【スーパーフォーミュラ】第3戦（決勝・4月23日／鈴鹿サーキット）
「なんで、なんでこうなんの!? なんで……」
悲痛な叫びがサーキットに響いた——。
4月23日、鈴鹿サーキットで行われたスーパーフォーミュラ第3戦決勝。前日の予選では、『TGM Grand Prix』から参戦する大湯都史樹選手が、今シーズン初のポールポジション（決勝レースで一番前のスタート位置）を獲得した。
今季初優勝をかけて、スタートから2番手以降を引き離していく大湯選手。
スーパーフォーミュラでは、必ず一度はタイヤ交換をしなければいけない義務があり、レース12周目にピットインして先にタイヤを交換したのは、2連覇を果たしているディフェンディングチャンピオンの野尻智紀選手だった。
大湯がピットインしたのは、その8周後となる20周目。タイヤ交換を終えると、野尻の目の前のポジションでレースに復帰した。
交換直後のタイヤは冷えており、走り込んで温まるまで本来のペースで走るのは難しい。その隙を突いて、大湯選手の後ろまで一気に迫る野尻。一定時間エンジンパワーを上げることのできるオーバーテイクシステム（OTS）を利用して、さらにその距離を縮めていく。
2台はもう目と鼻の先。S字コーナーに差し掛かったその時だった。イン側から抜きにかかろうとした野尻選手が大湯選手のマシンに接触。そのまま2台はもつれて外側のクラッシュパッドへ……。予期せぬ大クラッシュにサーキットは騒然となった。
両ドライバーは無事だったものの、追突された大湯選手は、無線で「おい！！」「なんで、なんでこうなんの!? なんで……」と、やるせない気持ちを露わに。
その後、2人はマシンを降りると、野尻選手が大湯選手に歩み寄って肩を抱き「ごめん」という仕草を見せた。が、気持ちの整理がつかない大湯選手は、ひとりガードレール横に座り込む。
結局、このクラッシュは、野尻選手の危険なドライブ行為とみなされ、競技結果に対して30秒加算、ペナルティポイント1点が科された。
チームとしてはライバル関係にある2人だが、マシンに搭載しているエンジンはどちらもホンダ製。つまりお互いホンダドライバーであり、広義的に見ればいわば同士だ。なおかつ、別カテゴリーのレースである『スーパーGT』では、チームメイトでもある。
レース後の会見では、野尻選手は自分の非を認め謝罪をし、大湯選手はやり場のない気持ちを抱えながらも、相手を責めることなく、好調ながら結果が出なかったことを悔やんでいた。
今は両者共に複雑な心境であることに違いはないが、次戦からは、さらに熱くクリーンなバトルでファンを湧かせてくれると願いたい。（ABEMA『スーパーフォーミュラ2023』／(C)JRP）
