バイエルンとドルトムントが熾烈な優勝争いを演じているブンデスリーガ。先週末に行われた第30節の試合では、ドルトムントが引き分けるなかでバイエルンが確実に勝ち点3を積み重ねて首位が入れ替わった。そんなつば迫り合いを演じる上位2チームの試合で、記念すべきゴールが生まれたので振り返ろう。
■最年長ゴール
現地時間4月28日に行われたボーフム対ドルトムントのナイトゲームでは、前節まで首位に立っていたドルトムントが下位に低迷するボーフムを相手に手痛い引き分けに甘んじた。過去20年間、首位で第30節を迎えたチームは1シーズンを除いて必ず頂点に上り詰めてきたという。しかし、ドルトムントは攻め続けながらも勝ち切ることができずにボーフムを相手に1-1。勝ち点1の獲得に留まって、2位につけていたバイエルンに抜かれることになった。
その試合でボーフムの得点を決めたのは意外な選手。腕章を巻く37歳のMFアントニー・ルジアだった。2014年からボーフムに所属する最古参のフランス人は、右サイドから仕掛けた日本代表FW浅野拓磨のクロスのこぼれ球を拾うと、右足を振り抜いて試合開始早々の5分にネットを揺らした。ブンデスリーガで今シーズン初得点。昨シーズンの3月以来、約1年ぶりのゴールとなった。
ボーフムは直後に同点に追いつかれるも、その後は最後まで耐え凌いで1ポイントを確保。入れ替え戦枠の16位から抜け出すことはできなかったが、残留に望みをつなぐ貴重なポイントを手にした。そんな重要な得点となったルジアのゴールは、今シーズンのブンデスリーガにおける「最年長ゴール」だった。
1986年生まれのルジアは「37歳と1カ月18日」でゴールネットを揺らした。2週間前にシャルケのDFシモン・テローデが記録した「35歳と1カ月12日」を2歳も更新して今季の最年長ゴールをマークしたのだ。ドルトムントの同点ゴールを決めたドイツ代表FWカリム・アデイェミ(21歳)とは実に「16歳差」だ。37歳でもまだまだ元気なルジアは、フル出場を果たしてこの試合最長となる「11.8㎞」の走行距離を記録した!
データサイト『Transfermarkt』によると、ロジラの「37歳と1カ月18日」は1963年から続くブンデスリーガの年長ゴールランクにおいて歴代22位だという。最年長記録を持つのは、ブレーメンやバイエルンで活躍した元ペルー代表FWクラウディオ・ピサーロだ。ブレーメン時代の2019年5月18日に「40歳と7カ月15日」でライプツィヒを相手にゴールネットを揺らした。
偉大なペルー人は、ブレーメンでの109ゴールのほか、バイエルンで87ゴール、ケルンで1ゴールを奪い、ブンデスリーガで歴代6位となる通算197ゴールを決めている。
そんなブンデスリーガの年長ゴールランクに目を向けると意外なトレンドが見えてくる。実はトップ3は全て同じチームの選手なのだ。ピサーロだけでなく2位ミルコ・ヴォタヴァ(40歳と3カ月30日)と3位マンフレート・ブルクスミュラー(39歳と7カ月14日)もブレーメン時代に記録を打ち立てている。
そして、このランクの上位に食い込む可能性がある現役ブンデスリーガーがいる。それが元日本代表の主将、フランクフルトの長谷部誠である。今月6日に行われる次節のホッフェンハイム戦でネットを揺らせば「39歳と3カ月18日」でのゴールとなり、今季の最年長記録を更新するだけでなく、歴代ランクでも5位にランクインすることになるのだ!
■ニャブリの7シーズン連続
ドルトムントを抜いて首位に浮上したのは、4月30日のヘルタ・ベルリン戦に2-0で勝利した王者バイエルンだ。11連覇を目指すバイエルンは、粘り強いヘルタの守備に手を焼きながらも、残り20分のところで均衡を破ると2-0で勝ち点3を手にした。これでドルトムントを抜いて首位に返り咲いた王者は、首位で残り4試合を迎えることになる。
その試合で貴重な先制ゴールをマークしたのがドイツ代表FWセルジュ・ニャブリだ。若くしてイングランドに渡ったウィンガーは、アーセナルで研鑽を積んだあと2016年に母国に戻ってきた。そしてブレーメンやホッフェンハイムで活躍した後、現在はバイエルンで躍動している。そのニャブリは、ヘルタ戦で得点ランク9位タイとなる今季リーグ戦10ゴール目をマーク。これで7シーズン連続でのブンデスリーガ2桁ゴールを達成したことになる。
ちなみに、昨季まで5季連続でブンデスリーガ得点王に輝いていたFWロベルト・レヴァンドフスキ(現在バルセロナ所属)は、ドルトムントとバイエルンでゴールを量産して昨季まで11シーズン連続でブンデスリーガ2桁ゴールをマークした。そして今季はラ・リーガでも2桁ゴールをマークしているが、リーグをまたいでおり、ブンデスリーガで7シーズン連続2桁ゴールを決めているのはニャブリだけとなる。
今季を含め、現在ブンデスリーガで複数シーズン連続での2桁ゴールを達成しているのはニャブリ(7シーズン)以外では、ライプツィヒのフランス代表MFクリストファー・エンクンク(2シーズン)しかいない。そう考えるとニャブリの凄さが伝わってくるはずだ。
さらに、欧州5大リーグで見ても、今季を含めて同一リーグで7季以上も連続で2桁ゴールをマークしているのはニャブリ以外では5名しかいない(先週末までのゴール数)。その他4名はトッテナムのハリー・ケイン(9季)、セルタのイアゴ・アスパス(8季)、トッテナムのソン・フンミン(7季)、ラツィオのチーロ・インモービレ(7季)、パリ・サンジェルマンのキリアン・エンバペ(7季)だ。
生粋のストライカーではないニャブリが、これほどの偉大な点取り屋たちと肩を並べたのだから、改めて彼の決定力とバイエルンの強さには感服するしかないだろう。
(記事/Footmedia)