三笘薫が所属するブライトンは、第34節のウルブス戦で6-0の大勝を収めた。この勝利の最大の要因は、指揮官ロベルト・デ・ゼルビ監督の采配であり、その戦略をピッチで体現できる選手たちの技術と遂行力の高さを改めて証明する一戦となった。
「守備の仕方を工夫した」レオザ氏の指摘
ブライトンは、過密日程を加味して三笘薫やモイセス・カイセド、アレクシス・マクアリスターら主力をベンチに温存。決して人材が豊富とは言えない選手層のなかでターンオーバーを行ったのだが、それでもモノの見事に相手を圧倒してみせた。
その戦いぶりを、ABEMAの中継で解説を務めたLeo the football氏が分析している。
特に着目したのが、指揮官の戦術だ。前半途中に同氏は「守備の仕方をデ・ゼルビが工夫してきましたね」と発言。続けて「ウルブスのビルドアップは、左CBのキルマンから始まります。ずっとウェルベックの立ち位置がなんでこんなサイドにいるんだろうと思ったら、キルマンに対してほぼマンマークのような形で付いていました。一番ボールを出せる人を抑えて、球出しが苦手なドーソンに持たせるようにしている」と、相手の最終ラインがボールを保持している際のブライトンFWの“セオリーとは異なる”立ち位置の理由に言及した。
この作戦がもっともハマったのが、2点目の場面だろう。ドーソンのサイドからのビルドアップに失敗したウルブスがボールロストすると、ブライトンがショートカウンターを発動。左サイドから攻め込み、最後はグロスの素晴らしいフィニッシュで追加点を奪った。
キルマンとドーソンの特徴を分析していたデ・ゼルビ
ウルブスの左CBマックス・キルマンはもともとフットサルの選手であり、下部リーグでプレーしていた2015年から2018年にかけてはイングランドのフットサル代表にも選出されていた。サッカーよりもコートの狭いフットサルでは、より正確な足元の技術やパス精度が求められる。そんな環境で育ったからこそ、このDFは球出しに優れているのだ。
対して右CBクレイグ・ドーソンはウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンやウェストハムで主力を務めていた選手だ。両クラブともに最終ラインからビルドアップが整備されていたわけではなく、どちらかと言えば足元でボールを扱うことは苦手だ。ストッパーとしての能力や空中戦に強い一方で、最終ラインからつなぐサッカーには慣れていない。
こうした両選手の特徴を、デ・ゼルビ監督は事前に分析していたことが伺える。キルマンを封じれば、ウルブスの最終ラインからのビルドアップに問題が生じると考えたのだ。
実際、前半にブライトンが奪った4ゴールのうち、3つがドーソンのいるサイドから生まれたものだった。相手をウィークサイドに引き込んでミスを誘い、ショートカウンターへとつなげていたのだ。
ターンオーバーが成功した理由
デ・ゼルビ監督は試合後「これほど多くの試合をこなすことには慣れていない。だからマクアリスター、三笘、カイセドの回復のために1試合を与えるのはいいことだと思う」と語った。
サッカーにおいて重要なモノの一つは、チームの約束事である「戦術」だ。その上に選手個人の特徴や能力が乗っかることで強いチームが完成する。
ブライトンは、この「戦術」という土台がしっかりとしているため、三笘やカイセド、マクアリスターら主力選手をベンチスタートさせても大勝を収めることができたのだ。
この土台を築いた人物こそが指揮官デ・ゼルビであり、ウルブス戦で示した6-0という大勝で、彼がブライトンの最大の資産だということが証明されたのではないだろうか。
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