ACL決勝に臨む浦和に立ちはだかる“日本サッカーをよく知るセンターバック”

2012年にFC東京でプロデビュー

 クラブ3度目のアジア制覇に挑む浦和レッズに、Jリーグファンにもなじみ深い韓国人センターバックが再び立ちはだかる。

 日本の浦和レッズとサウジアラビアのアル・ヒラルが激突する2022年シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝。第1戦は日本時間の4月30日、アル・ヒラルホームのキング・ファハド国際スタジアムで行われ、第2戦は5月6日に浦和ホームの埼玉スタジアム2002で行われる。

 両チームの決勝での顔合わせは2017年、2019年大会に次いで3度目。初対戦はラファエル・シルバ(現・全北現代モータース)の決勝ゴールによって浦和が勝利したが、2度目の対戦ではアル・ヒラルに軍配が上がった。

 そして今回、またしても決勝の舞台で相まみえることになったわけだが、アル・ヒラルには日本のサッカーをよく知る選手がいる。かつてFC東京で活躍した元韓国代表DFチャン・ヒョンスがその人だ。

 1991年生まれで現在31歳のチャン・ヒョンスは2012年にFC東京でプロデビュー。2014~2017年に広州富力(中国)に在籍した期間を挟み、2019年までの通算5シーズン在籍し、J1リーグ通算88試合8得点を記録した。2018年シーズンにはクラブ史上初めて外国籍選手としてキャプテンマークも巻いた。

 その後、2019年7月にアル・ヒラルへ完全移籍し現在に至る。これまでサウジアラビアに渡った韓国人選手は元ヴィッセル神戸柏レイソルのGKキム・スンギュ(アル・シャバブ)など計12人いるが、チャン・ヒョンスは最も長く同国でプレーしている選手でもある。

 アル・ヒラルでの公式戦通算記録は現時点で142試合6得点4アシスト。この間、国内リーグ3連覇に加えてカップ戦とスーパーカップで1度ずつ優勝し、ACLでは2019年、2021年大会の2度優勝を経験した。

外国籍選手がそろうチームで定位置を確保

 今季も主力としての立ち位置を確立しており、リーグ戦17試合2得点1アシストのほか、準優勝に終わった今年2月のクラブワールドカップでは全3試合でフル出場。ACLはグループステージこそ6試合中3試合の出場にとどまったが、ノックアウトステージでは準決勝までの全3試合でフル出場し、チームの2大会連続決勝進出に貢献した。

 そのアル・ヒラルでは計7人の外国籍選手がプレーしている。マンチェスター・ユナイテッドにも在籍した元ナイジェリア代表FWオディオン・イガロをはじめ、元マリ代表FWムサ・マレガ、アルゼンチン人FWルシアーノ・ビエットなど、特に前線には豪華タレントがそろう。

 ただ、そんななかでチャン・ヒョンスは現役ペルー代表FWアンドレ・カリージョに次いで2番目に所属歴が長い。カタールW杯で王者アルゼンチン代表を唯一破ったサウジアラビア代表の選手が並ぶ最終ラインで不動の地位を築いているのは、それだけチーム内で確固たる信頼を得ているからだろう。

 昨年夏には、憧れの存在であるホン・ミョンボ監督率いる蔚山現代からオファーが届いた。自身初のKリーグ進出の可能性に韓国で注目が集まったが、チャン・ヒョンスは最終的にアル・ヒラルとの契約延長を選んだ。

 今大会でアル・ヒラルが優勝した場合、チャン・ヒョンスは史上2番目に3度アジア王者に輝いた韓国人選手となる。ちなみに、初めてその快挙を達成した選手は2006年と2016年に全北現代、2018年に鹿島アントラーズでACLを制覇したGKクォン・スンテだ。

 現地メディアの報道によると、チャン・ヒョンスは直近の24日に行われたアル・イテハドとのカップ戦準決勝で負傷した疑いがあり、ホームでの第1戦を欠場する可能性も伝えられている。とはいえ、ACL決勝という大一番なだけに選手本人の出場意欲は高いはずだ。

 キャリア通算6度のACL出場で3度目の決勝を迎えるチャン・ヒョンス。仮に今回出場することがあれば、FC東京時代、そして前回の2019年大会決勝含め、浦和とは自身通算10試合目の対戦となる。浦和とアジア王者の座をかけて激突するアル・ヒラルの元Jリーガーにも要注目だ。

文=姜 亨起(ピッチコミュニケーションズ)