給:ギャガ
三浦海里が出演したオーディション番組『主役の椅子はオレの椅子』はABEMAにて全話配信中。また『主役の椅子はオレの椅子 シーズン2』も全話配信中。