FIFA U-20ワールドカップ
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 今週末、U-20世代の世界一を決める「FIFA U-20ワールドカップ」が南米のアルゼンチンで開幕する。それでは、日本も出場するこの大会の「知っておきたいポイント」をいくつか紹介しよう。

[写真]=Getty Images

■4年ぶりの開催

イ・ガンイン
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 A代表のワールドカップとは違い、U-20世代のワールドカップは2年に1度のペースで開かれる。1977年に産声を上げ、今年で23回目を迎えることになる。前回は2021年開催のはずだったがコロナ禍の影響で大会は中止となった。そのため今回は、前回の2019年ポーランド大会以来となる4年ぶりの開催だ。

 4年前は韓国が快進撃を見せた。現在マジョルカに所属するMFイ・ガンインを中心に、ベスト16で日本との接戦を制すると、その勢いのまま決勝まで勝ち上がった。ファイナルではウクライナに初優勝を譲ったが、MFイ・ガンインは2ゴール4アシストで大会MVPに選出された。

 前回、最も衝撃を与えたのはノルウェーの怪物だろう。今季マンチェスター・Cでゴールを量産するFWアーリング・ハーランドは、グループステージ第3戦のホンジュラス戦で何と9ゴールの大活躍。FIFA主催の主要大会における1選手の1試合最多ゴール記録を打ち立て、チームを12-0の勝利に導いたが、ノルウェーはその1勝しかできずにグループステージで姿を消した。それでもハーランドは9ゴールで大会得点王に輝いた。

■開催国の変更

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 今月20日(現地時間)にアルゼンチンで開幕する今大会は、4年ぶりの開催というだけでなく、開催地まで変更という異例ずくめの大会となる。今大会は当初、東南アジアのインドネシアで開催されるはずだった。しかし開幕まで2か月となった今年3月、インドネシアが宗教上などの理由から欧州代表として出場するイスラエルの参加に反対したのである。そこでFIFAはインドネシアから開催国権を剥奪。その後、南米予選で敗退していたアルゼンチンがホスト国として立候補したため、開幕の1カ月ほど前にようやく開催地が決まったのである。

 カタールで開かれた昨年のワールドカップで優勝しているアルゼンチンは、この世代でも絶対的君主だ。1995年から7大会のうち5大会で優勝するなど、これまで最多6度の優勝を誇る。フアン・ロマン・リケルメの世代も、ハビエル・サビオラの世代も、リオネル・メッシの世代も、セルヒオ・アグエロの世代も頂点に輝いてきた。しかし、近年は苦しんでおり、2009年大会からの最近6大会はベスト8が1回だけ。

 今大会も今年1~2月に開催されたU-20南米選手権で1勝しかできずに一次グループ敗退。決勝グループに進出することなく姿を消して出場権の逃していたのだ。しかし、開催国の変更により“棚ボタ”で出場権を手にする格好となった。チームを率いるのはバルセロナなどで活躍した元アルゼンチン代表MFハビエル・マスチェラーノ(38歳)だ。

 南米選手権で早々に敗退したあと、自身の進退について悩み、一度は辞任の意向を示した。だが出場権が舞い込んできたことで、協会関係者やA代表のリオネル・スカローニ監督に相談して続投を決めた。そして「サッカーにおいて2度目のチャンスはあまりない。だが今回、それが舞い込んできたので最大限に生かしたい」と7度目の優勝を目指す。

 ちなみにマスチェラーノは選手時代に2003年のU-20ワールドカップに出場して4位に入った実績を持つ。

■今回も王者は不在

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 前回の2019年大会で初優勝を果たしたウクライナは今大会の出場権を逃した。彼らは欧州予選である昨年のU-19欧州選手権の本大会にすら出場できなかったのだ。実は、U-20ワールドカップには前回優勝国が予選で敗退するというジンクスがある。

 ウクライナ同様、前回大会は2017年大会の覇者であるイングランドが不在だった。その前はセルビア、その1つ前はフランスと、やはり優勝国が不在だったのだ。セルヒオ・アグエロが得点王に輝いて2007年に優勝したアルゼンチンが次の2009年大会の予選で敗退して以降、7大会連続で前回優勝チームが不在となっているのだ!

 理由の1つはヨーロッパ勢の活躍だろう。24チーム制のU-20ワールドカップで欧州勢に与えられた枠はわずかに5つ。アジア、アフリカ、北中米カリブ海などがそれぞれ4枠を与えられているだから、実力を考えるとヨーロッパ勢の「5つ」は非常に少なく感じる。

 そんなU-20ワールドカップで、欧州勢は2013年大会から4連覇中(フランス、セルビア、イングランド、ウクライナ)なのだ。だが、あまりにも欧州予選が過酷なため、前回王者がことごとく予選で敗退しているのだ…。

 ちなみに今回の欧州予選を制したのは、チェルシーに所属するMFカーニー・チュクエメカ(19歳)を擁するイングランドだ。2大会ぶり2回目の優勝を目指す彼らはウルグアイ、チュニジア、イラクと同じグループEに入っている。

■アジア勢は

松木玖生
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 前回の2019年大会で韓国が準優勝の好成績を収めたが、アジア勢はいまだに優勝経験がない。これまでベスト4に進出したのは5チームだけ。そして最高成績は準優勝(3回)だ。前回の韓国が2位に入ったほか、1981年大会にカタールが決勝で西ドイツに敗れるも準優勝を果たした。そして1999年、日本も世界を驚かせたのだ。

 まだワールドユース選手権と呼ばれていた24年前、日本はナイジェリアの地で快進撃を見せた。小野伸二、本山雅志、高原直泰、稲本潤一、遠藤保仁、小笠原満男、中田浩二といった、いわゆる“黄金世代”の日本はフィリップ・トルシエ監督の下で美しいサッカーを披露。イングランドを抑えてグループステージを突破すると、ベスト16でポルトガル、ベスト8でメキシコ、そして準決勝ではディエゴ・フォルランを擁するウルグアイを撃破。日本代表として全年代を含めて初の決勝進出を果たすも、ファイナルではシャビ・エルナンデス(現在バルセロナの監督)を擁するスペインに敗れて準優勝に終わった。

 今回、日本は3月に開かれたU-20アジアカップで無事に出場権を確保した。準決勝でPK戦の末にイラクに敗れるも、ベスト4に入って3大会連続11回目のワールドカップ出場を決めている。今大会はアジア予選で大会得点王に輝いたFW熊田直紀(FC東京)のほか、MF松木玖生(FC東京)、FW福田師王(ボルシアMG)、DFチェイス・アンリ(シュトゥットガルト)といったタレントが揃っており、24年前には果たせなかった世界一の座を目指す!

 日本はコロンビア、セネガル、イスラエルと同じC組。初戦は21日(現地時間)のセネガル戦だ。好スタートを切って、まずは3大会連続の決勝トーナメント進出を目指したい。ちなみにグループステージは上位2チームのほか、各組3位の上位4チームも決勝トーナメント(ベスト16)に進出できる。

 果たしてU-20世代の世界一に輝くのはどこの国なのか? 日本も出場するU-20ワールドカップに注目だ。

(記事/Footmedia)

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