落語家の立川志らくが15日のABEMA『NewsBAR橋下』に出演。落語界の女性活躍と伝統芸能の継承について、橋下徹氏と議論を交わした。
【映像】橋下徹×立川志らく 古典落語とポリコレ/“炎上系”コメンテーター冬の時代
落語界のコンプライアンスや師弟制度、過酷な修行の変遷を語る中、話題は女性活躍に関する内容へ。志らくは「私にも1人女性の弟子がいる。女性の数が増えたり、この前上方(落語)で女性が賞を取ったりしたのはとても良いことだ」とした上で、「私がずっと言っていたのは、“女性に落語は向いてない。無理だ”と。というのも、落語は男性の目線で作った芸だからだ。歌舞伎も同じ男性目線だから女形(おやま)をやるし、逆に宝塚に男性が入ったらおかしなことになる。女性の視点で作った落語をやらないと男性には勝てない、それができないならやるべきではないが、女性の目線を想像して現代にリンクさせていけばできる」との考えを示す。
一方、橋下氏は行政の視点から言及。「上方落語協会が天満天神繁昌亭という寄席を作ってくれて、前任の(大阪)市長まではそこの固定資産税を免除していたが、僕は財政を立て直すため、弁護士会も医師会も、文楽もすべて一律で固定資産税免除を取り消した。その時にファンから『落語を潰すのか!』と言われたが、落語は元々補助がない世界で頑張られていたことも聞いていた。古典芸能と税金の補助についてはどう思われるか?」と問いかける。
志らくは「守らないとやっていけない芸能と、守らなくてもやっていける芸能がある。(立川)談志の話で恐縮だが、『このままだと落語は博物館行きになってしまう』と。だからこそ“伝統を現代に”というスローガンを打ち出して、古典落語と現代との接点を探していかないと能や狂言と同じように国に保護されるようになってしまう、と危惧した。そうなったら大衆芸能としての落語の看板を下ろさなければいけない。守るべきは、古典落語のスタイルだけだ。着物を着て、右向いて左向いて、八っつぁん・熊さんが出てきて、日本独特の話芸、古典落語の美学を守っていれば、そこに現代を入れていっても壊れることはないだろう」と答えた。
これを受けて橋下氏は、「文楽の世界と揉めたのだが、文楽を潰したいわけではなく、守るものは守りながら新しい物は取り入れていってほしいと思っていた。人形の技術はすごくて、人間のありとあらゆる動きができるのに、古典という枠があるためにほとんど動きが見えない。素人からすると“もっと動いてくれたらいいのに”と思うが、文楽の人たちからすると“このちょっとした動きで何を表現しているのかをわかってくれ”と。三谷幸喜さんが文楽を主宰された時、川に飛び込んだ人形がバタフライをやるわ平泳ぎをやるわ、壁にぶつかったら『トムとジェリー』みたいに平べったくなってシュッと落ちるようなありとあらゆる芸を見せる面白い作品をやり、これはすごいなと思った。そういうのもどんどんやればいい」と投げかける。
志らくは「落語も、本当にオーソドックスにやっている人と、いろいろなことをやっている人の両方がいる。落語に談志みたいな人が出てこなかったら私はいないし、M-1の審査員なんて絶対にやっていない。地味な通の間だけの小さい芸になっていて、“なぜお客が来ないんだろうね”“わからないね”と傷をお互いに舐め合っていただろう。私が落語家になったのは1980年代で、1990年代に現代のギャグを入れ始めた。それは邪道だとされていろいろな人に叩かれたし、先輩落語家から『落研(落語研究会)かい、あんちゃんは』といじめられたが、“このやり方でいい。もっとテクニックがついていけばこいつが天下を取る”と唯一よしとしてくれたのが談志。今落語協会の中心にいる(春風亭)一之輔だとかはみんな私と同じやり方で、老舗の落語協会の人たちは『こいつらが後継者だ』と言うけど、私のおかげなのにね(笑)」と述べた。
そうした“破壊者”の存在は必要なのか。志らくは「ただ困るのが、私の弟子もそうなのだが、そこに憧れて入ってきた若い子はテクニックを学ぶ前に破壊者を見る。ちゃんとピアノでドレミファソラシドも弾けない、バイオリンの音も出せないやつがいろいろなことをやり始める。いきなりアドリブとか編曲しているけど、まず音を出せよと」とも指摘した。(ABEMA『NewsBAR橋下』より)