そう嘆くのは青山学院大学駅伝部の監督でチームを6度箱根駅伝優勝に導いた原晋氏だ。少しずつ貯めたお金をクレディ・スイス債に投資していたが、一瞬で紙切れになったという。その経緯と投資の注意点を解説する。
発端は4週間前。経営不安にさらされていたスイスの大手銀行 クレディ・スイスは発行した特殊な社債「AT1債」およそ2兆3000億円分が突如「無価値」になると発表した。
クレディ・スイスは金融大手「UBS」に買収されたことで倒産は免れたものの、この価値が無くなった債券を原監督も所有していたのだ。
原監督は「老後に年1回の旅行を楽しみたい」と少しずつ貯めた貯金で日本の証券会社から債権を購入していたが、「ハイリスクのものという説明はなかった」と主張。「日本のサラリーマンの平均年収のウン倍が紙切れになった」「クレディ・スイスは倒産していないのにどうしてお金が戻ってこないのか」と嘆く。
あえて自身の失敗を語ったのは「安易な気持ちで投資に乗り出したら私みたいな被害にあって人生を台無しにする。同じ失敗をしてほしくないからです」と訴える。
「債権と株式の中間的な特徴を持つ」というAT1債とはどのようなもので、なぜ倒産していないのにお金が返ってこないのか? ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演した、経済アナリストの森永康平氏は以下のように解説する。
「金融機関が経営破綻をした場合、残った財産をなるべく返そう、という動きをする。そこには弁済順位(優先順位)があり、最初に預金、次に一般的な社債、続いて劣後債、そして AT1債、最後に株式という順だ。優先順位が低いほど高い利回りを得られる。
今回、クレディ・スイスはUBSに買収されたので、クレディ・スイスの株を持っていた人は損な条件だがUBSの株をもらえている。つまり、無価値にはならなかった。対して、本来であれば優先順位が上のAT1債は無価値になった」(以下、森永氏)
ここで鍵になるのが「特約」だという。
「クレディ・スイスのAT1債には政府や当局の支援が入った場合は無価値になるという『特約』が付いていた。そのため『ねじれ』が生じてしまった」
投資をする際の注意点とは。
「分からないものは買わないことだ。今回のAT1債には通常と異なる特約が付いていたが、投資に慣れていない人が細かい書類を見て理解するのは難しい。おそらく、証券会社側も書類を渡したことで説明責任を果たしたとしているはず。人任せにせず、自分でわかっているものに投資をすることが大切だ」
(『ABEMAヒルズ』より)
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