福祉や差別問題などに焦点を当てる情報サイト「NHKハートネット」の投稿に批判が集まっている。
【映像】「NHKは差別を助長したいの?」の声も…批判殺到の投稿(画像あり)
「女性障害者が男性から入浴や排泄介助を受けることは単なる羞恥心の問題ではありません。尊厳の問題です。心身共にナイフでズタズタにされる感覚でした。性犯罪被害に遭っているのと感覚は変わりありません」(※「NHK ハートネット」Twitterより)
同番組では入浴やトイレなど、プライベートな部分の介助や介護にスポットを当てていた。この投稿に対しTwitterでは「男性介護士の尊厳を踏みにじっている」「NHKは差別を助長したいの?」など批判の声が殺到。介護の現場からは「配慮は心掛けているが人手不足で現場が回らないのが現実」などの声が寄せられた。
ニュース番組「ABEMA Prime」の取材に対しNHKは「投稿は男性の介助者を否定するものではなく、女性が男性を介助する場合も含めて、本人の意思に反して繰り返される異性からの介助における当事者の思いを伝えるものとしてご紹介させていただきました」と回答した。
問題の本質はどこにあるのか。兵庫県で高齢者の在宅医療や介護事業を行っている、株式会社ロジケア代表の佐野武氏は「言葉の力がすごく強い。事業所の職員も戸惑っている」と話す。
「本来は当事者の感想、感情を伝えたかったのだろう。こういう表現をせざるを得ないほど、つらかったことは理解できる。一方で、投稿は個別のケースの話で『男性のヘルパーによる入浴や排泄の介助が性犯罪加害者になりかねない』と読めてしまうのも事実だ。解きほぐしていく必要があると思う」
実際、現場でも利用者から同性介助の希望はあるという。佐野氏は「ツイートの当事者がどういった介護の場面だったのか、定かではない。我々は訪問介護なので、少し事情が違うかもしれない」とした上で「基本的には入浴や排泄の介助は、同性介助が基本だ。ただ、それができない特別な理由がある場合、やむなく異性の介助を行っていることはある」と述べる。
佐野氏が代表を務める「ロジケア」スタッフの男女比率は、男性が約20%、女性が約80%。利用者は男性が約30%、女性が約70%だ。
「異性介助を行う場合、希望のあるなしに関わらず、説明と同意が原則だ。体が大きくて女性ひとりでは介助が難しかったり、男性の介護職のほうがうまくいく場合でも、説明して同意をいただく。このプロセスが重要だ。特に高齢者の場合は認知症や、そのほかの事情でご本人様の意思がはっきりと表明できないケースもある。家族も含めて説明させていただくが、それが本人の本当の気持ちなのか白黒つけられないときもある。事情が違うので、多くの複雑な要素が絡み合った結果、異性介助やむなしという場合もあるし、何とか回避できる場合もある」
介護業界の人材不足も指摘されている。介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査」によると「介護事業所の人材不足感を感じるか」という質問に「不足している」と回答したのは63%だった。
佐野氏も「これ以上ヘルパーの人員不足が加速すると、もっと厳しい状況になる。我々も何とか苦労して、利用者さんにも協力いただいて、ギリギリでやっている」と述べる。
義足と車いすを使用し、ダンサー・俳優として活動する森田かずよさんは、過去に男性からの医療介助を経験した。
「ツイートの言葉が独り歩きしている。女性障害者の介助に対する尊厳は本当に必要。それは理解していただきたいと思う。男性障害者よりも女性障害者の声は届きにくいし、本人も言いづらい部分もある。今回、女性障害者の声がちゃんとメディアに届いたことは、非常に評価できる。ただ言葉の言い方、使い方の問題で、介護の人に対する批判につながるのは問題だ。介護職の待遇に関しても、もっと上げるべき」
実際に、男性から介助を受けた際のエピソードとして「許可を得ずに男性だったこともある」と話す森田さん。「今は変わって、最近では男性が処置してもいいか、必ず聞いていただけるようになった。昔はそうではなかった」と明かす。
8年にわたって介護の現場でアルバイトをしていた、EXITのりんたろー。は「一番尊重されるべきは、介助を必要とする人の意思だ」とコメント。
「男性の要介助者に女性が入れないこともあったし、逆に僕が入れないパターンもあった。『いつもは大丈夫だけど、認知症が出たから今日はダメ』というケースもある。でも、現場はそうも言っていられない。お風呂は特に技術がすごくいる介助だし、汗でビショビショになる。中にはご家族の方だとなかなか難しいから、お風呂に入ってもらうために、施設に預けている人もいる。本人は嫌がっているけど、ご家族の方は『入れてほしい』と。本人嫌がっていると伝えても『それは分かっているけれど、何とか納得させてお風呂に入れて』と言われるから、なかなか難しい。お風呂の他にも食事介助など、やらないといけない大変な仕事がある。女性が多い業界だから、男性の介護士がいない日もザラにある」
その上で、りんたろー。は「どこまで発信するかを決めて、発信する媒体を選ばないと誤解を産んでしまう」と指摘。「本当に伝えたかったものが結局伝わらなくて、歪んで伝わってしまったら、当事者も救われない」と述べた。(「ABEMA Prime」より)
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