島根県の丸山達也知事が先月25日、少子化対策の財源に対して「人頭税だ。『一人頭いくら出せ』というのは所得に関係なく求められるわけだ。すごく逆進性が高い。それで子どもが増えると思うか」と不満をあらわにした。
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一方で、岸田総理は先月31日、予算額を3兆円台半ばに拡充するよう関係閣僚に指示。そのうち約1兆円を、社会保険料への上乗せで調整していると報じられている。複数の政府関係者によると、試算では1人あたり月額500円程度の上乗せになる見通しだという。これにTwitterでは「ステルス増税」「少子化推進策」との声が上がり、自民党内でも意見が別れている。
去年の出生数が80万人を割り、待ったなしの少子化対策。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した丸山氏は「一切の負担を求めるなと言うかどうかは別」とした上で「負担できる能力をきちんと見極めないといけない」とコメント。
「個人が負担するのは500円だ。雇っている会社が負担するのも基本的に同じ額の500円だ。これは黒字赤字関係なく、負担してもらうことを意味する。ガソリンや電気・ガス料金だけでなく、スーパーで買う日用品、食料品も値上がりしている。生活の厳しさが増している中、負担能力を無視したやり方が本当にいいのか」
丸山氏は経団連・十倉会長の発言にも「強烈な違和感を覚えた」と話す。
「日経平均株価は5月が明けてから、バブル崩壊後最高値の更新を続けている。31日の数字も3万円を超えた。大手の証券会社の調査でいくと、上場企業の3月の決算、総累計の合計は2年連続で過去最高の41兆円に達する見込みになっている。大企業がどこまで負担できるのか、そういう議論がなぜ一切出てこないのか。大衆課税である消費税を排除するなと言うなら、私のように誰かが『法人税を排除するな』と言わないといけないのではないか」
丸山氏の主張に、前明石市長の泉房穂氏は「現職の知事でここまではっきり言われることに感動した」と絶賛。
「中央省庁出身かつ現職の知事で、ちゃんと中央省庁の仕組みも分かった上で言っている。すごく説得力があると思う。『均等に取る』は平等に見えるが、実は違う。多大なる利益を得ているところは相当に取る。一方で、今苦しい人から取ってはいけない。ちゃんとメリハリをつけることが政治だと思う。
子育て支援などで兵庫県明石市の人口増加を実現した泉氏。「知事や市長は、自ら自治体単位で増税・減税ができない」と話す。
「ただ、国はそれができてしまうから逃げられる。知事や市長は、増税ができない中でやりくりをしないと仕方がない。だから、その中でできることをする。お金が増えなかったら諦めるのではなく、それでも子どものためにお金を作ることが知恵だと思う。政治家や国政だけが楽をしている」
明石市では人口増加に成功したが、それでも全国的に少子化が止められていない。泉氏は「大事なのは安心感だ」という。
「市民からは『明石だから2人目が産めた』とよく言われた。『明石だったら産める』と思って引っ越してきた人もいるから、大事なのは安心感だと思う。今、大事なのは国民への安心のメッセージだ。出生率2を超えるのは容易ではない。今のように極端に1.30ぐらいに低い、坂道を転げ落ちるような少子化は社会が壊れる。産みたければ産める状況にすることが政治の責任だ。緩やかに減っていくのを前提に、1.80ぐらいの希望出生率で私はいいと思う。親は2人目、3人目を産み育てることができると思えないと躊躇する。今のメッセージでは異次元どころか、他の国並みの普通の少子化対策でもない。思い切って国民に『大丈夫だ。私たち国が責任を持って応援する』と、それぐらい言わないと今の日本はやばい」
丸山氏は「政府は税をいじらないと言っておきながら、実は扶養控除をなくす議論をしている。話がちょっとずれている」と指摘する。
「上場企業の純利益は税金を払った後の利益だ。これが41兆円ある。人口減少が続けば、日本が本当になくなる。負担可能な大きな企業で、41兆円の中から1兆円を負担していただくことが、本当にできないのか。上場企業の社長さんはみんなSDGsのバッジをつけている。あのバッジをつけておられる以上、日本社会の持続可能性のために、少し法人税率などが上がっても拒絶されることはないんじゃないか」
丸山氏と泉氏の説明に、パックンは「先進国の中で少子化から脱出できた国はほとんどない」とした上で、こう話す。
「考え方の1つとして、全国民に負担してもらうとどうなるか。子どもを持っている人が得をして、持っていない人が負担をしている。もしかしたらここに歪みが生まれるかもしれない。『子どもを勝手に作りやがって』みたいな目で見る人も増える可能性がある。逆に、我々が払った税金をバックしてもらえるようになったら『子どもを作ったほうが得じゃないか』と思う人も出てくる。医療費や学童の費用、食料品などが全部タダになって『唯一得をしているのは子どもを持っている家庭だ』と全国民が思うようになれば、子どもを作ろうと思う家庭は増えるのではないか」
(「ABEMA Prime」より)
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