インプレー時間
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 サッカーの試合時間は何分なのか?

 通常のサッカーの試合は45分ハーフの「計90分」で行われる。だが、必ずしも90分間プレーが続くわけではない。ボールがピッチの外に出れば試合は止まるし、ファウルや選手交代でプレーは中断する。ご存知の通り、実際のインプレー時間は「90分」には程遠い。

 昨年カタールで行われたFIFAワールドカップでは、なるべく厳密にアディショナルタイムを計算する試みが行われ、後半追加タイムが「7分!」になることだって珍しくなかった。果たして、サッカーの試合は90分のうち実際にどれくらいの「インプレー時間」があるのかだろうか? データ会社『Opta』が今シーズンの欧州5大リーグの試合時間などをまとめているので見てみよう。

[写真]=Getty Images

■最も“濃密”なのはリーグ・アン

パリ・サンジェルマン
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 昨年のワールドカップでは、前後半の追加タイムを加えた1試合の平均時間は「100分23秒」だった(延長戦は除く)。アディショナルタイムを長く設けたことで、追加された時間が10分以上もあり、三桁の大台に乗ったという。そのうちプレーが途切れていない時間、いわゆる“インプレー”は「58分4秒」だったという。ということは、全体の「57.3%」がインプレーだったことになる。

 これを今季の欧州5大リーグと比べると面白い傾向が見えてくる。まず、1試合の平均時間「100分23秒」というのは、どのリーグよりも長かった。最も短いフランスのリーグ・アンより約4分も長かったことになる。試合時間は追加タイムの長さ次第なので、やはりワールドカップのアディショナルタイム(平均で10分23秒)が異例だったことが分かる。

 欧州5大リーグの1試合の平均時間を見ると、最も長いのがスペインのラ・リーガで「98分16秒」。次にイングランドのプレミアリーグ(98分14秒)で、その後はイタリアのセリエA(97分39秒)、ドイツのブンデスリーガ(96分33秒)、フランスのリーグ・アン(96分25秒)と続く。

 次にインプレー時間を見ると、やはりワールドカップの「58分4秒」は、どのリーグよりも長かったことになる。しかし「インプレー時間」を「試合時間」で割った「インプレー率」を見ると、ワールドカップの「57.3%」は2番目に数値に留まるのだ。最もインプレーの割合が低いのがラ・リーガで「54.6%」。今回のデータで唯一、55%を下回っており、今季欧州5大リーグで最も無駄な時間が多いリーグと呼べる。

 続いてプレミアリーグ(55.8%)、ブンデスリーガ(56%)、セリエA(56%)という順番でインプレ―率が増えている。そしてワールドカップを抑えて最もインプレー率が高いのがフランスのリーグ・アンで「58.1%」となっている。

 リーグ・アンは、欧州5大リーグの中で最も追加タイムが少なく、そのせいで試合時間が最も短い(96分25秒)のだが、インプレー時間は「55分59秒」と他のリーグを抑えて堂々の最長。これによりインプレー率がワールドカップ(57.3%)を超えて58%となっているのだ。というわけで、無駄な時間が嫌いという人に最もお勧めなのはリーグ・アンかもしれない。

■プレミアリーグのインプレー率

マンチェスター・C
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 もちろんチームによっても「インプレー率」は違う。これはチームのスタイルに起因するのだろう。ポゼッション率の高いチームはボールを失う機会が少なく、プレーが途切れにくい。そのためインプレー時間は増えるだろう。一方、ロングボールの多いチームはボールがピッチを割る機会も多いだろうからインプレー時間が減る。さらにファウルの数、セットプレーの活用法、選手交代の回数などによっても変動するはずだ。

 今季プレミアリーグの「インプレー率」を見ると最高値は、やはりポゼッション率が最も高いジョゼップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・Cである。彼らのインプレー率は「61.8%」で、今季プレミアリーグで唯一、インプレー時間が60分を超えたチームだ。次にインプレー率が高いのはリヴァプールとウェストハムの58%。リヴァプールはポゼッション率が高いため納得だが、ウェストハムのボール保持率は今季プレミアリーグで下から3番目(40%)のため少し謎だ。

 彼らのインプレー率が高い理由は色々あるかもしれないが、1つ挙げるとすればファウル数が考えられる。データサイト『Whoscored.com』によるとウェストハムは今季プレミアでファウルをした回数が4番目に少なく、ファウルを受けた被ファウル数に至っては2番目に少ないのだ。そのためファウルの合計数はリーグ最少となっており、FKの回数が最も少ないことでインプレ―率が高まったと考えられるのだ。

 ちなみにインプレー率が最も低いのは大躍進を見せているニューカッスルだ。彼らはインプレー時間が「51分5秒」しかなく、マンチェスター・Cと比較すると9分も短いことになる。その結果、インプレー率が「51.7%」に留まっているのだ。皮肉なのは、ニューカッスルがインプレー率の低さで大一番を落としていることだ。前節、彼らは5月7日にアーセナルとの上位決戦に臨んだわけだが、チャンスを作りつつも0-2で敗れた。試合後エディー・ハウ監督は「アーセナルは上手くゲームを進めていた。プレーを遅らせ、何度もプレーが途切れた。そのせいで我々は苛立ちを覚えた」と敵チームの時間稼ぎを批判していたのだ。

ニューカッスル
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 実際に、この日のアーセナルはプレーが切れる度に時間をかけていた。『Opta』によるとアーセナルは今季自身の試合の中で2番目になる「28分」も時間稼ぎをしたそうだ。だからハウ監督がフラストレーションを覚えたのも仕方なかったのだが、普段は自分たちが時間をかけているので因果応報か?

■失われた時間

PK
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 では、どんなときにプレー時間が失われているのか? やはり時間がかかるのはPKだ。今季プレミアリーグでPKによるディレー時間は1回につき平均「112秒」だという。さらにゴールが生まれた後も時間が失われる。ゴール後のキックオフには1分以上(72秒)もの時間がかかっているのだ。

 フリーキックとコーナーキックはそれぞれ33秒ずつ。そしてゴールキックにも30秒の時間がかかっている。スローインは16秒と短いが、1試合に40~45回ほどあるため合計ではかなりのタイムロスになっている。

 プレミアリーグで最もリスタートが早いチームはリヴァプールだ。自分のサッカーを“ヘビーメタル”と呼んだこともあるユルゲン・クロップ監督が率いるチームは速攻を得意とする。そのせいなのか、ゴールキックやスローインなどのリスタートにかける時間はリーグ最短の平均「23.6秒」だ。

 一方で、最も時間をかけているのはブレントフォードで、彼らはプレミアで唯一、リスタートに30秒以上も時間をかけている(31.4秒)。彼らはスローインのコーチを雇って、スローインで様々な選択肢を探るため自ずと時間がかかっているのだ。

 このように「インプレー時間」はリーグの特性、チームのプレースタイルによってかなり変わってくることが分かる。近年、FIFAを筆頭に世界的にインプレー時間を増やす取り組みが進んでいるが、果たしてそれがどんな影響をもたらすのか? 今後もインプレー時間に注目したい。

(記事/Footmedia)

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