5月9日、都内での会見で、武尊ONE Championshipと独占複数試合契約を結んだことを発表した。すでにネットでは情報が流れていたが、今回あらためて正式にアナウンス。

「6月24日に復帰戦があるので、勝ってから発表しようと思っていたんですが。自分の口からみなさんにお伝えしようと」

 会見でそう語った武尊。フランスでの復帰戦に向けては「先月はアメリカで合宿して、手術したところも、ほぼ試合に影響がないくらいまで仕上がってます」と力強くコメントした。

 ONEと契約するにあたっての心境については、こんな言葉を残している。

「自分はキャリア最終章に入って、今が一番強いと思ってます。その時期に、世界最強の選手が集まるONEに出ようと。K-1代表としてONEに殴り込みにいこうと思ってます。立ち技で世界の強い選手がONEに集まってますし、ファイトマネー、待遇の面でも選手へのリスペクトを感じます。一番(の理由)は、闘いたい選手がONEにいるからですね」

 さらに、自分がONEに出ることで周囲にも影響を与えたいという。

「日本人がさらに世界的に活躍できる環境が作れたらと。他の日本の選手も注目されて、盛り上がっていけば。昔から言ってるんですけど、日本vs世界の対抗戦もやってみたい。そういうものにつながっていけばいいなと思います」

 ONEは先週、初のアメリカ大会を成功させたばかり。創始者兼CEOのチャトリ・シットヨートン氏は、再度の日本大会開催についても言及していた。

 ただ、それはプランニングの段階。今回の会見では「できれば今年やりたい。もしくは来年ですね」とコメントするにとどめた。 

 武尊の参戦によって期待されるのは、やはりONE立ち技部門最大のスター、ロッタン・ジットムアンノンとの対戦。すでにロッタンから対戦アピールがあり、武尊も「やりたい相手」がロッタンであることを隠していない。

 ただ、まずは目の前の試合に集中することが武尊のスタンス。6.24復帰戦で勝たないことには次のことは考えられない。試合をするのがキックルールなのかムエタイルールなのかも決めていないという。ただ会見の質疑応答の中で、ヒジありオープンフィンガーグローブのONEムエタイルールで試合をする可能性も否定はしなかった。

 チャトリCEOは“武尊獲得”にいつも以上のハイテンション。

「これは日本格闘技最大の出来事です。魔裟斗や(那須川)天心はベスト・イン・ジャパン。日本の中で闘っていた。でも大谷翔平は日本を出てベスト・オブ・ベストになった。武尊にもそうなるチャンスがあるんです」

 さらにONEの判定にホームタウンデシジョンはないとアピール。かつてロッタンが那須川に僅差の判定で敗れた試合について「絶対絶対、ロッタンが勝ってた」と日本語で熱弁する場面も。

 確かに、武尊は魔裟斗や那須川が通らなかった道に進むことになる。ただ、チャトリCEOが何度も「格闘技界の大谷翔平」と強調することに対して、最後に持論を述べてもいた。

「大谷翔平ではなく、僕自身が“世界の武尊”になります」

 誰かと同じなのではなく、あくまで自分のやり方で、自分の道を行く。他の日本人ファイターへの影響を考えるところも含めて、やはり武尊らしい会見だった。

文/橋本宗洋

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