先月、あるツイートが物議を醸した。投稿者は、埼玉にあるラーメン店の店主だ。発端になったのは、この店の“独自ルール”。店員が「ニンニク入れますか?」と客に聞くと、客は「ニンニクなし」と回答。普通のやりとりに見えるが、これが揉め事の原因になった。
【映像】「ニンニクは“抜き”で」店内にあった掲示ポスター(イメージ図)
この店では「増し」と「なし」が聞き取りづらいため、「抜き」という言い方を推奨していた。その後、不快に思った客が「2度と行かない」とツイートすると、店主が反論。客を「クソ素人」と表現し、炎上した。
高圧的な態度が問題視されたが、これはこの店に限った話ではない。街で聞いてみると「写真を撮っちゃいけないって言われたことがある。お店の人に『携帯しまって早く食べて』って言われて怖いなって思った」(会社員・29歳)、「あまり喋らないようにしなきゃいけないみたいな威圧感はあった」(会社員・21歳)などの声が寄せられた。
なぜ独自のルールを掲げるのか。福岡のラーメン店「博多元気一杯!!」でも、かつて独自のルールがたくさんあったという。「撮影・ながら食い禁止」などの独自ルールを設けていた同店は、なぜやめたのか。
▲「博多元気一杯!!」2代目 土井元気氏
ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した土井元気氏は「時流が変わった」と話す。
「当時掲示していた内容もお客様の声によって作りあげたものだ。常連さんたちのこだわりに合わせて用意した。今は、写真撮影したり、スマホを見ながらお話ししてラーメンを楽しむ人が増えた。自由に楽しめるような形に店のデザインを変えた」
「博多元気一杯!!」では、25年間看板を出しておらず、今はスープを楽しみたい人だけにラーメンを提供。店の方針は“お断り”という表記で掲示している。
当時、ルールを破った人にはどう対応していたのか。土井氏は「お客様には『当店の利用の仕方と違うので、大変恐縮だが、今回はご遠慮いただけないか』と話していた。当時の仕組みはもうない」と話す。
「基本的にはお客さんがどう食べようが自由だ。麺から食べたい人、スープから味わう人、本当にお腹いっぱいになりたい人など、いろいろなお客さんがいる。全く否定はしていない。ただ、当店はスープから味わう人に限り、限定販売をさせていただいている。非常にマニアックな形だが、そういう利用の仕方を好まないお客さんがいらっしゃることがないように、看板まで外している。わざわざ訪ねてきて、違うやり方で食べられるのはちょっと違う」
「店側からスープから飲めと言われた」と、お客さんにグルメサイトで低評価をつけられたらどう思うのか。
「評価はお客様がすることなので、低評価のこともある。また当店のこだわりは一切、声として出していない。すべてがビッグデータとなった時に最終判断が下される。当店は看板を外してもう25年だ。それが答えだと思う」
では、ネットの評価社会をどう受け止めているのか。
「当店は『あの店は本当に行ってみて』と生の口コミで人の輪が広がって、お客様が来てくれている。SNSが出てきて、評価社会になったことで、行く店を事前に皆さんが選ばれる。それによって当店みたいなアナログの口コミしかないお店の情報拡散が非常に進んだ。逆にありがたいと思っている」
店側が独自ルールを作ることについて、どう思っているのか。
「個性を出す意味で自由にしていいと思うが、看板がある限りあらゆるお客さんが来る。美味しそうな匂いにつられて、日本語が分からないインバウンドのお客様が来ることもある。ルールが日本語だから読めない、予備知識がないと『ニンニクなしで』と言うこともできないお客様にどう対応されるのか。気になるところではある」
年400杯を食べ歩くラーメン評論家で、フードジャーナリストの山路力也氏は「お店の営業をスムーズにするためのルールという側面もある。ただ、お店側が独自のルールを掲げる以上、それを告知する責任は店側にある。厳しめのルールを作る店は減ってきているが、看板に何も書いてない状態で入って、そのルールがあったら、やっぱりお店側の落ち度だと思う」と話す。
その上で、山路氏は「伝え方の部分も大事だ」とコメント。「ルールを守ってもらうために、伝えることは大切だ。ただその時に、コミュニケーションスキルがちょっと弱い、言葉の選び方が苦手な店主さんがいる。SNSもそうだと思うが、今回のように『クソ素人』と書けば、何が起きるか?ちょっと考えれば分かる。客商売をやっている人としては『リテラシーが低いかな』と思ってしまう。お店側のルール決めと、実際の伝え方の部分は分けて考える必要がある」と述べる。
別の店で「ティッシュをラーメンのどんぶりに入れないで」という店主のツイートも話題になった。店側は客側にどこまで言うべきなのか。
「常識は変化している。僕も『スープから飲むのは当たり前だ』と思う派だが、いちいちそんなことまで言わなきゃいけないのかどうか。ただ、今は言わないと駄目な時代に来ていると思う」(「ABEMA Prime」より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側