「社内で目立ちたくない」なりたい職業1位“会社員”に賛否も…上昇志向は必要? 出世望まない若手社員
【映像】子どものあこがれ「会社員」物議に…“上昇志向なき戦い”

 先月、発表された小中高生対象の「大人になったらなりたいもの」アンケート(第一生命)で1位になった職業は「会社員」だった。

【映像】小中高生が「会社員」でやりたいこと1位〜3位(画像あり)

 同調査では、2021年から3年連続で「会社員」がトップを取っている。これに一部ネットでは「今の子どもは夢がないな」「上昇志向が感じられない」など、批判の声が寄せられた。

 そもそも、なぜ子どもたちは会社員に憧れるようになったのか。

 調査を監修する第一生命経済研究所の的場康子氏はこう話す。

「新型コロナの流行もあって社会が不安定になって『やっぱり安定が大事』と思うのは、自然なこと。お父さんお母さんがコロナ禍で在宅勤務をして『こんな働き方があるんだ』とお子さんたちが体感したのではないか」

 そんな子どもたちが憧れる会社員だが、近年、出世や昇給など上昇志向を持たない社員が増えているという。

 「転職サイト比較plus」が去年実施した、20代の社会人を対象にした調査では、今後出世したいと答えた人は約2割だった。約8割の人は「責任ある仕事をしたくない」などの理由で出世を望まないと回答した。

「社内で目立ちたくない」なりたい職業1位“会社員”に賛否も…上昇志向は必要? 出世望まない若手社員
「社内で目立ちたくない」なりたい職業1位“会社員”に賛否も…上昇志向は必要? 出世望まない若手社員

 人事ジャーナリスト・溝上憲文氏によると、Z世代を中心に若手社員の上昇志向は低下しているという。「親は就職氷河期世代であり、多感な時期にブラック企業という言葉が話題になったことで会社への期待が低く、1社に勤め続けることをリスクと考えるようになった」とその理由を説明する。

 ニュース番組「ABEMA Prime」に出演したスズキさん(20代・仮名)も“上昇志向ゼロ”の社員だ。

「出世によって責任や仕事量が増える。給料が変わらないなら、頑張り損だし、面倒くさい。『お前いらねえよ』と言われても『はい、分かりました』ぐらいの帰属意識だ。出世したところで、なれの果てが自分の上司だ。その上司を全く尊敬できないので、自ずと上昇志向も持てない」

「社内で目立ちたくない」なりたい職業1位“会社員”に賛否も…上昇志向は必要? 出世望まない若手社員
「社内で目立ちたくない」なりたい職業1位“会社員”に賛否も…上昇志向は必要? 出世望まない若手社員

 貿易関係の企業で事務をしているスズキさんは、現在入社4年目で年収は400万円以上。スズキさんのTwitterには「仕事は金を得るための作業。成長したいと微塵も思わない」「今の職場にいるのは職歴作り&時間潰し」「興味のある仕事じゃないから、向上心が生まれない」と自身の考え方がつづられている。現在、転職も検討しているという。

「人生全体における向上心や上昇志向はあってもいい。ずっと会社員は嫌だ。ただ『会社で成長』は自分の選択肢にない。今2社目だが、前の会社よりは絶対にいいので、上昇というか、マシにはなっている。会社員は安定しているという意見もあるが、ずっと勤め続けられるかどうかは全く別物だ」

 中には社員のやる気のなさに悩んでいる人もいる。IT企業の中間管理職として働くよんてんごPさんは、こう話す。

「上昇志向のない社員は『社内で目立ちたくない』『存在価値を高くしたくない』と思っている。『仕事の成果も出したくないし、成長する気もない』と言われると、自分が仕事を振る立場だったら『どう付き合ったらいいの?』と思ってしまう。本来は100点中80〜90点を出せる社員なのに『60点で行きたい』と言われると『じゃあ残り40点どうするの?』と。結局、誰かが尻を拭わないといけない。尻を拭う人が辞めてしまうと、後にはやる気のない社員が残る」

「社内で目立ちたくない」なりたい職業1位“会社員”に賛否も…上昇志向は必要? 出世望まない若手社員

 社員の中で「みんなやる気がないから、一人勝ちできる」と思って、仕事をやってくれる人は出てこないのか。よんてんごPさんは「そういうタイプは、スズキさんと同じで『僕の戦場ではない』と感じて、転職してしまう」と答える。

 経済学者で慶応義塾大学名誉教授の竹中平蔵氏は「逆に『とにかく上の人が働かない』という例もある」と指摘する。

「上昇志向がない若手がいるのも事実かもしれないが、働かない上司がいるのも始末が悪い。以前から日本の労働市場はずっと二重構造だ。すごく優遇されている、いわゆる正規社員ばかりだと、企業はやっていけない。だから、正規社員ではない人を雇う。安倍元総理が『同一労働同一賃金』と言って少し変わったが、実態はまだ変わっていない」

 起業家・エンジェル投資家の成田修造氏は「僕が小学生のときは、なりたい職業の1位が『プロ野球選手』だった」と振り返る。

「僕は『プロ野球選手』が1位って、おかしいなと思っていた。ほとんどの人がなれないし、30歳で引退するようなスポーツ競技だ。みんなこぞって、なぜプロ野球選手になりたいのか、あんなパイの狭いところにいく理由が分からなかった。みんなアホだなと思っていたが、ついに『俺の時代が来たな』と感じている」

「社内で目立ちたくない」なりたい職業1位“会社員”に賛否も…上昇志向は必要? 出世望まない若手社員

▲起業家・エンジェル投資家の成田修造氏

 成田氏は「今までは終身雇用、年功序列が一般的だった。一社に入って40年勤めて退職金をもらう。その間にマイホームを持って生活するステレオタイプがあった」と指摘。その上で「もうそれは崩れていると、みんな分かっている。会社員になるのは、僕は良いことだと思うが、これから日本もどうなっていくか分からないから、次のステップとして独立や起業を目標にしたほうが、どんな場所でも自分の人生を生きられる」と述べる。

 マルチクリエーターのはましゃか氏は「今の時代は『会社員になりたい』で十分上昇志向だ」と指摘する。

「会社員以外の働き方をしている人たちがすごい大変な目にあっていると、子ども時代からニュースを見て知っている。非正規雇用やアルバイトのまま生きる人、フリーランス、自営業など、補助されない中で生きていくことの大変を分かっている。『会社に入る方が安全だ』と思った子どもたちがアンケートに回答したのだと思う。他も素敵な職業はあるのに、それでも『会社員になりたいです』と言ったのは、リスクを理解している子が増えたのではないか。最初は会社員になるけれど、就職してキャリアをどんどん上げていって、最終的に独立する夢を持っている子もたくさんいると思う」

(「ABEMA Prime」より)

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