今月行われた広島サミットでは、ウクライナのゼレンスキー大統領が電撃来日し、G7首脳と一堂に会した。岸田総理はG7として初めて核軍縮に焦点を当てた「広島ビジョン」を発出。海外を含む多くのメディアも意義を伝え、岸田総理自身もその成果を強調した。
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一方で「サミットは失敗だった」との声もある。13歳の時に広島で被爆したサーロー節子氏は「私は大変な失敗だったと思う。市民と政府が一緒になって、これ(核軍縮)を前進させようという機運は生まれたか? 私はそれを感じていない」とコメント。ロシアによる核の威嚇や使用を許さないとしながらも、抑止力としての核兵器の必要性にも触れたことで「広島の経験と分かち合えていない」と失望の声が寄せられた。
はたして、G7広島サミットは失敗だったのか。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した、拓殖大学国際学部教授の佐藤丙午氏は「サミット全体としては非常に成功だ」と見解を示す。
「歴史的に見てもこんなに大きく注目を集めたサミットはない。初めて核軍縮の広島ビジョンの文書ができたことも、注目に上乗せされた。各国首脳も広島の平和記念館で展示物を見学した。そういう意味で、日本の経験も売りにしながら、国際社会へのアピールが十分できたと思う」
また、核軍縮に関するG7広島ビジョンが発出されたことについて、佐藤氏は「広島でなければ出せなかったビジョンだ」とコメント。
「他の開催国だったら、核軍縮に関するドキュメントはおそらく出なかった。それにアメリカやフランス、イギリスが同意したところに非常に大きなポイントがある。このコミットメントを確認したところは大きい。道義的にすごく大きな高い立場に立ったと言えると思う。核抑止を肯定したから『悪い』という評価はしていない」
佐藤氏は「軍縮はお互いの合意がないと成り立たない」とした上で「アメリカやイギリス、フランスがいかに一方的に『核兵器を減らそう』と言っても、相手側が同意しない限り、危険な状態がもたらされる。岸田総理は、昨年の核兵器不拡散条約(NPT)の運用検討会議でもでもヒロシマ・アクション・プランを出した。今回も非常に厳しい国際情勢の中で、できる限りのことをしたと思う。もちろん100点ではないと思うが、少なくとも及第点はあげられると思う」と語る。
一方で、核兵器廃絶を目指す若者団体「カクワカ広島」の共同代表を務める高橋悠太氏は「大きな進展はなかった」と見解を述べる。
「資料館の訪問や被爆者の面会は一定程度、意味があったと思う。だが、ビジョンの中で防衛のための核兵器は許容されるものだと認めてしまった。必要悪として核兵器があるかのような言い振りだった。それが広島という冠をつけて社会に出てしまったことに、怒りを感じている。核兵器の廃絶が文言としてきちんと盛り込まれなかった。核の非人道性を認識した表現も入って然るべきだった」
危険性の観点から「良い核兵器も悪い核兵器もない。どんな核兵器だって駄目だ」と語る高橋氏。核兵器をなくすためには、何が必要なのか。
「時限を切って、100%できなくても『この年までに何%減らす』と示してほしい。それによって、いつか核兵器がなくせる。これまで『なくせたらいい』とやってきた結果が先送りだった。ある程度期限を切って、過程を決めていくことが必要なのではないか」
(「ABEMA Prime」より)
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