「癒しと生き甲斐が欲しくて」「子育てが終わってから寂しくて」「健康になるために…」。
人生のパートナー・家族として犬や猫などを飼う人は多い中、「高齢者による飼育放棄」が問題になっている。病気や体力の衰え・突然訪れる死など、想定外の事態によって十分に世話ができなくなったとき、苦境に立たされるのは愛するペットだ。
ニュース番組『ABEMA Prime』では保護団体のメンバーなどと「高齢者とペットの関わり方」を考えた。
■高齢の飼い主による飼育放棄
高齢化が進む中、「心身共に健康に生きる」という観点でも注目されているペット飼育。癒しや生きがいを与えてくれるほか、長寿や認知症予防にも効果があると言われている。
しかし、ここに落とし穴がある。
番組スタッフがNPO法人「みなしご救援隊 犬猫譲渡センター」を取材すると、毛が伸びっぱなしのミニチュアダックスフンドがいた。
理事の杉山はるか氏は「この子は2日前に保護した。飼い主さんが高齢になられて、お病気になり『もう見られない』ということだった。一般的には、足が滑らないように毛をカットしてあげるが、手が回らなかったんだと思う」と話す。このように高齢者が飼い続けることが難しくなり、保護の相談に来るケースは多いという。
この団体は、一般家庭でやむを得ない理由などで飼育できなくなったペットを保護している。2004年から21年に保護したおよそ3200匹のうち、8割以上が高齢者による飼育放棄が理由だ。
杉山氏は「病気療養で入院され、家に戻れる見込みがないという方や、高齢になり認知症になった方、亡くなられた方だ。またこれから入居する介護施設・老人ホームがペット不可である場合などもある。経済的・体力的に飼っていく余裕がなくなったというケースなどもある」と実情を語る。
現在の飼育放棄に対する制度については、「国は殺処分ゼロに舵を切っており、既に達成している都道府県も多い。そういった自治体では基本的には保護をしない。そのため『ペットを飼えなくなりました』と保健所に電話しても、昔と違って『自分で何とかしてください』と断られ、結果的に遺棄する方が増えている。地域猫の餌やりさんからは、『ある日突然、人にすごく慣れた猫が現れた』という話もよく聞きます」と説明。つまり、ペットを捨ててしまっている現実があるのだ。
ただ、こうした遺棄の現状は、表面化しないことも多いという。杉山氏は「ペットの遺棄はもちろん違法だ。罰金刑が科される場合もある。ただ、猫の場合は判明しないことが多い」とした。
■“もしも”に備える様々な対策
杉山氏は放棄や遺棄を防ぐための、飼い主の年齢制限の可能性について「現在、人の健康寿命は平均74歳前後になっている。もちろん個人差はあるが、ペットを飼うのであれば、『74歳ぐらいまでに看取れること』から逆算して考えるべきだろう」と見解を述べた。
一方で、経済産業省の元官僚で制度アナリストの宇佐美典也氏は「売る行為に規制をかけるべきだと思う。仮に『こんな事態になったらどうする?』という想定を作って、もしそれで実現できなければ『売らない』とするなど、規制が効果的かもしれない」と提案。
年齢などのリスクはあるが、それでも飼いたい人に向け「ペット信託」という選択肢がある。飼い主の身に不測の事態があり、飼育が難しくなった場合に備え、お金を残し、その後は保護団体や家族などに引き継いでいくような制度だという。杉山氏は「金額は人によって異なるが、30万~200万円ぐらいと様々だ。ペット信託と合わせて、遺言書を残される方もいる。ただ、そもそも本人が最期まで飼うべきだ」と述べた。
さらに番組では、「飼い主が死亡したとき、認知症になった時など、条件をたくさんつけ、定められた明確な金額を先払いしておくことで“もしも”の事態が起きた際、誰かが見てくれる仕組みを作るべき」という意見も出た。
10年以上、犬と生活するお笑い芸人のカンニング竹山は「基本的には人間と同じように考えたらいいと思う。子どもがいる家庭では、両親に不幸があった場合、身内が預かるケースも多いと思う。犬や猫も事前に“もしも”が起きた場合の対処について、身内や知人・友人に話しておくべきだ。飼うということは家族だ」
議論の最後に、杉山氏は「冒頭で紹介したダックスフンドは保護されてから、36時間ご飯を食べていない。もしかしたらストレスで死ぬかもしれない。人間側の目線だけじゃなく、犬や猫がどうなるかを考えてほしい」と訴えた。
(『ABEMA Prime』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側