今季のチャンピオンズリーグ(CL)では、6シーズンぶりにイタリア勢が決勝まで勝ち上がることが決まっている。果たして、それはミラノのどちらのチームになるのか? それでは10日に行われるCL準決勝のイタリア決戦、いや「デルビー・デッラ・マドンニーナ」をプレビューしよう。
[写真]=Getty Images
■ミラノ・ダービー
今季チャンピオンズリーグの準決勝でイタリアのミラノを拠点とする2つの名門、ミランとインテルが激突する。いわゆる「ミラノ・ダービー」なのだが、両者の対戦は「デルビー・デッラ・マドンニーナ」という愛称でも知られる。
ミラノの街を代表する観光名所の大聖堂「ドゥオーモ・ディ・ミラーノ」には何本も尖塔があり、一番高い尖塔の先には聖母マリアの像がある。地元では、このマリア像を「マドンニーナ(小さなマリア)」と呼ぶため、ミラノ・ダービーもこの像にちなんで「デルビー・デッラ・マドンニーナ」と呼ばれることがあるのだ。
両者の初対戦は、インテルがミランの前身「ミラン・フットボール・アンド・クリケット・クラブ」から派生する形で誕生した1908年の翌年。以来、115年間で公式戦235回も対戦してインテルの「87勝69分け79敗」という成績になっている。
今シーズンはセリエAでの2度の対戦に加え、1月にスーペルコッパ・イタリアーナでも相まみえており、インテルが2勝1敗と勝ち越している。これからCL準決勝でも2度対戦するわけで、今季は5回もミラノ・ダービーが見られることになる。昨シーズンも4度対戦(リーグ戦2回、コッパ・イタリア2回)しているが、ミラノ・ダービーの歴史において1シーズンで「5度」も対戦するのは史上初のことだという。
欧州の舞台に限ると、両者は過去に2度ぶつかっている。どちらも今回と同じCLで、2002-03シーズンに準決勝、2004-05シーズンにベスト8で相まみえた。欧州カップ戦での初のミラノ・ダービーとなった2002-03シーズンは、ミランのホームゲーム扱いとなった初戦がゴールレス。続く第2戦も1-1のドローとなり、2戦合計1-1に終わったが、カルロ・アンチェロッティ率いるミランがアウェイゴールルールにより決勝に勝ち上がることに。そして決勝ではPK戦の末にユヴェントスを退けて頂点に輝いた。
2年後の準々決勝は、思わぬ形で幕切れを迎えた。ウクライナ代表FWアンドリー・シェフチェンコのゴールなどでミランが初戦を2-0で勝利。続くセカンドレグでもシェフチェンコがネットを揺らし、ミランが計3-0とリードしたのだが、72分にインテルのサポーターから投げ込まれた発煙筒がミランのGKジーダに直撃。試合は20分の中断を経て再開するも、すぐに審判の判断により没収試合となった。「この出来事はインテルを傷つけるだけでなく、ミラノの街全体を傷つけた」と試合後にミランのアンチェロッティ監督は嘆いた。結局、第2戦はミランに3-0の勝利が与えられ、計5-0で制したミランがそのまま決勝まで勝ち上がるのだが、ファイナルで“イスタンブールの奇跡”の餌食となった。
ちなみに、両者はスタジアム(サンシーロ)を共有しているため、ミラノ・ダービーはUEFA主催のクラブゲームにおいて最も短い距離のアウェイゲームとされている!
■カテナチオ
イタリア勢対決とあって、キーワードは“カテナチオ”になりそうだ。イタリア語で「掛けがね」を意味する“カテナチオ”は堅守速攻の代名詞。この言葉を世に広めたチームの1つがインテルだ。1960年代、名将エレニオ・エレーラの元で堅守を誇ったインテルは、チャンピオンズカップを2連覇するなど黄金期を築いて“グランデ・インテル”と称えられた。
今季のCLでもインテルは半数以上の試合でクリーンシートを達成している。グループステージではバイエルンとバルセロナに複数失点を喫し、準々決勝のベンフィカ戦のセカンドレグも3-3と派手な打ち合いを演じたが、今季ここまで10試合のうち6試合でシャットアウトしている。
だが、今季CLの“カテナチオ”といえばミランになる。グループステージの途中から数え、CL最近6試合でわずか1点しか奪われていないのだ。ベスト16のトッテナム戦ではFWハリー・ケインとFWソン・フンミンを見事に零封し、攻撃力が自慢のナポリとの準々決勝でも2試合でわずかに1失点。データ会社『Opta』によると、CL最近6試合で86本もシュートを打たれ(枠内シュートは27本)、相手チームのゴール期待値は「計6.8」もあったそうだが、それでも1点しか許していないのだ。
さらにミランは、CL準決勝の“ホームゲーム”に限ると、過去6試合で4勝1分け1敗と圧倒的な成績を収めている。唯一の敗戦は、2005-06シーズンのバルセロナ戦でFWリュドヴィク・ジュリに試合唯一のゴールを決められたゲーム。準決勝のホームゲーム6試合で許した失点は、そのバルセロナ戦の1点だけなのだ。2002-03シーズンのインテル戦(0-0)を含め、他の5試合ではクリーンシートを達成している!
■二人のアタッカー
攻撃面に関しては二人のアタッカーに注目が集まる。ミランのサポーターは、ポルトガル代表FWラファエル・レオンが間に合うか固唾を呑んで見守っているはずだ。ミランの切り込み隊長は、今大会ここまで全10試合に先発出場しており、チーム最多となる37回のドリブル突破を成功。一人でチーム全体の40%となるドリブル突破をしていることになる。
準々決勝ナポリ戦のセカンドレグでもドリブル突破からオリヴィエ・ジルーのゴールをお膳立て。今大会ここまで4位タイとなる4アシストを記録している。だが、6日に行われたセリエAのラツィオ戦で外転筋を痛めて前半11分に交代しており、ミラノ・ダービーに間に合うか不明だ。
対するインテルでは、アルゼンチン代表FWラウタロ・マルティネス(25歳)が好調だ。ベンフィカとの準々決勝セカンドレグでは1ゴール1アシスト。以降、最近6試合の公式戦で「6ゴール3アシスト」と獅子奮迅の活躍を見せているのだ。
さらにミラノ・ダービーにも強いことで知られる。ミラン戦は今季もすでに2得点しており、これまで12試合に出場して7ゴール(7勝2分け3敗)。彼が2018年にインテルに加入して以降、2番目にゴールを決めている相手がミランなのだ(1番はカリアリ戦で8ゴール)。
果たして、今回のミラノ・ダービーでは誰が輝くのか? そして“マリア像”はどちらに微笑むのだろうか?
(記事/Footmedia)