4日、首都モスクワのクレムリンが攻撃され、ロシア大統領府は「ウクライナが2機のドローンで攻撃を試みた」と発表した。しかし、ウクライナのゼレンスキー大統領は「我々がプーチン大統領やモスクワを攻撃することはない」と否定。それぞれの動向に注目が集まっている。
【映像】近くに人影も…カメラが捉えたクレムリン“ドローン襲撃”の瞬間(動画あり)
一方で、首都モスクワの日常は普段と何も変わっていない。市民の中には「知らない。ニュースを読まないし見ない」「時間がないからテレビを見ていない」と話す人もいる。
一体誰がどのような目的でドローンを飛ばしたのか。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した防衛省防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄氏は、「マルチコプター型ではなく飛行機型のドローンだ。爆発が小規模なので爆薬としては数kgだろう。飛行機型のドローンはそれほど積めない」と見解を示す。
今回のクレムリン攻撃には3つの可能性が浮上している。1つはウクライナによる攻撃、2つ目はロシアの“自作自演説”、3つ目が反プーチングループ・パルチザンによる攻撃だ。
「現状、いずれも可能性はある。パルチザンの場合、爆発物を手に入れることが難しいはずだ。例えば、爆発物がウクライナから提供されているとすれば、結局ウクライナと見ていい。結果、誰が得をするのか。エビデンスはないが、個人的には6対4でウクライナだと思っている」
映り込んだ人影らしきものはどう考えたらいいのか。
「未明だったから、普通はあんなところに人がいないはずだ。ロシアの自作自演という見方もあるようだが『人がいたら自作自演』と考える理由がよく分からない。映像はおそらく2回目の爆発時のものだ。ロシア政府は、これに12時間くらい反応していない。対応の遅さを見ると、自作自演ではないかもしれない。時間から1回目の爆発がどこかで起こっていて、様子を確かめに行った人たちが2発目の爆発に居合わせたのではないか」
高橋氏は「映像はロシア側から出たもの」とした上で「監視カメラではなく、おそらく誰かが撮ったものだ。1回目があったから、撮影していた可能性がある」と指摘する。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏も「2回目の爆発時の映像だと思う」とコメント。
「爆発に合わせて撮るのはなかなかできない。そもそも2回目でないと、あんなところでカメラを回していない。おそらく映像はスローだ。本来であればもっと速い。ただ、ウクライナによる攻撃だとしたら、ウクライナ側のメリットがあまり見えない。ロシアの空軍基地を狙った方が効率もいいし、わざわざセキュリティの高いモスクワに行ってドローンをぶつけるだけで、特に軍事的なダメージがない。僕はウクライナ以外の可能性が高いと思う」
今回のクレムリン攻撃は、戦争にどのような影響を及ぼすのか。高橋氏は「激化するだろう」と述べる。
「自作自演であっても、ロシアはモスクワが攻撃されて報復しないわけにはいかない。すでにドローンでキーウが攻撃されたが、何らかの大規模なミサイル攻撃をすると思う。昨年10月から1カ月に1回、ロシアが100発規模のミサイル攻撃をやっているが、最後が3月9日だ。すでに2カ月やってない。4月28日のミサイル攻撃は20発程度だった。長らく言われていたロシア側のミサイル生産能力の限界や、在庫の不足がそろそろ本当に出てきた可能性はある。モスクワが攻撃されて、もしまた20発程度しかミサイルを撃てなかったら、本当にミサイルが足りていない」
ロシア側は「プーチン大統領の暗殺を狙ったものだ」と報道している。これに高橋氏は「大統領暗殺はあり得ない」と述べる。
「大統領の居場所は何時間ごとに変わる。例えば、ドローンをウクライナ本土から飛ばすと5時間以上かかる。5時間後、大統領がどこにいるか場所を正確に予測できない。また数kg、多くても20kgくらいの爆薬で暗殺するためには、部屋にピンポイントに狙わないといけない。そこまで正確にプーチン大統領の場所を予測するのは不可能だ」
5月9日に対独戦勝記念日を迎えるロシア。どのような影響がありそうか。高橋氏は「ロシア軍としては、まさに晴れ舞台の顔を潰された形だ。対策はするが、ドローン攻撃を理由に取りやめることはメンツに関わる」と話す。
作家の乙武洋匡氏は「次の大規模攻撃をするための“大義名分”が鍵ではないか。もしウクライナからの攻撃だったとしたら、ウクライナは損をすると思う。逆に“大義名分”をロシアに与えてしまうことになるからだ」と指摘する。
乙武氏の主張に、高橋氏は「大事なポイントだ」とした上で「大規模報復をする理由はすでに転がっている」とコメント。
「例えば、4月29日にセバストポリという軍港で燃料タンクが爆破され、5月1日と2日にはロシア国内で鉄道が爆破されている。顔を潰すことをわざわざロシアが自作自演でやる必要はない。仮に自作自演だとすると、相当大きな大義名分を求められる何かが後ろにある。可能性があるとすれば『国民の皆さんに協力してほしい』という形の大義名分だ。去年9月に、ロシアは30万人の動員をかけて、国内が動揺した。同じように『ウクライナがモスクワを攻撃してきた』として、例えば20万人や30万人の動員をかける。その理由として使われるのはあり得る」
(「ABEMA Prime」より)
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