6日、チャールズ国王の戴冠式が行われ、各国の要人およそ2000人が参列した。バッキンガム宮殿では国民の歓声があがった一方で「Not my king!(私の国王じゃない)」と叫び、君主制撤廃を求める人々によるデモも開催された。
実はイギリスでは王室に対する考え方が若年層(18〜24歳)で大きく変化している。YouGovの調査によると、10年前に「君主制を維持すべき」という声は72%あったが、現在では36%にまで下落しているのだ。
一方日本では、「皇室に関心あり」と答えた若者(18〜29歳)はおよそ5割、全体では7割を超えており(NHK放送文化研究所調査『新時代の皇室観』、2019年)、天皇制に反対する声はほとんど聞こえてこない。
ニュース番組『ABEME Prime』では、時代に合わせた姿を模索する英王室から、日本の皇室のあり方について考えた。
王室廃止論の背景について、近現代史が専門で名古屋大学大学院准教授の河西秀哉氏は「エリザベス女王という“カリスマ”亡き後が不安定になることは確かだ。イギリスでも分断が見えてくる中で、王室が上流階級の代表として見られている。そうではない下の人たちが鬱積を晴らそうと、反対運動に繋がっているということだと思う」と分析する。
チャールズ国王には「君主に属する土地などから出た利益の一部」「バッキンガム宮殿の入場料」などの収入があり、英・タイムズ誌によると資産は約1000億円。そんな中、5000万ポンド(約85億円)とも、1億ポンド(約170億円)とも伝えられる戴冠式の費用を政府が一部負担したとBBCが報じ、これを快く思わないロンドン市民は51%いたという。
河西氏は「分断で苦しんでいる人からすると、“彼らは自活して儲けているのに、さらに戴冠式にも国費を入れているのか”“あれはなんなんだ”という、上流階級に対する批判の象徴に王室がなってしまっている」とした。
一方、日本では若者の半数が皇室に関心を持っている点について、「若い人たちは災害が多い時代を生きてきたこともあって、平成の天皇・皇后が被災地訪問を繰り返している姿を目の当たりにしていたのが大きかったと思う。その他にも、沖縄を訪問したり、過疎化した地域を訪れることで、人々が問題に目を向けるという側面を持っていた。分断した社会がある中で、来てくれた側からすると“我々を忘れていなかった”ということにつながる」との見方を示す。
では、今後の皇室はどうあるべきなのか。NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「皇族には人権がほとんどないわけだ。選挙に行くこともできないし、自分の思ったことを何も言えない。自由がない中で、日々の公務を務めている方々のことを考えた時に、今の制度を維持していくデメリットを社会がどれだけ受け入れられるか。それと同時に、国際社会における日本のプレゼンスを高める上でも希少性は大事で、皇室のある国ということはものすごく大きい。“人権のない皇室を戴き続ける”ことに尽きるのでは」との考えを述べた。
河西氏は「眞子さんの皇室離脱はとても重要な契機だったと思う。一方で、私を捨ててまでも公に尽くした、それこそ超人的な平成の天皇・皇后を支持してきた側面がある。他の皇族にもできるのか?というところで、眞子さんが“私はそうじゃない。自由に結婚したい”となった時に、“あれ?違うじゃん”という見え方になってしまったわけだ。国民が望んでいる皇室像と、人権を侵害されている彼らがどう考えているのか、ということを常に考えながら方向を探っていく必要があると思う」とした。
また、「Flags Niigata」代表の後藤寛勝氏は「今の若い人たちの関心の本質はどこにあるかを見たほうがいいと思っている。“どういう生活をしているのだろう?”“どんなスケジュールで生きていらっしゃるのだろう?”という部分だ。ただ、象徴天皇制を維持していこうと思った時に、国民とのコミュニケーションは果たして必要なのか。要は、求めてしまうことが制度の崩壊につながりかねないのではないかと。コミュニケーションが円滑になることで起こる弊害のほうが、実は大きいのではないか」と投げかける。
河西氏は「このような議論をいろんなところでやることだ。皇室にとって一番つらいのは“無関心”。少しでも関心を持っていろんな話をしていくようになると、物事が前に進むのではないか」と答えた。
(『ABEMA Prime』より)
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