5月30日にZOZOマリンスタジアムで行われたセ・パ交流戦、千葉ロッテマリーンズ対読売ジャイアンツの一戦で、ロッテ・澤村拓一が登板。坂本勇人をはじめとする巨人打線と対峙することとなったが、その際に白熱した対決を見せた澤村&坂本と、そんな2人の姿をベンチで見守っていた巨人・原辰徳監督の表情が、ネット上の野球ファンの間で注目を集めた。
【映像】ロッテ・澤村が吠える!巨人・原辰徳監督の表情をとらえた瞬間
2-1、ロッテ1点のリードで迎えたこの試合の8回表・巨人の攻撃。好投した先発・西野勇士の後を受ける形で、ロッテの2番手として登板した澤村は、まず、この回先頭の9番・門脇誠を4球続けてストレートでショートゴロに打ち取り、“先輩”としての風格を見せると、続く代打・丸佳浩に対しては、初球・外角の臭いコースを突く スライダーから入り、カウント1-0とするも、丹念に外角を突く配球で空振りの三振に。1発だけは許されない“縛り”のある場面であったものの、指揮官の期待に応える形で、堂々たるピッチングを披露した。
そして、2死走者なしの場面で迎えたのは、このところ打撃が復調中の2番・坂本勇人。丸の打席と同様、1発だけは防ぎたい場面であったが、そうした中で澤村は、坂本に対し、たった2球で追い込むものの、2球目のスプリットを打ちにいき、ファウルとなった際の坂本の様子が気になったのか、3球目のストレートは外角低めへ大きく外れてカウント1-2に。そして勝負の4球目、内角低め、ボール気味に投じたスプリットで誘いにかかるも、これを坂本は涼しげな表情でアッサリとカット。続く5球目に澤村は、4球目とほぼ同じコースを狙うスプリットを選択することとなったが、この球は、少しかかり気味となってワンバウンドに。0-2と追い込んでから坂本が見せた“静かな逆襲”に、澤村がじわりじわりと逆に追い込まれるかのような雰囲気となった。
迎えた6球目、澤村は自らの気持ちを切り替えるかのように、一度、高く構えてからセットポジションに入ると、微妙な間をとりながら、外角へのスライダー。しかしこれも外れてカウント3-2に。しかもその際に坂本は、初めて投じられたスライダーであったにもかかわらず、ボールがよく見えているのか、バットを出す素振りさえほとんど見せずに、早々に“見切った”状態となっていた。そして7球目、澤村は渾身の152km/hのストレートで勝負に出るものの、坂本はこれを打ちにいき、ファウルに。この日、澤村はストレートがよく走っていただけに、結果として坂本が打ち損じたとはいえ、それを平然と打ちに行くあたりが、やはり打者・坂本の坂本たる所以であるといえるだろう。
そうした手に汗握る対決が続く中で、中継カメラはおもむろに、巨人・ベンチから2人の姿を見守っていた原監督の姿が映し出されたが、その表情は、一言で言い表すのが難しいものであった。坂本は2006年の高校生ドラフトで、澤村は2010年のドラフトでともに1位指名を受けて巨人入りを果たしているが、いずれも、当時の指揮官は原監督。将来、巨人というチームを背負って立つ選手にという強い想いがあったがゆえに、1位指名したことは想像するまでもない。たしかにその後、2人は巨人でともにプレーし、中心選手へと成長することとなったが、そんな2人が、紆余曲折の末に、敵と味方に別れ、互いに死力を尽くしながら一歩も譲らぬ勝負をしている…もしかすると、こうした背景があるからこそ、指揮官の表情は、一言で言い表すのが難しいものであったのかもしれない。
さて、そうした中で迎えたこの試合16球目。この1球を投じる直前、澤村は、受ける田村龍弘のサインに頷いたが、その姿は、どこか自分を落ち着かせているかのようにも見えた。この時、澤村が勝負球として選んだのは、154球目と同様、内角高めのストレート。お互いの手の内をよく知っている相手だけに、また、坂本という打者の能力をよく知っているからこそ、澤村は、この日、走っていたストレートを、勝負球として選んだのだろう。しかし、“元・巨人の澤村”ではなく、“ロッテの澤村”として投じたかのようなこの渾身のストレートは、はからずも大きく外れ、坂本を四球で歩かせることに。その瞬間、澤村はひどく落胆した表情を見せることとなった。
だが、“ロッテの澤村”は、ここで一気に崩れるわけではない。坂本を一塁に背負う形で迎えた3番・秋広優人へは、坂本との対戦とは違い、4球すべてスプリットで、アッサリと空振り三振に。するとマウンド上で澤村は、ロッテファンにはおなじみとなっている仁王立ちではなかったものの、さきほど見せた表情はどこへやら、爽快な自身のピッチングを喜ぶように小さくジャンプしながら叫び、“ロッテの澤村”としての仕事を終え、ベンチへと帰っていった。