「アマゾンの星2で感動できたら“勝ち”」Unknownな才能を“宝探し”する方法
【映像】漫画の世界に迷い込んだような“モノトーンな”料理
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 原宿の裏通りにあるお店。一見すると絵画のギャラリーのようだが、展示されているのは漫画だ。しかも、どれも「見開き」で飾られた作品たちはいわゆる“有名作品”ではない。

【映像】漫画の世界に迷い込んだような“モノトーンな”料理

 漫画・アニメ・書籍…。レコメンドとレビューをきっかけに作品を手に取る方こそ、この「The Unknown Café Gallery Harajuku」の取り組みを通して、才能の宝探しをする喜びを知ってほしい。

 The Unknown Café Gallery Harajukuは、その名の通り「まだ知られていない漫画家」による作品を展示しているカフェギャラリー。集英社のアプリ「少年ジャンプ+」で配信中の読み切り漫画を展示している。

 各作品にはQRコードが添えられており、来店客は気になった漫画をすぐアプリで読むこともできる。さらに店内では作品を見ながら、漫画のようにモノトーンのおしゃれな料理を楽しむことができ、漫画の世界に浸ることができる。

 実に漫画愛に満ちた空間だが、その仕掛け人である庄司明弘さんは、漫画の業界は素人。これまでは音楽アーティストのマネジメントを手がけたり、タワーレコードの副社長を務めた経歴の持ち主だという。

 なぜ、音楽業界の庄司さんがプロデュースしたのか。きっかけは不動産会社からの「もう一度原宿にアンノウンな(まだ知られていない)才能が戻ってくるようなムーブメントを起こしたい」という依頼だった。

 庄司さんたちは様々な業界の人と共に、どんな場所にするか検討した。当初は音楽や写真など、様々なアンノウンな才能が集うギャラリーを考えたが、次第に「一つに絞った方がいいのでは」という声が出たという。そうして選ばれたのが海外でも人気のある漫画だった。

 出版社の人も驚く中、なぜ漫画一本に踏み切れたのか。そこには庄司さんが感じた漫画の魅力にあったという。

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「手のひら大ぐらいで見ているものが、大きくしたときにものすごい違う想像力とか刺激があるとか、物語読んでないのに読んでみたくなるとか。ここで展示しているのは、漫画を本当に愛している人たちに『2ページを対で、シーンで選択してください』と選んでもらったもの。なぜシーンで対にしたかって言うと、見開きってすごいなから。クリエイターの凄みみたいなものが、日本の漫画には宿っているのではないかと」

 庄司さん自身も、「アンノウンな才能」に魅了されている一人。現代のサービスではレコメンドが主流だが、アンノウンな才能を自分で発掘することには、レコメンドにない楽しさがあるという。

 「昔はレビューとか無いので、レコードで言えばジャケ買いしていた。このジャケットよさそうだなと買って帰って聞いて、素晴らしいと思ったり、失敗したと思ったりというのが、いろんなジャンルで行われてた。宝探しみたいな感じに近い。レコメンドに慣れている方々からすると、僕たちのやっていることはコスパが悪いですけど、ゲームとしてそういう知らないものをよさそうだから買ってみるみたいなことをやって頂いたら面白いかもしれない」

 この取り組みを受けて、スポーツの専門の世界ゆるスポーツ協会代表・澤田智洋氏は、作品に対する評価基準について称賛した。

「漫画の編集者とか、出版社の方じゃない方々を中心に、好きな無名のアンノウな作品・作者を選んでる。そこには多種多様な“好き”がきっとあるはずで、多種多様な判断基準があって、その先でこういう作品が見出だされるのはいいなと。例えばアワードや映画などを審査する時は、ストーリー性やドラマチック性、ソーシャル性などと基準がめっちゃ狭い。そこの審査基準を広げるみたいな意味合いで、すごくいい取り組みだ」

 そして、漫画を展示していることについては、

「リアル店舗に置かれてるからスクロールができないし、スワイプやスキップもできない。つまり、素通りできない状態。僕らはネットとかスマホで情報を得る時は、基本的にはほぼ素通りしてる。リアルは、そういう情報の流し見ができないから、見逃せないので、『あれ、この観点いいな。この絵のこの描写いいな』みたいな気づきがある。素通りでは見逃してたかもしれない小さな良さに気づくのは、リアルの良さなのかなと」

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 素通りせずに立ち止まってみる。今ではレビューやレコメンドがあるため、無名に出会う機会が減ったが、澤田氏はあえてマイナーな雑誌を買ってみたりするという。

「ハズレというのは、良い悪いのハズレだけではなくて、自分のアルゴリズムやフィルターバブル(自分の考え方や価値観の泡の中に孤立する情報環境)や、これが好きっていう世界の何かに触れるという、無名の何かとの遭遇のことだ」

 しかし、失敗したくないという気持ちからレビューやおすすめを見て買ってしまうがその点については、

「寿命がどんどん長くなってる割には、世の中はコスパタイパを求めている。僕は最近、本買う時とかもAmazonレビュー見ていない。『めっちゃ面白い』と読んだ後に、レビュー見たら評価が2だったけど、無償の喜びがあった。もし、評価2っていうのを知って本読んでしまったら、2の前提でその本と触れてしまい、本の本質と心が直通で通わなかった気がする。そういうことも含めて、コスパとかタイパ、レビューというものの外に1回外れてみる。それによってハズレを経験するのは、めちゃくちゃ贅沢なんじゃないかと思う」

(『ABEMAヒルズ』より)

(C)2023 The Unknown Café Gallery Harajuku

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