不法に越境してきた移民をすぐさま送還できる措置「タイトル42」。新型コロナウイルスの感染拡大防止を理由にトランプ前政権が2020年3月に導入し、この措置により延べ280万人が送還された。
【映像】「タイトル42」失効で入国可能?メキシコ国境に集まった多数の移民
この「タイトル42」が日本時間12日午後0時59分で失効。それに伴って、アメリカへの移民希望者が国境地帯に押し寄せる事態になっている。一方、政府は「国境が開かれるわけではない」と繰り返し、警戒を強めている。
ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、移民に対するアメリカ国内の建前と本音、大統領選への影響などを、現代アメリカ政治外交が専門の上智大学・前嶋和弘教授 に聞いた。
「タイトル42」失効で米の移民対応は。
「『アメリカに容易く難民申請ができるのでは』と期待して政治状況・治安が悪い中南米から、命からがらに逃げてきた人たちが押し寄せている。人道上救わないといけない一方、1日約1万3000人近くと多い状況で、アメリカどう対応するのかは難しい判断になる」
バイデン大統領は当初は「タイトル42」をすぐに撤回する予定だったが、大統領就任後も一時維持する方針に転換した。それはどうしてか。
「バイデン政権としては移民を受け入れたいのだが、大混乱になることを懸念していた。実際に昨年、南部の国境沿いに移民難民が多数訪れて対応しきれず、リベラル系が多いニューヨークやワシントンなどに移送されるなど国内で押し付けあいが起きた。ただ、やはり人道的にそろそろ廃止しなければいけないという状況になった」
経済的な面でも、アメリカで移民難民は必要という意見もあるが。
「移民難民が経済を支えている部分は確実にある。大都市、例えばロサンゼルスではサービス業(労働)の10%以上を非合法移民が担い、経済を支えている状況。アメリカは今インフレだが、非合法移民を入れることでインフレを抑えられてきたところがある。インフレ対応としては、非合法とは言わないまでも、移民・難民をもっと入れるべきという見方をする人もいる」
共和党も民主党もそれぞれの建前と本音が入り組んでいる。大統領選で、移民問題は争点になのか。
「移民問題は特に共和党系にとって最大の争点。『なぜバイデンは非合法移民を入れるんだ』『バイデンは弱腰だ。移民を追い出せ』と、共和党の集会では常に話題に上る。一方で、共和党の中でビジネスをしている人は、労働力として非合法移民を必要としている。また、民主党支持者は、人道的には『助けないと』と思っていても、移民のために社会サービスを提供するためには税金がかかる。『その費用をどこから持ってくるのか』となると、複雑な問題となる」
(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側