「サーキットだけが居場所だった」師匠の言葉、胸に“激走”…苦労人・宮田が魅せた魂の追い抜き
【映像】「全て使い切った」気迫のオーバーテイク

スーパーフォーミュラ】第4戦(決勝・5月21日/オートポリス)

 「良い走り、良いレースをしていれば、きっと見ている人はいる」

 これは、VANTELIN TEAM TOM’Sから参戦する宮田莉朋が師匠から教えられてきた大切な言葉だ。

【映像】「全て使い切った」気迫のオーバーテイク

 宮田は、これまで完全に恵まれた環境でレースをしてきたわけではない。子供の頃は、学校に馴染めず、サーキットだけが自分の居場所だった。両親はそんな宮田を全面的にサポートしながらも、レースに対しては厳しく指導してきたという。

 そんな宮田のひたむきにレースに向き合う姿勢と、そして自らの手で速さを証明することで、周囲の信頼を得、このスーパーフォーミュラのシートも獲得した。今年は、スーパーフォーミュラ参戦3年目。着実にステップアップしてきた宮田が、さらに頭角を現しつつある。

 第3戦では、12番手スタートから初優勝をもぎ取った宮田。セーフティカーが入ったベストタイミングでのタイヤ交換など、アドバンテージを得られたことも大きいが、その後は自身のテクニックでオーバーテイクし、しっかり勝ち切るシーンも見せた。

 そして、今回の第4戦も宮田の気持ちの強さとその速さが光った。宮田の走りを見ていると、レースペースが極めて良いことに驚かされる。

 宮田は、周回数を重ねるごとに1番手を走る坪井に迫り、タイヤの限界が来た坪井が25周目ピットインする頃には、ピッタリとその背中につけていた。そこからさらにプッシュする余力があったことからも、チームのマシンセッティングの良さと宮田のタイヤマネジメント能力の高さが窺える。

 そして、宮田はセーフティカー中にタイヤ交換を済ませ、37周目に前を走る2番手の坪井に勝負を仕掛けた。坪井はホームストレートで一時的にパワーアップするオーバーテイクシステム(OTS)を使い、宮田もOTSで応戦。坪井は、ストレートの終わりでOTSのボタンを離したが、宮田はその手を緩めなかった。

 OTSは一度使ったら100秒間は使用できなくなる。宮田は、ホームストレートから1コーナーまでに坪井を抜けなかったと見るや否や、そのまま丸々1周OTSを使い続け、何度も坪井の横に出ようと顔を覗かせる。ついには、次周のホームストレートで坪井をオーバーテイクするという気迫の走りを見せた。

 宮田がOTSを使用し始めた時点で、OTSの残り時間は116秒。オートポリスの1周あたりのレースペースは約90秒+ホームストレート約2本分なので、OTSをフルに使い切ってのオーバーテイクだった。

 そのまま宮田は2位でチェッカーを受けたが、坪井を抜いた後も「諦めないよ!」という無線とともに、最後まで1位のローソンを追い続けた。

 今年のスーパーフォーミュラは、3連覇のかかる野尻智紀(TEAM MUGEN)や、F1リザーブドライバーも務める大型ルーキーのリアム・ローソンなどに注目が集まりがちだが、宮田のような熱くて速いドライバーがいることにも是非注目して欲しい。

ABEMA『スーパーフォーミュラ2023』/(C)JRP)

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