レースの花形といえば、もちろんドライバーだ。その一方で必要不可欠なのが、エンジニアやメカニックなど、チームを支えるプロフェッショナルの存在である。
特にタイヤ交換などのピット作業は、実際にレースの順位を決定づけることがあるため、見逃せないシーンが多い。
アジア最高峰の『スーパーフォーミュラ』で今シーズン、メカニックのピット作業がレースの明暗を分けた象徴的なシーンは、それぞれ大きな反響を呼んでいる。
■たった5.6秒で“完璧”タイヤ交換…優勝を呼び込んだ神業ピット
まずは、素晴らしいピットワークの例だ。
第4戦、トップ争いを繰り広げるリアム・ローソンは、早めにピットに入り、タイヤが新しいうち追い上げる作戦を敢行した。その後、他チームがタイヤ交換でピットインしている間に追い抜く、いわゆる「アンダーカット」を狙ったものだ。
他チームのピットワーク時間が6〜7秒台というなか、TEAM MUGENのピットクルーは、5.6秒台という驚異的なタイムを叩き出した。
レースでは1秒どころか0.01秒が勝負を分ける。結果、ローソンは、トップを争う坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)がピットインした際に、約2秒差をつけて前に出ることに成功。アンダーカットすることができた。ローソンはそのまま優勝。ピットクルーが削り出した数秒が優勝に貢献したと言っても過言ではないだろう。
■速さ「ああ、タイヤがはまってないわ」と無情の無線
そして、第2戦では手痛いピットミスも……。
一時はトップを走り、良いペースでレースを戦っていた平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。しかし、いざピットインしてタイヤを交換するも、ピットアウトの最中に、平川本人から「ああ、タイヤがはまってないわ」と無情の無線が。
確かにピットアウトしてきた平川のマシンは、タイヤが冷えている時とは別のフラフラとした動きをしており、全くペースが上げられない。結局、安全を考えてコース脇に停車し、そのままリタイアとなってしまった。
いくらドライバーが良いレースをしても、1人だけでは勝つことができない難しさを象徴するようなピットワークミスだった。
レース現場では、このようにドライバー以外にも勝敗を握る人々がたくさんいる。レース観戦の際には、是非ドライバー以外のチームメンバーにも目を向けて観戦してみてほしい。
(ABEMA『スーパーフォーミュラ2023』/(C)JRP)