背景に「防衛産業の衰退」? 防衛装備移転三原則見直しで賛否
【映像】大規模な防衛・セキュリティ総合展示会の様子
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 日本を除くG7諸国がウクライナに対し戦車やミサイルなど、殺傷能力のある装備品を提供するなか、日本の防衛装備品輸出ルール「防衛装備移転三原則」の見直しが話題になっている。今後どのようになるのか、テレビ朝日 政治部 湯屋あかね記者に話を聞いた。

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「まず自衛隊が保持している武器や車などを防衛装備といいます。これを外国に渡すときのルールが防衛装備移転三原則なのです。1つ目では防衛装備の紛争地域への移転が禁じられております。2つ目は平和貢献や国際協力を目的とする場合は移転を認めるというルールです。3つ目は仮に日本からアメリカに渡し、更にアメリカが第三国に渡す際に日本の許可を得なければならないという移転先での管理の確保に関するルールがあります。

 この防衛装備移転三原則を見直す運びになっています。この議論は年末に改定した国家安全保障戦略の方針の見直しを行ったことから話があがりました」(以下、湯屋記者)

 G7諸国がウクライナ支援をするなか、この三原則があるなかで現在日本は具体的にどのような支援をしているのか。

「殺傷能力がある装備品は基本的には渡せないことから、日本は防弾チョッキやヘルメット、食料や発電機などを支援しています。ドローンは偵察用として送っていますが、爆弾などを乗せると殺傷能力につながるのではないかと議論になりました。実は、三原則では紛争当事国への移転は禁じられていますが、『紛争当事国の定義』として国連安保理の措置を受けている国と定められているのです。昨年2月ウクライナ侵攻が起きた際は『ウクライナが国連安保理の措置を受けていなかった』ため、政府はドローンをウクライナに渡すことができるとしています」

 ウクライナ侵攻が起こったのは昨年2月、なぜ1年以上経過したこのタイミングで大事なルールを変更する動きになっているのか。

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「見直しの方針は去年の12月に決まった国家安全保障戦略で書かれていたため、遅かれ早かれ見直しの予定となっておりました。実はこの見直しに至った経緯はウクライナ侵攻だけが理由ではありません。三原則が厳しいことがあり、戦闘機や船などを海外に輸出するハードルが高いことから防衛産業から日本企業の撤退が相次いでいることから、輸出の幅を広げる目的もあるのです。また、ウクライナ支援においても自民党議員からも各国と比べて日本の支援が足りないのではないかと指摘があり、防衛省関係者も『いざというとき日本も助けてもらえるようにもっと支援を積極的にすべきでは』と語っています。加えて、来月広島サミットが開催されることもあり、急ピッチで議論が進められているのです」

 議論を進めるなかで、どのようなルールが変更される可能性があるのか。

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「いくつかありますが、一番大きなテーマは殺傷能力のある装備品の移転を緩和するのかという部分です。その他には防衛装備を輸出する際の目的が定められており、救難・輸送・警戒・監視・掃海の5つのみとなりますが、ここに新たな文言を加える可能性が出ており、自衛隊法の不用品を渡すというルール変更なども検討されています。また共同開発しているイギリスとイタリアとの戦闘機をどこまで輸出できるようにするのかなど、さまざまな論点があります」

 今回のルール変更に関して、政府関係者も賛否両論だ。

「議論は肯定派と否定派と大きく分かれています。『もっとウクライナに対して武器などの支援を行うべき、日本の外交上のカードでも有利になるはず』『少しでもルールを緩和して、選択肢を広げることが必要』と肯定的な意見がある一方で、『いま日本の支援が足りてないという声は聞こえてこない』『戦争を助長するだけで慎重にすべし』という否定的な意見も出ています。ただ、世論調査をみても認めるべきではないと回答する割合が過半数を超えていることから、総理周辺の話では『落としどころが見えない』『世論調査の結果を気にしている』という声もあがっています。野党も現状『緩和するかどうか党内で議論もしていない』という党が多い様子です」

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 多くの課題が残るなか、今回の議論は今後どういったスケジュールで進んでいくのだろうか。

「23日(日)に投開票を迎える統一地方選挙が終わった直後の、24日(月)に正式に自民党と公明党の議員による協議がスタートします。元々GW明けからという話もあがっていましたが、広島サミットに間に合わないため前倒しになりました。5月19日から始まる広島サミット、ウクライナ支援だけでなく日本の防衛産業を復活させることにつながる内容になるのか、注目が集まっています」

(『ABEMA倍速ニュース』より)

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